渡辺淳一のおすすめ本

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  • 渡辺淳一のおすすめ本を紹介します 渡辺淳一のおすすめ本を紹介します。

    渡辺淳一の小説は、言葉が平易で読みやすく、面白い本が多いです。



    NO.1何処へ  渡辺淳一  講談社文庫     


    主人公の男は、相木悠介で35才です。
    北海道の大学病院の医師を辞めて、作家として身を立てるべく、
    東京に行きます。
    妻と二人の娘は、札幌に残して、東京に行きます。
    医師のかたわら小説を書きだして、4年が経っています。
    中央の有力な文学賞の候補に2度なっていますが、落選しています。

    東京に、28才の愛人の裕子を連れていって、2DKのアパートで同棲することにします。
    裕子を誘うと、了解してくれます。
    裕子は、経営していたバンケットクラブを辞めて、同棲生活を始めます。

    悠介は、週3日、病院で整形外科医として働き、その他の時間は、
    作家として小説を書きます。
    裕子は、銀座のクラブで、ホステスとして働くことにします。
    午後4時ぐらいに出かけて、深夜の2時ぐらいに帰ってきます。

    悠介は、病院の事務員の雅子を食事に誘ってから親しくなります。
    家には、自分一人で住んでいると、雅子に言います。
    夜に雅子を家に呼んで、関係を持つようになります。
    悠介は、家で裕子と同棲している事は雅子にはばれないと思っています。
    また、家に雅子を呼んで、関係を持っている事は裕子にはばれないと思っています。
    しかし、裕子は疑いを抱き、雅子も疑いをいだきます。
    裕子は、悠介に断わりもなしに、自分の荷物を持って、行き先も知らせずに、
    引っ越していきます。


    悠介と裕子の会話です。
    求めたとき断られて、悠介はいささか狼狽した。
    「理由があるなら、いってくれ」
    悠介が尋ねると、裕子が背をむけたまま答えた。
    「そんなの、自分にきけばわかるでしょう」
    「自分に・・・・・」
    「いったい、なんのことをいっているんだ。
     もっとわかり易くいってくれよ」
    「いつも、鏡台の上をいじらないでほしいの」
    「・・・・・」
    「わたしの下着や着物を、勝手に動かさないで欲しいの」


    悠介と雅子の会話です。
    追い打ちをかけるように雅子がいう。
    「でもわたし、あなたが女性といることを知ってたのよ」
    「どうして?」
    「だって、男の一人住まいなら、あんなに細々としたものまで
     揃っていないでしょう。箪笥も鏡台も女性のものだし。
     バスルームには、ときどき長い毛も落ちていたわ」
    いろいろ隠したつもりだが、裕子と雅子と両方から見られていたのでは、
    お手上げである。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    勝ち誇ったように、雅子が胸をそびやかす。
    「わたし、少し悪戯をしてあげたの」
    「いたずら?」
    「バスルームのティッシュケースの中に口紅を入れといたり、
     他のシャンプーをおいたり」
    「そんなことを、君が・・・・・」
    「だって、口惜しかったんだもん」

    雅子も、悠介とのつきあいを避けるようになります。


    悠介は、裕子が住んでいるマンションを教えてもらいます。
    深夜に訪ねていきますが、チャイムを押しても、反応がありません。
    悠介は、浴室から裕子の家に入ろうとして、間違って隣の家の浴室の窓を
    割ってしまいます。
    警察が来て、逮捕され、留置所に入れられます。
    次の日に、裕子が身請けに来てくれます。


    貴子という札幌の劇団の女優で、悠介の昔の愛人が東京にやってきます。
    悠介のマンションに1週間だけ置いてくれというので、同棲することになります。
    悠介のいない間に、荷物を取りに来た裕子と貴子が鉢合わせして、二人は喧嘩になります。
    貴子は睡眠薬を多量に飲んで、自殺を図ります。
    マンションで倒れている貴子を悠介が発見して、胃洗浄をします。
    貴子は一命をとりとめ、北海道に帰っていきます。


    裕子は、九段のマンションに転居します。
    悠介と裕子の関係が良くなって、悠介は、裕子のマンションの合鍵を
    もらいます。
    日曜日に九段のマンションに裕子を訪ねていくと、鍵をあけても
    チェーンロックがかかっています。
    中に、裕子が見知らぬパトロンの男といるのが見えます。
    悠介は、金物屋で金鋸を買ってもどり、チェーンを切り始めます。
    パトロンの男がこわがって、警官を呼びます。
    警官が到着します。
    悠介はどうなるのでしょうか?


