団鬼六ののおすすめエッセー

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  • 団鬼六おすすめエッセーを紹介します 団鬼六の悪漢小説には興味はないですが、エッセーには
    面白いものが多いと思います。

    団鬼六のおすすめエッセーを紹介します。


    NO.1死んでたまるか 団鬼六  講談社     


    団鬼六の面白いエッセーです。
    団鬼六は、快楽主義者です。快楽無くして、何の人生か
    という人です。
    団鬼六の書くエッセーが素晴らしい事を知っている人は
    多くないと思います。
    無頼小説を書いているので、無頼派の生活をしていると思う人が
    多いでしょうが、人情味の厚い、家族思いの人間です。

    このエッセー集は、13才から79才までに書かれた19話のエッセーです。

    どの話も面白いですが、
    第2話のショパンの調べ、第4話の除夜の鐘、第5話のくず屋さん
    第19話の瘋癲老人が特に面白いです。

    (第2話 ショパンの調べ)
    関西学院大学生の学年期末試験で「英語購読」を
    落第点をとった団鬼六は、再試験を受けるが、
    Chopin(ショパン)を、チョピンと訳してしまいます。
    就職が決まっているのに、落第してしまうと思った鬼六は、
    峻烈な大村教授に合格点をくれるように頼みに行きます。

    大村教授が将棋好きなことを知って、大村教授と
    将棋を指します。
    大村教授が、自分が格上だと言って、角落ちで指しますが、
    何回やっても、鬼六が勝ちます。
    「ヘボとやると実力が発揮できない」
    大村教授はそう言って、何回も挑んできます。

    そこへ大村教授の再婚相手お、20才年下の奥さんのケイコちゃんが
    帰ってきます。
    ケイコちゃんは言います。
    「ね、三人そろったんだから、ダイヤモンドゲームをしましょうよ」
    その日は、大村教授と奥さんの顔を立てるため、深夜まで
    将棋とダイヤモンドゲームをくり返すことになりました。

    数日後、再試験合格通知が来て、鬼六は大学を卒業できました。
    卒業証書を受け取りに大学へ行き、たまたま、大村教授と出会いました。
    改めて一度、またお礼に参上しますと団鬼六が言うと
    「それなら、今夜がいいね。今夜、6時頃、いらっしゃい」
    「家内が君とダイヤモンドゲームをやりたがっているんだ。夕食は
    家で食べなさい」
    「いいね、必ず、来なきゃ駄目だよ」と大村教授は言います。


    (第4話  除夜の鐘)
    25才の鬼六は、将棋クラブで、村田という男と
    賭け将棋をして、14勝1敗でした。
    村田は、負けた金を払えないと言います。

    村田は鬼六を自分の家に案内します。
    二十四、五才の狐のような女房の治子と「ここでやれ」と言います。
    陰気な部屋で、狐みたいな女を抱く気になれない鬼六は、
    「自分はインポだ」と言って、断わります。

    お金が無いことで、村田と治子の夫婦喧嘩が始まります。
    鬼六は「正月の餅代ぐらいになりまっしゃろ。使うてください」と言って
    数百円を手渡します。

    二人は鬼六に感謝して、サービスと言って、二人のセックスを鬼六に
    見せるのでした。


    (第5話 くず屋さん)
    二十七才の鬼六は、新橋の酒場を経営していました。
    経営はうまくいかず、ある年の暮れ、街の金融業者に
    30万円の借金を申し込んで、断わられます。
    大卒の初任給が1万円位なので、30万円は大金です。
    従業員の給料だけは年末に支わなければなりません。
    鬼六は頭を抱えました。

    店の裏口から、汚い身なりのくず屋が入ってきて、
    「いつものように将棋を指そう」と言います。
    鬼六は言います。
    「おい、今日はだめだ。今、こっちは将棋どころの騒ぎじゃないんだから」
    「金の問題で今、頭を痛めているんだよ。当てにしていた30万円が
    間に合わなくなって、俺、少し、気が立っているんだ」

