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「ホビットの冒険」のこと

「楽しいなあ!もう一度出かけられるんだ、ドワーフたちとあの道を行くんだ。
なんてゆかいだろう!これこそ、長の年月、わたしがこがれこがれてきたことだ!
では、さようなら!」

「指輪物語 旅の仲間 待ちに待った誕生祝い」より

「ホビットの冒険」は読みましたか? 私は、「指輪物語」を読み終わってから、読みました。楽しいお話ですね。次から次へと新しい事件が起きて、お子さま向けに書かれているのに、実はやっぱりJ.R.R.トールキンのこだわりがたっぷりの作品なのでした。

平和なホビット庄の袋小路屋敷の前で、パイプ草をふかしているビルボのところへ、魔法使いガンダルフがやって来るところから、お話が始まります。その後、あれよあれよという間に、13人のドワーフがやってきて、ビルボは彼らと一緒に「忍びの者」として旅に出ることになります。
そのなかで、トロルに出会い、ゴブリン(オーク)に捕まり、ゴクリに出会って指輪を手に入れ、大鷲に運ばれ…次から次へと、冒険が繰り広げられます。トーリン・オーケンシールドから、ミスリルの鎖帷子をもらうのも、エルフの短剣つらぬき丸(スティング)を手に入れるのも、この冒険の中のお話です。「指輪物語」のなかでガンダルフとの会話に出てくる『五軍の戦い』はこの冒険のクライマックスです。ここは、涙なくしては読めません。
一見お子さま向けの内容のなかに、言葉のことや、中つ国の歴史の事などが見え隠れしていて嬉しいです。エルロンドの言葉の中には、ゴンドリンの故事がでてきます。これは「シルマリルの物語」を読んでいると、ぐぐっと来るところですね。

上のエルフと、森のエルフも、しっかり書き分けられています。レゴラスのお父さん、スランドゥイルさんは、ちょっと怖い森のエルフの王様。もちろん、本当はいい方なんですけど。最後の憩い館の、エルロンドさんは、ドワーフにも親切でしたね。大鷲グワイヒアの先代(先々代?)も出てくるし。「指輪物語」には名前しか出てこない、熊人ビヨルンも大活躍です。
オークはまだゴブリンと呼ばれています。恐ろしい「死人(しびと)占い師」の正体は、まだこの物語では明らかにならないし、ガンダルフがどんなに危険で恐ろしい仕事をしているかも、このお話ではあまり詳しく書かれていません。
このお話のもう一人のヒーローが、人間のバルドです。弓の使い手に弱い私には、見事にツボ、かっこいい!!もちろん、人物も素敵です。この人も「指輪物語」の中に名前だけは出てきます。

「指輪物語」では、ビルボがドワーフと仲がいい事って、それほど目立たない事柄ですが、ビルボは誕生祝いのあと、3人のドワーフと旅に出ているんですよね、あれは誰だったんだろう。上の引用は、ビルボが指輪をフロドに残して、袋小路屋敷を出ていく時の言葉です。この一言に含まれているのが、「ホビットの冒険」なのですね。
裂け谷での、フロドとグローインの会話のシーンも、私は大好きです。「ホビットの冒険」を読んでいると、あの部分は、楽しさ倍増ですよね。

◆「ホビットの冒険」の中の馬

このお話の中には、名前のある馬は出てきません。そして、馬と小馬たちには数々の受難の物語になっています。川で流されたり、ゴブリンや竜に食べられて(?)しまったり…最後にも重い荷物を運ばなければいけないし。彼らもまた、裂け谷で疲れを癒しています。
熊人ビヨルンのところでは、よく手入れのされた馬や、白くて美しい小馬が出てきます。小馬は犬や羊たちと夕食の仕度をします、でも口をきいたりはしません。ビヨルンがけもののほえるような言葉で指示をすると、まめまめしく働くのでした。ビヨルンは、その後闇の森へ向かうドワーフたちに小馬を貸してくれました。

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アマゾンjp.へジャンプ(別窓) 「ホビット」原作本は瀬田貞二訳で!(2012.12.21追記)

まだ原作を読んでいない方が、もしくは読み返そうと思っている方が、ここを見に来てくださるかもしれないので、ご紹介です。

まず、瀬田貞二氏の翻訳を絶対おすすめします。今までのファンの人たちや子供のころ読んだ人も、みんなこちらを読んでいます。また、映画の字幕も、こちらの翻訳語を参考にしています。
瀬田貞二訳は、岩波少年文庫「ホビットの冒険」がお手頃で持ち運びしやすく、挿絵が秀逸です。

