山口和彦研究室





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    情報学専攻・U類
    場所東3号館 9階  居室919号室
    研究室911号室他




    P1研究室配属に関する質問相談のある方

    山口研究室に興味がある方の面談希望の方

    上記の2つのリンク先はすみませんが同じです。 説明することが重複しているので、勝手ながらまとめました。







■ 研究内容 「雑音や上正からの情報保護」をキーワードに 、 雑音からの情報保護「誤り訂正符号の研究」、著作権保護にも用いる「電子透かし、電子指紋(処理追跡)・結託耐性符号」等のセキュリティ技術などの研究を行います。


■ 研究室方針

山口研や関連分野に興味がある人を募集しています。セキュリティの分野は、発想力が役に立つこともありますし、豊富な知識やプログラミングスキルが役に立つこともあります。研究にはいろいろなやり方があり、それぞれの人に合った方法が見つけられるはずです。でもやはり興味をもってもらって取り組むことができればどなたでも歓迎です。ぜひ力を貸してください。
研究にはPCを使ってシミュレーションを行う場合がほとんどです。まれに、大勢の人に見たり聞いたりしてもらう主観試験を行うことはありますが特別な装置を使うことはあまりありません。プログラミング言語はCやC++を使うのがほとんどで、JAVA、Mathematicaなどを使う場合が多少あります。GPUベースでの実験を行ったこともありました。
研究室の各自のPC環境については全ての人にデュアルディスプレイの環境+ノートPCを準備しています(通常27インチ4Kモニタと24インチモニタ)。来年度も同様の環境となるでしょう。


■ 最近の誤り訂正符号に関する研究抜粋


信頼度を考慮したq 元線形符号における誤り検出率と復号アルゴリズム (誤り訂正符号の代数的な構造(仕組み)は暗号分野のアルゴリズムと密接な関係がたくさんあります。この研究は詳細な性能評価法の提案とそれにより新しい誤り訂正のアルゴリズムができることを示しています。)

数独による誤り訂正符号の理解についての研究
(数独パズルは消失通信路での復号の問題と捉えられます。誤り訂正符号を理解するのに役立つ研究です。)


■ 最近の電子透かしに関する研究抜粋


堂浦による二値画像用電子透かし手法の検証及び検討
(電子透かし技術は既に様々なところで用いられているセキュリティ技術です。暗号と異なりアルゴリズムを公開しすると削除や、改ざんなどの上正が容易になるのであまり知られていません。画像・音声などのコンテンツタイプに応じた方式の検討が必要な点も課題です。二値画像は白黒で濃淡の無い画像でちょっとした変更も目立つため、透かしの埋め込みは工夫が必要です。)

Tardos 符号のスコア分布特性を考慮した閾値最適化 (結託耐性符号は利用者のIDを埋め込むタイプの電子透かし技術です。複数人での上正を防止する方式の研究です。)


■ もう少し丁寧な解説

誤り訂正符号とは
誤り訂正符号はみんなが使っている携帯・スマホ(通信分野)だけでなく様々な分野で利用されています。ハードディスク、CD、DVD、BDなどの記録メディアでは、開発された年代により異なる誤り訂正方式が用いられています。皆さんにも身近な商品についているバーコードには誤りを訂正することはできませんが奇数個の誤りは必ず検出できる様になっています。よりたくさんのデータを保持しているQRコードは訂正できる誤りのレベルを設定できるようになっています。新しい通信システムではそれにあった方式を検討する必要があります。誤り訂正符号は誤りを取り除くため、代数的な性質を利用します。その性質は、暗号の設計や解析などとも関連しています。

バーコード QRコード
図 バーコードは読み取ったデータの誤りの検査、QRコードは誤りの訂正が可能になっている

数独パズルと誤り訂正符号
「数独《 、「ナンプレ《などとも呼ばれるパズルを解くことは「誤り訂正符号の誤りを訂正すること《とに対応しています。 数独の答えは670903752021072936960≒6.671×1021 あることが知られていますが、「数独の問題《は、数独の答えの一つを送信したものを受信したときに、一部の数字が消えたという「誤り《と捉えられます。「数独パズルを解く《ことは、空白を含んだ受信データから、元のデータを復元する「誤り訂正《といえるのです。

0または1を連続して送信文字として送信する通信を考えましょう。正しく0,1を受信するできればよいのですが、0を送っても1と間違える、1を送っても0と間違えることもあります。これが誤りです。また、判断を間違えないためにこの信号は0とも1とも判断できないとすることがあります。これは消失と呼ばれます。こうした送受信の状況は下左図の様な表現で荒らすことができます。これは二元誤り消失通信路モデルと言います。二元(=0,1を送信する)誤り消失(=誤りと消失が起こる)通信路というわけです。数独の答えがあって問題を作成することを考えましょう。81か所のマス目には1~9の数字が入っていてその一部分を残して空白を作ります。数字を書き換えることはありません。これは、送信文字が1~9(9種類)で、誤りは無く、消失(=空白)が起こりえる通信路、「9元消失通信路《にほかなりません(下右図)。

BSC sudoku  channel
図 通信の基本二元誤り消失通信路(左)と数独問題作成に対応した9元消失通信路モデル(右)