    申し訳ないなと言うと、くず屋さんは、雨の中を外に出ていきました。
    1時間ぐらいして戻ってきて、新聞紙の包みをスタンドの上に置くと、
    将棋の駒を並べはじめました。

    「その新聞紙の中に30万円、ありまっせ」
    「はあ?」
    「あんたやったら信用出来るさかい、貸したげまっさ」
    「それだけあったら、落ち着いて将棋を指すきになりまっしゃろ。
     この間のかたき、討たせてもらいまっせ」

    そのくず屋さんが、その後、実業家として成功した吉田和三郎さんです。
    今の自宅は芦屋にあって敷地は5百坪はある大豪邸に住んでいます。


    (第19話 瘋癲老人)
    団鬼六が、75才で、腎臓が駄目になって、人工透析を拒否していたのですが、
    透析を受け入れるようになった心境の変化について語っています。

    週3日は病院に通って、透析を受けます。
    透析のある日は心身ともにぐったり疲れて1日中、なすすべがないが、
    次の1日は健康を取り戻して元気になる。

    以前は仕事するより、遊びを優先したのだが、最近では
    遊ぶ閑があったら仕事の方を優先するという考えになるなど、
    自分でも自分の豹変ぶりに驚いている。

    団鬼六に今度は食道がんが見つかります。

    団鬼六は言います。
    「恋愛の恍惚に今一度、浸りたいという願望について、
    あなたは事実上不可能であると妻にも言われているが、
    そんな事は人に言われなくたって自分でもよくわかっているのだ。
    ただ女を愛するという気持ちだけは、いや、女を愛すなんて
    恰好をつけたいい方ではなく、単に女好き、というか、いや、
    色好み、助平さ加減というか、これだけは喜寿を通りこした
    おじさんになってもインポじじいと蔑まれても変わりようがないという事を、
    私は言いたいのである。
    官能小説を書きなぐってきた私が、いまだに女性の正体というものが
    はっきりわからないのだ。」

    作家の開口健は言いました。
    「人生において大切な物が3個有る。
    機知(エスプリ)とユーモアとセンスだ」と。
    団鬼六のエッセーには、この3個の物が有ると思います。

    官能小説を量産し、生涯に6人の愛人を持った団鬼六でも。
    女性の正体がはっきりわからなかったのですね。(H.P作者)



    NO.2 最後の愛人  団鬼六  無双舎        
    快楽主義者の団鬼六の自伝的エッセーです。
    団鬼六のエッセーは、面白いものが多いです。

    構成は、下記のようになっています。
    瘋癲の果て さくら昇天
    さくらの墓
    花は葬らしめよ

    団鬼六が70才の時に、浜田山のキャバクラで、
    キャバクラ嬢の23才のさくらと知り合い、
    援助交際を申し入れて、さくらもO.Kします。
    団鬼六の6番目の愛人です。
    さくらは会津の出身です。

    さくらは、濡れたような抒情的な瞳が乳色の冷たい
    顔立ちに似合い、どことなくしっとりとした翳りが
    男心をそそる深みを感じさせるような女性です。
    団鬼六が永遠に愛し続ける女の容姿の原形があるとすれば
    さくらの容姿は正にそれだったと、団鬼六は言っています。
    鬼六がさくらに惹きつけられた魅力の一つは
    古風な色香でした。

    団鬼六は、老人性のインポなので、さくらとは
    プラトニックな付き合いです。

    団鬼六は、妻にもさくらを愛人として紹介します。
    団鬼六の妻も、昔は団鬼六の愛人でした。
    妻もさくらを気に入ります。
    団鬼六がインポなのは知っているので、さくらを
    愛人にすることを認めます。

    そのさくらが自殺してしまいます。
    不眠症のため、睡眠薬とビールのチャンポンをして、
    泥酔の状態になって、発作的に首をつったらしいのです。
    団鬼六は、すごいショックを受けます。

