美人の絶対基準を科学的に求める実験がアメリカで行われた。たくさんの男性に女性の写真を見せて統計分析したところ、美人というのは
平均的な顔のことであるという結論になった。その写真というのはコンピュータ・グラフィックスで合成されたものなのだが、多くの顔が
合成された写真ほど美人だという判断が下されたらしい。
この論文が発表されたのは『サイコロジカル・サイエンス』誌で、確か1995年頃の実験だったと記憶している。このあと、平均よりずれた複数の顔の平均こそ美人の基準だという新たな論文が発表されたらしいが、それは読んでいない。
肝心の写真を見ていないので何とも言えないが、ふつうに考えると、平均的な顔というのは平凡で目立たない顔のことではないかと思える。しかし、この実験の結論にはなんとなくうなずけるものがある。
美人かどうかというのは、主観的な判断で下されるものだ。たとえば
幼いときに優しく接してくれた人に似ているとか、
クラスでいちばん魅力的だった女の子に似ているとか、あるいは
世間で美人の代名詞のように言われている人たちの印象が知らず知らず蓄積されて、美人という価値判断に積み重なっていく。
とすれば、美人とはさまざまなものになるはずで、平均的な顔が選ばれるのは当然のことだ。それも、まったく同じではいけない。少しずれているからこそ安心して「美人」と呼べるのだ。