浮世絵で見る保土ヶ谷宿 保土ヶ谷区生涯学習 保土ヶ谷歴史探訪 第6回講座 第3部−各論4 | |
平塚 高麗山に隠れる白富士 目次へ | |
平塚を代表する高麗山 広重図の高麗山は特徴/印象をよく表現しており、現地を見ないと描けない絵である。 このことは地元の人も以前から認めており、高麗山が広重の想像図であることなど疑った人はいない。 写真そっくりというより、似顔絵漫画風に特徴を捕らえていることから、実際の高麗山を写生しているものと思われる。 |
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高麗山と富士山との位置関係の正確さ 冨士は高麗山とは別な方角に見えているが、平塚宿を出たところでから急速に接近し,古花水橋交差点(上方見附)付近で、高麗山に隠れる。 広重図は富士が高麗山に隠れる瞬間を描いたもので、この風景が見られるのは、東海道上で一地点に限られる。現地を知らない想像では絶対描けない絵である。 ![]() |
現在の平塚では、2階建ての家並みが邪魔になって、東海道からの富士を観察するのは難しい。 ただし冬の快晴日であれば、東海道線の車窓から高麗山に隠れる瞬間の白富士を見ることが出来る。 |
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→→以上から、広重は平塚まで来ていると思われる。 | |
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上の連続図は、パソコンソフト「カシミール3D」による作図。 国土地理院の地形図をベースに「風景」を描くソフト。 (カシミールの命名=「可視」+「見る」) 平面地図上で撮影地点とカメラの方向を指定すると、そこから見た風景が表示される。地上からの高さも指定できるので、足場のない中空からの俯瞰図も自由自在である。 地形図がベースなので、工場、家並みなど人工物を排除した風景として描かれる。 江戸時代に見えたであろう風景が必要な東海道研究に最適である。 杉本智彦著 カシミール3D入門 実目次へ業之日本社 2002発行 ¥1800 書店で販売 |
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酒匂大橋から箱根 | 富士川SA |
浮世絵で見る保土ヶ谷宿 保土ヶ谷区生涯学習 保土ヶ谷歴史探訪 第6回講座 第3部−各論5 | ||
小田原 酒匂川から見た箱根山 再刻版の謎 初版(左図)刊行の数ヶ月後、右図のように改訂された。 目次へ | ||
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![]() 再刻版 |
改訂版で、山の姿を描き直したのは何故か これまでの美術界の議論 いくら2枚の絵を見比べても、山の描き方/表現方法の違いしか見当たらない。 ○広重が老成して昔の絵が恥ずかしくなった? ○53次を描いているうちに山の描き方について、悟りを開いた(開眼した)?etc |
大畠説: 2枚の絵の一番大きな違いは、(山の表現方法ではなく)、再刻版に両子山がちゃんと描いてあること。 両子山は、箱根山を識別するための鍵である。 すなわち初版の山は、実は箱根山ではなかった。 広重は、山を間違えたことに気がついて、慌てて描き直した。それだけの話である。 |
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![]() 酒匂川大橋から見た箱根連山−右から両子山/駒ヶ岳/神山 |
![]() 保土ヶ谷(岩中グランド)から見た箱根 江戸からも同じ姿が見られたであろう。 |
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酒匂川大橋に立つと、箱根連山の大パノラマが前方180度に広がり、箱根山と大山を間違いようがない。 →→以上から、広重はここまで来ていないと結論。 |
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(山の形から見た結論) 広重は平塚には来ており、小田原(酒匂川)には来ていない。 |
広重の間違いの原因 | |
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広重初版の山は実は箱根ではなく大山であった。 広重が何故大山を描いてしまったのかも明らかである。 広重図の原画である司馬江漢五十三次画帖には大山が描かれ、誤って「小田原」という付箋が貼られていたため間違えたのである。 ★江漢図の川は、酒匂川ではなく、相模川である。 |
![]() 江漢画帖 田村の渡しから見た大山 |
![]() 東名高速から見た大山 (やや上流だが、ほぼ同じ角度。稜線の起伏に注目) |
司馬江漢および江漢五十三次画帖については、本講座ではほとんど触れなかったが、広重東海道五十三次のもっとも重要なモデルである。 さらに詳しくは、CDまたはホームページで「大畠著作集」→「江漢広重東海道五十三次」を参照。 |