    鬼六は、男の編集者1人と、女の編集者2人と一緒に
    会津へ、さくらの墓参りに行きます。
    4人で、旅館で酒を飲みます。
    1人の女編集者が言います。
    「女は、心から好きな男で性技にも熟練した男に
    可愛がられて絶頂に到達すると、果てた自分が
    しだれ桜になったような恍惚とした気持ちになるんです」

    鬼六は、昔からの知り合いの金融業者の川村と会います。
    川村の次女の真弓が「癒しの華」という合コンサークルを
    やっているので、それに鬼六は参加をすすめられて参加します。
    「癒しの華」は、売春したい女子大生と男を合わせるサークルです。
    鬼六はアサミという女子大生に引き合わせられます。
    鬼六は、バイアグラを飲んでも勃起しないのです。
    「大黒クリニック」で、バイアグラよりも強力な精力剤の
    注射をすすめられますが、鬼六は断わります。
    へたすると、1週間も勃起がとまらなくなることがあり、
    その場合は、解毒剤の注射が必要だと言われ、鬼六は
    注射を断ります。


    アサミと話していて、その風情に奥ゆかしさがないのにも失望して、
    お金だけ払って、アサミとラブホテルに入らずに、帰ります。

    団鬼六が思い出すのは、とても奥ゆかしい風情のある二人の
    女性です。
    鬼六が24才の時につきあっていた、青線の女性の梅子と、
    さくらです。

    鬼六は、女性編集者に言います。
    「愛人さくらと愛犬アリスと、そしてこの瘋癲老人が墓の中で
    一緒になる。これが君、俺の理想の世界だ。理想の死後世界だ」
    「それでね、君」
    「この世では果たせなかったけれど、あの世でさくらを仕上げてやるんだ」
    「何にですか」
    「しだれ桜にだよ」




    団鬼六はよく言っていました。
    「快楽なくして何の人生か」
    「男なら愛人の一人ぐらいつくれ。まじめなだけの人生では
    何の楽しみもないじゃないか」と。

    無頼を装っていましたが、本当はサービス精神旺盛な、優しい人だったんだと
    思います。
    娘から愛され、多くの友人や編集者から好かれた人です。

    娘の黒岩由紀子さんが。「手術はしません 父と娘のガン闘病450日」
    で書いています。

    「大金持ちも貧乏人も、大女優もストリッパーも、
    刺青師も勝負師も、父の前では皆、裸になったように平等で、
    楽しさを享受しあっていた。
    楽しさの前では、人は誰でも子供にかえる。
    それこそが人間の本性に適った生き方なのだ。
    私はこのことを教えてもらった。
    あの春の晴れた日、父はかくも雑多で、喜びと悲しみにあふれ、
    美しいことも醜悪なこともたっぷちあるこの世界こそ、生きて
    いくのにふさわしい、実に素晴らしい場所なんだ あらためて、
    そう思っていたに違いない」

    快楽主義者の団鬼六は、妻と娘にみとられて、
    喜びと悲しみ、美と醜に満ちた79年の生を終えました。
    多くの人に愛された人生でした。
    最近の若い女性は、恥じらいも
    奥ゆかしさもない女性が多いですよね。
    団鬼六の思うエロスとは遠い世界にいる女性が多いのを
    団鬼六は嘆いていました。(H.P作者)



    NO.3快楽なくして何が人生  団鬼六  幻冬舎新書   


    快楽主義者の団鬼六さんが、青年期から現在に至るまでの快楽的自叙伝を書いたという本です。

    構成は下記のようになっています。

    第一章:透析拒否
    第二章:快楽教団の構想
    第三章:怠惰・放蕩は遺伝
    第四章:変質者第一号
    第五章:女性の純潔と魔性
    第六章:不倫天国と愛人論
    第七章:放蕩人生
    第八章:転落もまたたのしからずや
    第九章:三年周期
    第十章:堕落の美学

    内容の概略を紹介します。

    団鬼六の父親は、株の相場師をやりますが、失敗ばかりして、借金をこしらえます。
    また、愛人を何人も作ります。
    快楽主義者の団鬼六の根底を作ったのは、父親だと、団鬼六は言います。