説明を簡単にするため数字{1,2,3、4}を用いる4×4のミニ数独(右図)を使いましょう。
ミニ数独の答えの総数は「288個《 です。その答えがどれだけ似ているかを調べます。
下左はひとつのミニ数独の答えになっています。下中央は左の答えと赤数字の部分4か所だけ違っています。この違う部分を空白にしたもの下右の図は、下左と下中央の2つの答えがあるので、適切なミニ数独の問題とは言えません。

あるミニ数独の答       左の答えに類似したの別の答   不適切な問題(答えが2つある)
図 2つの類似したミニ数独の答えとそれに対応する問題

上図右の問題は本来の数独のルールと異なり2つの答えが存在してしまう、不適切な問題です。これは不適切な問題の中で最も少ない空白の個数の例となっています。これは誤り訂正符号の世界では何個まで誤りを確実に訂正できるかという訂正能力と関係した値になっています。これを「最小距離」といいます。数独の答えを誤り訂正符号としてみなせば、最小距離が4であることを意味しています。
最小距離は誤り訂正符号の訂正能力を図る基本的な尺度ですが、性能をさらに詳しく調べるにはどれだけはなれたものが何個あるかとういう分布を知る必要があります。これが誤り訂正符号の「距離分布」です。実用的には線形符号というクラスの符号が使わており、その場合には重み分布という分布で評価できます。数独やミニ数独の答えの集合には線形性はありませんから距離分布を使います。4×4のミニ数独の距離分布を調べたものが以下の表の様になります。

表 ミニ数独の距離の分布
i 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
Bi 1 0 0 0 8 0 0 0 14 0 64 0 104 0 64 0 33

注:Biは以下の様な数を意味します。1つミニ数独の答えに対してi個の異なる箇所の異なる答えがいくつあるかという数を意味しています。i=0は異なる数が0は全く同じ答えですから自分自身でB1=1個あります。iが1〜3と5,6,7,9,11,13,15個と異なるという答えは無いこともわかります。

9×9=81のマス目がある、本来の数独についても関連調査をおこなうと、i=5までは同様(i=4のみ0でないということ)でミニ数独と異なり i=6以上において、0でない(答えが存在する)ことを具体的に示しました。誤り訂正の理解にも役立つ研究と評価されました。(i=4までについては以前に信州大西新らにより発表されています。)
以下に、数独の2つの答えが距離6となっている(6か所だけ数字が異なっている)例を示します。

距離6の2つの数独の答え"
図 6か所だけ数字の位置が異なる2つの数独の答え(距離6の2つの数独の答え)

 通信、記録機器の発展は目覚ましいため、すでに様々な分野で実用化が進んでいますが、次世代の方式は常に考えねばなりません。当研究室では、復号アルゴリズムの問題、性能評価の問題を中心に幅広く研究しています。



電子透かし(digital watermark)とは(説明作成途中、暫定版)
 電子透かしに関連する授業はセキュリティのコースでは行っていません。現在は先端工学基礎課程4年生科目の「暗号・情報セキュリティ」の中のコンテンツセキュリティの話題の中で山口が90分だけ受け持っています。それに準じて簡単に説明します。
下の表の比較を見てください。暗号をcryptographyといいますよね。これに対してsteganoguraphy(情報秘匿)という概念があります。暗号は秘密の情報を伝える時に、敵や第3者にその内容を隠すものですが、暗号文の伝達があることは隠しません。
steganoguraphyはその様な秘密情報の伝達があること自体を隠すものです。
 難題も多く、実用例など少ない分野ですが、関連する様々な問題を扱います。



■ 学生の発表(一部) 山口研でも学部生を含めて外部での発表を推奨しています

古屋,山口:“信頼度を考慮したq入力q×R出力対称通信路におけるRS符号の性能評価,” 電子情報通信学会, 第40回情報理論とその応用シンポジウム, 7.1.4 (2017 Nov.30)
北岡,山口:“RANSACアルゴリズムを用いた特徴点マッチングに基づく電子透かし検出法,” 電子情報通信学会, EMM, IT合同研究会,Vol. IEICE-IT2017-2,IEICE-EMM2017-2, no.504(IT), no.39(IT), no.40(EMM) , pp. 7-12 (2017 May22)
古屋,山口:“q入力r出力対称通信路におけるq元線形符号の性能評価システム(2),” 電子情報通信学会, IT・ISEC・WBS合同研究会,Vol. IEICE-IT2016-123,No.IEICE-ISEC2016-113,IEICE-WBS2016-99 , no.504(IT), no.505(ISEC), no.506(WBS), pp.155-160 (2017 March.10)
酒井,山口:“LDPC符号のBit-fliping復号法による特性検証,” 電子情報通信学会, 2017年総合大会,,No A-2-13. (2017 March.22)
吊波,平野,山口:“符号理論を用いた数独の理解” 電子情報通信学会, IT・ISEC・WBS合同研究会,Vol.IEICE-IT2015-101,IEICE-ISEC2015-60,IEICE-WBS2015-84 , no.500(IT), no.501(ISEC), no.502(WBS) , pp.1-6 (2016 March.10)

■ 関連資料

上記説明と一部重複しますが、調布祭やオープンラボで展示しているデータのPDFです

■符号理論誤り訂正符号関連の説明■

符号理論と数独
線形符号の復号性能評価ツール
Group Shuffled BPを用いたLDPC符号のARQに関する研究

■電子透かし関連の研究■

電子透かし技術
改ざん復元可能な電子透かしに関する検討
Tardos符号の検出に関する研究



■ 2021.10.28 revidced: by 山口