アマゾンjp.へジャンプ(別窓) また、ハードカバーの「ホビットの冒険 オリジナル版」は、なんとトールキン教授自身によって描かれた挿絵が使われています。カラーも数枚あります。
トールキンファンには嬉しい一冊。本文が横書きなのも斬新で、今の人にはかえって読みやすいかもしれません。

アマゾンjp.へジャンプ(別窓) そして、さらに別の翻訳を読んでみたくなったら、山本史郎氏のもいいと思います。初めに読むには、あまりお勧めしません。

山本史郎訳の「ホビットーゆきてかえりし物語」のハードカバーは、物語本編より、資料本としてコレクターにはいいとおもいます。数か国の翻訳本の挿絵が、本編の中に挿入されています。縮小版なのが残念ですが、解釈がいろいろで面白いです。また、原作は何度か改訂されているので、その変遷が詳しく書かれているのが興味深いです。ただし、物語の翻訳としては、ちょっと直訳過ぎるきらいがあります。また、ゴクリ(ゴラム)の言葉づかいなども、赤ちゃん言葉のようで、物語としては、少し違和感があるのは否めません。




BBC ラジオドラマCD「The Hobbit」のこと

アマゾンjp.へジャンプ(別窓) 「The Lord of the Rings」のCDが、あんまり面白かったので、つい「The Hobbit」まで買ってしまいました。でも、だいぶ印象が違います。お子さま向けという事もありますが。LotR が、まるで映画を見ているようであれば、Hpbbit はアニメみたいな感じでしょうか。
ナレーターの他に、ビルボもナレーター的に話す部分があって、面白い感じになっています。
私の、大のお気に入りのCDの一組です。

まず面食らうのが、ガンダルフの声。イメージが違うのです。わりと、暖かさと深みのある声が私のイメージで、LotRのはとても合っていたのですが、こちらでは、もっと、性急でちょっと皮肉屋で謎の老人、という感じでしょうか。はじめに聞いたときは、どれがガンダルフか聞き取れなかったりしましたよ。ビルボは、まだ若いのでこんな感じかな。
このお話では、いろいろな動物が話しますね。一番面白いのが大鷲で「グワ〜〜、ガンダールフ、グワ〜〜」というように話すんです。蜘蛛はちょっと、幼児っぽい。狼もわりと高い声です。高いと言えば、エルフもだわ。その分、ドラゴンのスマウグはドスが利いた低い声で、ぐお〜〜というのは、迫力がでてます。もちろん、ゴクリも危ないシトです。
裂け谷のエルフと闇の森のエルフとでは、印象が全然ちがいます。その辺の気配りも嬉しいですね。
トーリンは低い声だけど、思ったほど年寄りっぽくなくて、同族を思いやるドワーフの王様の貫禄があっていいです。人間のバルドもかっこいいです。ビヨルンも人の形をしているときは、動物っぽいしゃべり方はしません。
とにかく、キャラクターがいっぱいなので、かなりごちゃごちゃした感じですが、原作の展開に忠実で、楽しい作品になっています。最後のトーリンのところは、ぐっと来ます。

さらに、音楽がいいです。どこかの民族音楽風なのか、私には解らないのですが、「エスガロスのテーマ」がお気に入り。ドワーフの歌もいいですよ。トーリンの竪琴のおとは、ちょっとはずれた感じが、不思議な響き。エルフの踊りは…えええ、そうかなあ、と思うけど、森のエルフだからいいのかなあ。音楽だけのCDもついているんだけど、4曲しか入っていないのは残念。
そうそう、ゴブリンも躍りながら歩いているのかというほど、ドンチャカにぎやかに歌いつつ、ドワーフを洞窟に連行していきます。このCDで聞く限り、憎めない種族みたいですよ(笑)

もちろん、ドワーフたちは小馬に乗って旅をするので、かぽかぽかぽと蹄の音が入っています。ビルボは小さいので、ビヨルンは小馬に乗るのを助けてくれているようです。

(注:アマゾンJPのカスタマーレビューは、別の商品のものが掲載されていますので、ご注意ください。このCDは、BBCのラジオドラマCD4枚と音楽だけの1枚の5枚組です)


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