    団鬼六は、父の遺伝だと言っていますが、やはりギャンブル好きで、よく失敗します。
    また、愛人を作ります。生涯に6人の愛人を作ったそうです。

    団鬼六は、関西学院高校、大学を卒業しました。
    大学生の団鬼六は、父親から相場に投資しろと言われて、数人の友人から50万円を借金して、
    相場に投資したのですが、相場が暴落して、50万円を失います。友人にお金を返せないし、
    会わす顔もないということで、しばらくの間、東京に逃亡していたことがあるそうです。

    団鬼六は、大学生の時、鈴木菊江という女子大生とプラトニックな関係で
    3年付き合っていました。恋人でした。
    大学の英語研究部の親善登山旅行が行われ、団鬼六の後輩の山田という男が、
    テントの中で、鈴木菊江と関係を持ってしまいます。
    1回関係を持っただけで、鈴木菊江は、団鬼六を捨てて、山田と恋人になります。
    「やったが勝ち」だと、団鬼六は言います。
    いきずりの男とでもふと一緒にテントに入ってしまうというような魔性を
    本然的に女は持っていると、団鬼六は言います。
    団鬼六は、23才の時に鈴木菊江にふられたので、女性不信に陥り、女性蔑視の
    傾向が出てきたそうです。


    団鬼六は、男たるもの、愛人を持つべきだと言っています。
    妻が可哀想などといって浮気を差し控えていては、男としての
    資格はないそうです。
    英雄、色を好む、といってふんぞり返っていてかまわないそうです。


    42才の頃、堀川敏江という22才の学生と、2年間の約束で
    愛人契約を結んだそうです。
    堀川敏江は、女子学生を愛人として紹介してくれる、
    中川という大学生に紹介してもらったそうです。
    堀川敏江は、女の繊細な心遣いを見せるし、女らしいためらいや
    はじらいを示す女性だったそうです。
    堀川敏江は言います。
    「私、いくという感覚を先生に教えられました」
    「先生は男には妻以外に愛人が必要だとおっしゃるけど、
    女は人の妻になる前に愛人時代があるのも必要だと思うわ」


    団鬼六は、大学を卒業してから、ストリップ劇場の舞台監督助手になります。
    昭和32年、26才の時に「オール読物」新人杯に「親子丼」で入選して、作家デビューします。
    27才の時に「大穴」を出版して、ヒット作になります。
    「大穴」は映画化されて、松竹に映画化権を35万円で売ります。 大学での初任給が1万円ぐらいの時です。
    新橋に格安で酒場が売りに出ていたので、それを買い取って、酒場経営を
    始めます。
    酒場経営に失敗して、借金でどうしようもなくなり、東京から
    神奈川の三浦に夜逃げします。

    団鬼六は、三浦で教師を始めます。
    三浦で英語教師の女性と結婚します。

    英語教師をしながら、「花と蛇」というSM小説を書いて、
    SM作家としてのスタートを開始します。
    SM作家の大家になっていきます。


    団鬼六の人生は、快楽を求めた人生でした。
    男たるもの、愛人を持つべきなのでしょうか?
    生涯に6人の愛人を持ちましたが、女とはどのようなものか、
    さっぱりわからないと、団鬼六は言っています。
    女は魔性の生き物なのでしょうか?

    団鬼六の悪漢小説は面白いとは思いませんが、団鬼六のエッセーは
    とても面白いと思います。
    団鬼六は、善人とも悪人とも幅広くつきあい、修羅場もくぐってきて、
    人生の浮沈を経験しているので、人生経験も豊富で、面白いエッセーを
    書けるのだと思います。
    根底には、とても優しい心が感じられるエッセーが多いです。

    幻冬舎社長の見城徹が言っていました。
    仕事ができて、エネルギーのある男は女を引き寄せるので、
    作りたくなくても、愛人の一人や二人、すぐできてしまうと。
    ほんまかいな?




    NO.4