この小説はすごい。久しぶりに読み返したら、その小説の持つ力に引き込まれ、4回読み返しました。
私が小説としての高みに到達していると思うのは、この小説と、車谷 長吉の「赤目四十八瀧心中未遂」です。
色川 武大の「離婚」も入れて良いかな。(H.P作者)
放浪癖の有る犀太と妻のオランダ人女性のジニーが主人公です。
主人公が生き生きと描かれていて、すぐ近くで息をして、話しているように感じます。
ジニーがとても魅力的です。
それにしても、欧米の女性は、夫がいても、夫以外の他の男と性愛しても悪い事とはおもわないものなのでしょうか。
そんなジニーに犀太の心は引き裂かれるような苦しみを感じます。
本当に、私は欧米人の女とつきあった事が無くて、幸せだと思いました。
ジニーと犀太の会話が素晴らしいです。
一例は、下記のようです。
「どうして起こしてくれなかったの」
「まだ早いじゃないか」
「どうしてあたしを待たないであけちゃったの」
「どうしてって、たいしたことじゃないだろう?兄貴がこわれているものはないか気になってさっさとあけたんだよ」
「たかだか台所用品 今のあたしにはこんな事しか楽しみがないのよ。それなのに理解してくれないのね。」
「・・・・・・・」
「ヨーロッパではあなたの妻として申し訳ないことをしました。
罪を犯したとは思っていないけど、あなたの妻としてなにもしていない、それが心残りだった。
いまは・・・これはあたしたちの最後のトライアルでしょう?そうでしょう?
あたしは日本人の奥さんのようにはなれないけど、ベストはつくしたい、そのためにきたのよ。
お願い、馬鹿ばかしいといったらとたんに糸はプッツリと切れてしまう、そもそもが細いんですから。
足場だってもろく崩れてしまう、ハウス・ワイフなんて砂の防波堤みたいなもんだから。ね、リノ、お願いします」
射精はしゅるしゅると音をたてて夜空に花開く打ち上げ花火だった。
尿道がえぐられて広くなった感じがしたし、たまっていた精液が人を陰うつにする悪の根源だったみたいに急にさばさばした。
腰と膝をバネにして何度も君をはねあげた。
「よかったわ。切れかかっていた糸が結びなおされたわ。リノを感ずるの、いま、このいまのいま。
地球のうえではなればなれになるけどもういい、あたしに不安はないわ。」
君は瞳のすぐうしろにある扉をあけはなって外をうかがい、しきりにぼくの内へとはいりこもうとしていた。
「ついにジニーをファックしたぞ。なあ、いっしょにメキシコにいかないか?」
「いい女友達をつくりなさい。ペニスをもっとつかわなければ退化しちゃう。」
日本人の妻は亭主にこんな事は言わないよね。
ジニーと犀太の人生は交錯し、ともに歩んでいけるのだろうか。
しかし男はつらいよね。勃起し、挿入しないと女性(ジニー)との糸を結べないんだから。
勃起しない男はどうすれば良いの?
私も年寄りになってきたし。(H.P作者)