姫野カオルコのおすすめ本

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    姫野カオルコの小説は、ユーモアが有って面白いと思います。
    小説の「不倫(レンタル)」と「結婚は人生の墓場か」を紹介します。




    NO.1不倫(レンタル)  姫野カオルコ  角川文庫     


    不倫について書かれた小説です。

    主人公は34才の女性の力石理気子です。
    力石理気子は大柄な女です。
    身長170cmで体は丈夫です。
    旧家に生まれて、剣道と合気道となぎなたと空手を
    習わされました。
    現在は作家です。
    まだ処女です。

    力石理気子の生活の大半は、原稿を書くことと、叔父の世話をしに
    病院に行くことで占められています。
    理気子は卵巣に障害があることがわかります。

    理気子は、パーティで霞雅樹と知り合います。
    霞雅樹は36才です。
    霞雅樹は出版社でデザインや企画を担当しています。
    霞雅樹は、スキンヘッドにしていて、歯並びがきれいです。
    理気子は、スキンヘッドで歯並びがきれいな男が好きです。

    雅樹と理気子は、カラオケボックスでキスをした後、
    道路で激しいキスをします。
    キスをした後に、雅樹は自分に妻がいることを告げます。
    雅樹の妻は妊娠中です。

    「力石さん、でも聞いてほしい。
    ぼくがキスしたのは、嘘いつわりのない気持ちからなんだ。
    へんな歌、うたってるきみがほんとうにかわいいと
    思ったからです」

    理気子は、ある雑誌に高齢処女と書かれたことがあります。

    理気子と知り合いの編集者の星野良二は、えりかという妻がいるのに、
    バレリーナと浮気しています。
    星野良二が言います。
    「怖いんだ。妻への愛は妻への愛、彼女への愛は彼女への愛、
    というふうに仕切りで区切れなくなって、自分の足場がどこにあるかが
    見えなくなって、自分が壊れていくような不安感だけにつつまれる。
    男はそれが怖いんだよ」

    理気子は雅樹との関係で、思います。

    だって、いいのに、そんないいわけ。
    きみとは結婚できない、でもヤリたい、って言ってくださるのなら
    こんなに光栄なことはないの。

    雅樹と理気子はホテルに行って、セックスします。初体験です。
    理気子は、以前、処女膜を、自分でドライバーで破っています。
    それでも初体験の時は、痛みを感じました。

    理気子は雅樹と回数を多くセックスしてほしいのですが、
    雅樹はフランス式で話すと話が長く、時間切れになって、
    セックスできずに別れることが多いのです。
    テニスの1セットでも10ゲームなので、理気子は雅樹と最低でも
    10回はセックスして、相性を知りたいと思うのですが、
    回数はなかなか増えていきません。


    理気子は、女性雑誌の「不倫の悩み」の記事を読んでいます。

    「彼が帰ったあとのがらんとした部屋で、彼が乱したシーツに涙を
    落とすのです」
    「土曜の夜と日曜、それは地獄の苦しさです」
    「訊いてはいけないと思いながら、彼の奥さんのことを訊いて
    しまってあとで想像の中の彼女に苦しめられる。ごめんなさいと想像の中の
    彼女にあやまらなければならないつらさ」

    理気子には、これらの記事がピンときません。
    理気子は雅樹を部屋には呼びません。
    雅樹の奥さんのことを訊きたくならないのに、雅樹が勝手に話します。

    理気子担当の星野良二の妻えりかと理気子は知り合いです。
    えりかは6才年下の男と不倫しています。

    えりかは言います。
    「もうこんな関係はいや、わかれたいの、でも身体がわかれられない」
    「このまえはたのしそうだったじゃない」
    「いまだってたのしいわ」
    「じゃあ、わかれなくていいじゃない」
    「だめ。私には家庭があるもの。星野のことは愛しているもの」
    「でも、それってさいしょからそうでしょう。星野さんのことをきらいになって
    六つ年下のその人を好きになったわけじゃないでしょう」
    「そうだけど・・・・・あまりに肉体がむすびつきすぎると苦しいのよ」
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    「そんな問題じゃないのよ、わたしが訊いているのは。
    べつの女と時間を共有していることがいやじゃないのか、ってことよ」
    「タックン(不倫相手)が会社の女の子と映画に行ったの。涙が出るの」
    「いいじゃない、映画に行くくらい」
    「映画に行くこと自体はいいわよ。きょくたんな言い方したら、
    セックスしたっていいわよ。問題はその女の子にはタックンは気が
    あるの。女の子もなの」
    「なんでわかるの」
    「話を聞いているとそうだから。ふたりはデキてないの。
    でもデキてなくて映画に行ったりごはん食べたり、そういう、なんていうか
    デキてないのに仲がいいていうのが、デキてる以上につらいの」


    夏になり、霞雅樹から理気子に手紙がきます。
    手紙に書いてあります。
    「会えばパトスは悲劇ではなくなり、歓喜にみちたものと変わり、
    めくるめくような愛の傷に溺れてしまう。あなたに会うときの歓喜と
    そのあとに訪れる苦しみと。
    ぼくは両者に崩壊しそうになり、混沌とした暗闇に自らをなげうって
    日々を過ごしているのです」


    理気子と雅樹の関係はどうなっていくのでしょうか?


