私は、昔から、作家:色川武大のファンです。
麻雀小説作家の阿佐田哲也としても有名です。
色川武大としては、「黒い布」「怪しい来客簿」「百」
「生家へ」「離婚」「恐婚」等、傑作が多いです。
人生論の「うらおもて人生録」は、一時期、私を
導く、人生の書でした。
小説は、皆、好きですが、
中でも「百」と「離婚」が好きです。
「離婚」が一番好きです。
フリーライターの羽鳥誠一は合津すみ子と離婚したのに、
また一緒に同棲することになります。
二人は、社会の規範に従って生きていくことができません。
僕は、自分の事をダメ人間だと思っていますし、相方の事も
パットしない人間だと思っています。
でも、生活力のない、すみ子のことをつきはなすことができません。
不可思議な愛の世界が展開します。
誠一とすみ子の会話が生き生きとしています。
すみ子の天心爛漫なところがいいです。
すみ子は、理性でなく感性で生きるタイプです。
彼女は犬と一緒に、テレビの前に布団を敷いて寝ているのです。
「またア、いやなことするんでしょ」
「君がいやならしないよ」
「いやなことしないでよ。ほんとよ。あたし、お店じゃ、処女だっていってるんだから」
そういいながら、ぼくのベッドにもぐりこんできます。
「人妻のアルバイトの処女か」
「人妻でも処女だわ、っていうと、お店じゃそうでしょう、ってうなづいてくれるわ」
「そうかね」
「あたし、若いのよ」
「そうだろう、多分」
私は、男女の愛を描いた素晴らしい小説だと思っています。