*角倉一朗『バッハ』---johann sebastian bach/1685-1750

 バッハのもっとも大規模なクラヴィーア曲で、彼のもっとも偉大な作品のひとつが、1742年に《クラヴィーア練習曲集 第四部》として出版された。バッハ自身はこの曲を《二段鍵盤つきクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏(Aria mit verschiedenen Veranderungen vors Clavicimbel mit 2 Manualen)》と名づけたのだが、カイザーリンク伯爵に仕えていた弟子ヨハン・テーオフィール・ゴルトベルクのために作曲されたところから、一般に《ゴルトベルク変奏曲》(BWV988)の名で親しまれている。主題をなす冒頭のアリアはフランス様式の サラバンドで、すでに1725年の《マグダレーナのための小曲集》に出ている(バッハの作か否かは疑問)。パッサカリアまたはシャコンヌ的な原理によって、この主題の低音を保ちながら30の多種多様な変奏がくりひろげられる。各曲が示す多彩な性格と 想像力の豊かさ、3曲ごとにおかれたカノンが見せる対位法の」妙技、そして至難な演奏技巧を要求する大胆な書法、これらすべてが、この上なく厳格な論理やゆるぎない秩序と結びつき、あらゆる時代を越えて不滅の光を放つ巨大な作品を生んだのである。