茨木のり子は、りんとした詩人でした。
女性詩人でエッセィスト、童話作家でした。
迎合する事をきらい、自分と他人を励ます、りんとした詩を書いた詩人でした。
自分の眼を信じて、他の者にたよるな、よりかかるなという詩を書いた詩人です。
弱った心を勇気づけ、激励する詩を書いた詩人でした。
詩集「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」 小学館 から
「自分の感受性くらい」の詩を紹介します。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