電気ショックという罰によって、どれだけ学習にプラスになるか。そういう触れ込みの実験だった。
電気ショック発生器には、15ボルトから450ボルトまでの電圧が表示された30個のボタンがついている。操作するのは
教師で、隣に白衣を着た
教授が立っている。電気椅子には
学習者が座る。
学習者が課題を覚えられないと、
教授は電圧を上げるよう
教師に指示する。
実験はこの3名が主役だが、実は、
電気椅子は偽物であり、
教授と
学習者は仕掛け人だ。
人間がどれほど大義名分に弱いかを知るための実験だった。
教師=
被験者は、新聞紙上で公募された。職業や性別を問わず20〜50才の人たち、1000名以上が実験に参加した。
被験者の大多数は犠牲者にショックを加えて喜ぶどころか、さまざまに情緒的な緊張と苦痛の症状を見せた。どっと汗をかくもの、教授に実験打ち切りを嘆願するもの、実験は残忍で愚かしいと訴えるもの。にもかかわらず、その三分の二は最後までやってしまうのである。
(アーサー・ケストラー『ホロン革命』)
ここでの
教授は権威があるどころか無名人であり、
教師とは何の関係もない。セリフも最初から決まっており、恐喝、洗脳に類することは言わないことになっていた。それでも、実施国によって60%〜85%の人が450ボルトのボタンを押してしまう。