    悠介は、裕子が一番好きなのですが、雅子や貴子にも手を出します。
    裕子が許してくれると思うのですが、裕子は悠介の浮気を許しません。
    ここらへんが、男と女の考え方の違いのようです。


    「あなた、わたしを奥さんと勘違いしているんじゃないでしょうね」
    突然、妻のことをもちだされて戸惑っていると、裕子はさとすようにいう。
    「わたしがあなたの奥さなら、浮気の一つや二つくらいは許すかもしれません。
    でもわたしは奥さんじゃないのよ。あなたが好きだから一緒に出てきたのよ。
    あなただけが頼りで出てきたのに、その本人にあんなことをされては、わたしの立場が
    ないでしょう」
    妻ならともかく、愛人の立場で男に浮気をされたのでは立つ瀬がないという
    ことらしい。



    渡辺淳一さんは、自分の実体験をもとに小説を書く
    私小説作家だったようです。
    裕子さんのことも、角川文庫の「わたしのなかのじょせいたち」に
    詳しく書かれています。良かったら、読んでください。

    渡辺淳一が直木賞を取った後に、家族が上京することになります。
    家族が住むためのマンションの抽選に渡辺淳一が用事が有っていけないので、
    代わりに裕子に行ってくれるように頼みます。
    裕子は怒って、断ります。
    直接にはこのことがきっかけになって、渡辺淳一と裕子の長く激しかった
    関係は一応ピリオドを打つ形になったそうです。
    裕子は言ったそうです。
    「あなたのような人は、到底わたしには面倒みきれないわ」

    数年後、裕子は三十代半ばで、独立して店を持ちたいと言ったので、
    渡辺淳一は資金援助をして、裕子はオーナーママになったそうです。
    裕子の店に、たまに渡辺淳一は顔を出したりしていたそうですが、
    裕子はその後、体調をくずして、突然、銀座の店を閉じて、
    音信不通になったそうです。
    渡辺淳一に連絡がないそうです。

    私が思うには、裕子は、渡辺淳一の事をかなり好きだったと思います。
    愛人として一緒に上京して、同棲して、たよりにしていたのに、浮気をされて
    ショックだったと思います。
    渡辺淳一が直木賞を取って、作家として成功すると、手のひらを返したように、
    自分を捨てて、家族を呼んだのも、ショックだったと思います。
    自分は、銀座のオーナーママにはなれましたが、あなたに捧げた年月は何だったの、
    私の女としての幸せはどうなるのよ、と思ったのではないでしょうか(H.P作者)




    NO.2 メトレス 愛人 渡辺淳一  文春文庫        
    主人公は、片桐修子で、32才の社長秘書です。
    ロイヤルクリスタル日本支社の社長秘書です。
    遠野は妻子ある男性で、49才です。
    社員200人の広告会社の社長です。
    片桐修子は、遠野の愛人です。
    4年間、愛人関係です。
    片桐修子の部屋に遠野が来て、セックスする関係です。

    片桐修子は、逢っている時以外は、遠野の事を考えないように
    しています。それを自分のけじめにしています。

    修子には、仲の良い女友達の真佐子と絵里がいます。
    絵里はテレビ局のディレクターで、結婚しましたが、離婚して
    5才の男の子を引きとります。
    真佐子は商事会社勤務ですが、結婚したいと、前から言っています。

    真佐子が、40才の歯科医で、4才の女の子がいる男と、
    お見合いして、結婚することになります。
    修子の気持ちは揺れます。

    仕事で遅くなった時に使うために、遠野は会社の近くに
    ワンルームマンションを借ります。
    そこに荷物を入れる手伝いを頼まれたので、修子は手伝います。
    遠野は会社に行きます。
    遠野の妻は、ワンルームマンションに来ることはないと、遠野は言っていたのに、
    遠野の妻が、遠野の下着を持って、やって来ます。

    「あなたという人がいることは、わかっていました」
    夫人は改めて、修子のほうに向き直った。
    「でも、あなたはご自分のやっていることがどういうことか、
    ご存じでしょうね」
    初め、ふくよかに見えた夫人の顔が、ベランダからの西陽を浴びて半分だけ輝いている。
    「泥棒猫のように、他人のものを奪って」
    「そんな・・・・・」

    遠野は、妻とうまくいかなくなっていきます。
    妻と別れるから、修子に結婚してくれと言います。
    修子から遠野に結婚をお願いしたことはありません。
    遠野のイメージが、たのもしい男から優柔不断で頼りない男へと
    変っていきます。
    修子はどのような結論を出すのでしょうか?



    愛人に、妻とうまくいかなくなったから、結婚してくれなんて言うのは、
    男の身勝手な言い分ですよね。
    修子は、妻と良好な関係の時に、妻と別れて、愛人に結婚を申し込むなら
    まだ納得できるのにと思ったようです。



    NO.3光と影  渡辺淳一    




    [光と影]、[宣告]、[猿の抵抗]、[薔薇連想]の小説がおさめられています。
    渡辺淳一さんが直木賞を取った、光と影を紹介します。

    [光と影]
    主人公は小武敬介です。
    陸軍大尉の小武敬介は、文武の全てにおいて、
    陸軍大尉の寺内より優秀でした。

    陸軍大尉の小武敬介と陸軍大尉の寺内は、西南戦争で
    右腕をピストルで撃ち抜かれます。

    二人とも右腕を切断する手術を受ける予定でしたが、
    ある偶然から、小武は右腕を切断され、寺内は右腕を
    温存する施術を受けます。
    小武はすぐ回復して、退院しますが、寺内は傷の化膿が
    なかなかなおらずに、入院が長引きます。
    寺内は右腕を切断してくれと依頼しますが、
    聞き入れてもらえません。

