短編が5作、入っています。
二志野町の泥棒、石路南地区の放火、美弥谷団地の逃亡者、
芹葉大学の夢と殺人、君本家の誘拐です。
泥棒、放火魔、殺人者、誘拐の話です。
それなのに、静謐な世界が広がっています。
夢を見ているような、夢の中の日常のような不可思議な世界です。
事件をおこすのは、現実に適合できない人々です。
女の人は、他の女の人と張り合い、嫉妬します。
男の人も、世渡り下手だったり、ストーカーだったり。
奇妙な人間が、事件を起こすのに、物語は、奇妙に静謐な世界を形づくっています。
勘違いしたり、自分の思い込みで現実を歪曲したりする人々。
奇妙で哀しく、切実で静謐な光に満ちた小説世界。
辻村深月の物語作家としての力が発揮されています。
辻村深月の、確かな人間観察眼を感じます。
好きな本で、おすすめ本です。