    理気子は、不倫していても、自分を冷静に保っていられます。

    星野良二は理気子に言います。
    「えりかのことは愛してるよ。でもあの子には惚れてる。
    惚れてるのと愛してるのとはちがうんだ」
    「人を好きになるということは、わけがわからなくなるということなんだ。
    わけがわからなくなって、そのあげくに大好きな人間を両方とも
    傷つけてしまう」

    理気子は、1回のセックスでは相性はわからないと言います。
    最低でも10回はしないと、相性はわからないと。本当ですか?

    女性は、男から、自分の事を女として見られると、嬉しいようですね。
    セックスの対象として見られると、もっと嬉しいようですね。
    中村うさぎが言っていました。
    「私がいいなと思っている相手なら、ボディタッチも欲情した視線も
    勃起したペニスも大歓迎よ」と。(H.P作者)




    NO.2結婚は人生の墓場か  姫野カオルコ  集英社文庫        
    結婚というものについて書かれた小説です。

    主人公は小早川正人、出版社の創造社勤務です。
    派遣社員として創造社に勤務していた東雪穂と付き合うようになります。
    東雪穂は、聖マルタ女子短大の卒業です。
    東雪穂は、幼稚園の時から、聖マルタの学校に行ってます。

    小早川正人は東雪穂とラブホテルに入ります。
    正人はコンドームをつけようとしますが、雪穂は、カトリックだからという
    理由で、それを拒否します。
    セックスして、妊娠します。
    二人は結婚することになります。
    できちゃった婚です。

    女の子が生まれたので、なつほという名をつけます。
    3年後にまた女の子が生まれたので、はるなという名をつけます。
    正人は、二人の子供を愛しています。

    雪穂の要求で、正人は何回も引っ越しするはめになります。
    年収1600万円の正人に向かって、雪穂は
    「あなたの年収は低すぎる」と言います。

    なつほもはるなも、幼稚園からマルタに入れたので、
    二人が中学生になると、マルタ関係の教育費が無茶苦茶かかるように
    なります。(英会話教室、バレエ教室、数学塾、バイオリン、フルート、
    フランス語個人レッスン等)
    給料だけでは足りずに、借金しないと生活が成り立ちません。

    正人は、毎晩、雪穂の体をマッサージします。
    子育てが重労働だからというのが、その理由です。
    正人の仕事が忙しくて、会社にとまることになったので、
    雪穂に、マッサージできない旨の電話をします。

    「ひどい」 雪穂はこぬか雨のように泣きはじめた。
    雪穂は、目の周囲にミスト状の汗のような涙をにじませる
    泣き方をすることがあって、それを「こぬか雨泣き」と、
    小早川は密かにネーミングしている。
    「どこまで・・・・・?」
    こぬか雨のように弱々しく訊く。
    「ど、どこまでって?」
    「どこまでパパはわたしを見下せば気がおさまるの?
    わたしが専業主婦だから?わたしはね、今日はなつほのマルタ指定の
    国産綿100%のソックスを買いに行ったの」
    こぬか雨。
    「デスクワークのパパとちがって、わたしは子育てと家事で
    毎日へとへとに疲れているのに、パパは家庭をかえりみない・・・」


    正人は家で散歩もできません。

    枷だけがある結婚生活では散歩はできないのである。
    <ちょっと散歩してくるよ>と結婚した当初、雪穂に言ったことがある。
    <どうして?>雪穂は理由を求めた。
    <べつに>正直なこの理由を言うと、雪穂はさめざめと泣いた。
    泣いて訴えた。散歩する時間があるのなら風呂場のタイルを磨いてほしい。
    換気扇をクレンザーで洗ってほしいと。


    雪穂を理論で説得する事はできません。
    自分の感性で一方的に怒ったり泣いたりするので、正人はじっと我慢するだけです。

    雪穂は、マルタ学園で幼稚園から短大まで過ごしてきたので、
    自分は必ず愛されるという発想しかない。
    助けてもらえる価値が自分にあるとしか発想しないということだ。
    自己客観性が欠落し、自罰の視点が皆無である。
    「小早川正人はわたしを愛するのが当然であり、
    わたしは愛されるべきである」という以外に発想ができないほど、
    想像力が乏しいのである。

    正人は、できるものなら、雪穂とセックスした時に戻って、
    コンドームをつけてセックスしたかったと願っています。


    正人と雪穂の結婚生活は、どうなっていくのでしょうか?



    仕事で疲れているのに、毎日、専業主婦の奥さんの体をマッサージして、
    仕事で会社に泊まるからマッサージできないと電話すると、怒り出す
    奥さんなんて、私だったら、こちらからお断りです。
    散歩する自由もない結婚生活って、何なんですか?
    自己を客観視できず、他人を思いやる想像力のない
    結婚相手なんて、いやですね。
    ずっと辛抱している正人の姿を見てると、いらいらしてきます。(H.P作者)


    NO.3