    小武は右腕がなくなったために、陸軍を不本意にも
    退役して、階行社という軍人交流クラブを運営する会社で
    働きます。

    寺内は、不完全ながら右腕が残っていたので、陸軍に
    残ることができます。

    寺内は、それからすごいスピードで出世していきます。
    自分より劣っていた寺内が陸軍に残り、出世していくのを
    小武は鬱屈した気持ちで見ています。

    何かが大きく動き始めているような気がする。
    それが何か、しかとは言い表せない。
    しかし眼に見えないもう一つのものがすこしずつ
    自分と寺内の間を引き離しているように小武には思えた。


    小武が右腕を切断され、寺内が右腕を残す施術を受けた
    理由を聞いた小武は驚愕します。
    どのような理由だったのでしょう。

    小武は思います。
    寺内の信条は天命に逆らわぬということだ。
    しかし俺とても逆らっていない。逆らったのは俺ではなく
    天命の方ではないのか。
    自分にとって天命はあまりに不合理ではないのか。
    天命は不合理でいいのか、それでもなお従えというのか、
    寺内、お前のようにうまくいく天命ばかりではないのだ。


    運命とは、思い通りにはならないものですよね。

    ある偶然から、自分の右腕を切断された小武。
    小武は腕がないので、陸軍を退役して、不本意な
    仕事をする。
    寺内は右腕を温存されたので、陸軍に残って出世していく。
    自分の方が全てにおいて寺内より優秀だったのにと、
    いつまでも対抗意識が消えない小武。
    しかし小武と寺内の差はひらいていく一方です。
    小武は自分は影で、寺内は光だと思います。
    天命とは何だと考え込む小武。
    人生とは難しいものですね。
    才能や努力だけではどうにもならないものですね。(H.P作者)



    NO.4失楽園  渡辺淳一    




    男女の不倫の恋について書かれています。

    主人公は53才の男の久木です。
    妻子があります。
    出版社の出版部長でしたが、調査室に
    左遷されました。

    カルチャーセンターの書道の講師をしている
    37才の凜子と知り合います。
    凜子は夫がいます。
    久木と凜子はやがて深い仲になります。


    久木と凜子は、密会を重ねるうちに
    性愛の深みにはまりこみ、久木は妻より
    凜子の方が大切な存在になり、
    凜子は夫より久木の方が大切な
    存在になります。
    セックスが二人の結びつきを深めていきます。


    二人は性愛の快楽を求めて進んでいきます。
    二人はどうなっていくのでしょうか?


    久木と凜子は、最高に愛し合っている状態で
    人生を終わりにしたいと思います。
    これから先は、年老いて、坂を落ちていくだけだからと。

    凜子は言います。
    「やっぱりわたしたち、いまが最高よ」
    「わたし、若いときから、人生の一番幸せなときに
    死ぬのが、夢だったわ」

    しかし、死んだあとには何が待っているのでしょうか?
    そこが、H.P作者には釈然としません。
    また、久木は妻子に悪いとは思わないのでしょうか?
    凜子は夫に悪いとは思わないのでしょうか?


    「失楽園」はベストセラーになり、テレビドラマも
    映画も大ヒットしました。
    渡辺淳一さんと、黒木瞳さん、川島なお美さんとの仲も
    噂になりました。
    不倫愛に世間の注目が集まったのが、ヒットした要因でしょう。

    失楽園は、物語構成はうまく、会話もうまく、久木と凜子も
    生き生きと描かれています。
    さすがは、渡辺淳一と思います。
    しかし、H.P作者は、この作品は通俗小説の域を
    出ない作品だと思いました。

    渡辺淳一の作品なら、「阿寒に果つ」や「光と影」や
    「何処へ」等の作品の方が、小説としてはすぐれた作品だと
    思いました。

    しかし、幻冬舎の見城徹社長が言うように
    「ヒットした作品は全て正しい」なので、
    「失楽園」は時代の要請にマッチした作品だったのでしょう。
    空前の大ベストセラー作品でしたから。
    見城徹社長はさらに言ってます。
    「良い作品でもヒットしない作品はある。しかし、ヒットした
    作品は全て正しい」と。

    「失楽園」の中で、渡辺淳一は言っています。
    セックスは、最初は男が女を征服しようとするが、
    セックスの喜びは、女の方がずっと深く、
    持続時間も長いので、最期は男が女に
    奉仕することになっていると。
    男が最期は女に征服されているようですね。

    53才のくたびれた男が、37才の女を相手にしてセックス地獄に
    はまりこんでいきますが、そこもH.P作者が疑問に思った
    ところです。
    53才のくたびれた男は、そんなに精力強くないと思いますが。
    精力絶倫男もいるのでしょうか?
    37才の女がセックスの深みにはまりこんでいくのは、
    わかるような気もするのですが。(H.P作者)