愛車の電動車イスのヘッドレストを傷つけられ、落ち込みながら新千歳空港の外に出ると、ピンクのスタッフジャンバーを着た多くのボランティアさんがいた。その中のひとりの女性が、「DPIにご参加ですか?」と明るい声で話しかけられた。「はい」と答えると「電動車イスの重量は、どれ位ですか?」といきなり聞かれ、「私を入れて200キロあります。」と答えると驚いた表情になった。それは、重量が200キロを超えると古いハンディキャブのリフトでは上がらないらしい。それで、“日本財団”から寄付された新車のハンディキャブに案内された。重くても、たまには良いことがあるものだと思った。新車のハンディキャブは、サスペンションがいいので、あまり揺れなくて乗り心地がいいのだ。空港の前には、大型バスやリフトバスが待機していて、会場とホテルにピストン送迎をしていた。名古屋から、20台のハンディキャブと運転手さんが貸し出され、札幌まで運転をしてきたという。全部で100台のハンディキャブが集められ、会場で並んでいるハンディキャブを見た時には壮観であった。
 会場に着くと受付を済まして、会場内に入った。会場は、“道立総合体育センター・きたえーる”で、とても大きな建物だった。また、地下鉄も乗り入れているので、車イスにとってはアクセスしやすい。メイン会場に、世界109か国から3150人の障害を持った人達が参加していた。迫力満点。会場には、発言とほぼ同時にその内容が日本語と英語の字幕となって大型スクリーンに写し出されていた。また、手話にも英語の手話と日本語の手話があり、動きが全く違う。スピーチは英語なので、同時通訳のレシバーを借りてイヤホンで聞いた。何か、自分が国際人になったかのような錯覚にとらわれた。すべての先進技術や手話(日本語・英語)、通訳(英語・フランス語・スペイン語・日本語)などボランティアで運営されている。また、車イスの送迎や会場案内など、学生や主婦、お年寄りなど約3300人ものボランティアさんが大会を支えていた。
 4日間の内、2日間は「自立生活」「障害児」「人権」「労働と社会保障」「アクセス」など13のテーマで分科会が行われ、報告の後、参加者で討論がされた。国連の統計によると世界には約6億人の障害者がいて、そのうちの82%は発展途上国に住んでいる。社会の他の市民と異なり障害者は最も惨めな状況にあり、政策、環境意識、人々の態度から生じる障壁のために地域社会から孤立、排除されている。タイでは家に閉じこもる人が多く、障害のある人を探し出すことから始めなければならないと報告があった。また、アメリカ人やアフガニスタン人の地雷被害者が「新たな障害者を生む。武器や戦争に反対。」と戦争の恐ろしさを訴えていた。地雷で、毎年2万人以上が手足や命を奪われているという。アフガニスタンでは、戦争の影響で医療体制が整えられず、義手や義足の不足。そして、リハビリを受ける施設がない。世界中から障害者が集まり、様々な意見を言い、聞くことによって、知識を豊かにすることが出来る。障害のある人もない人も、平和に共存できる社会にするよう協力していきたいと思った。
会場には、耳や目の不自由な方のコミュニケーションを助けるIT(情報技術)の体験コーナーに外国の障害者で賑わっていた。文字を手話映像に変換したり、インターネットのホームページを音声に変換したりするソフトなどがあった。英語、中国語版もあった。また、車イスのメンテナンスのブースがあり、ヘッドレストの修理で3回も世話になった。
会場で、フランスやアメリカ、マレーシアから来た人達と知り合いになった。フランスの人は、『日本人の対応がよく、地下鉄のエレベーターが壊れていなかった。ただ、エレベーターの場所が分かりにくかった。』ことや『札幌の街は、バリアフリーで素晴らしい』と話してくれた。フランスでは、エレベーターが壊れていたり、バリアフリーではないことなど情報を得られた。もちろん通訳は、ボランティアさんだ。日本まで来た人は皆自立し、自分の意思をはっきりと主張する事に驚いた。ゴリラも、叫ばなければならない事が分かった。
 会期中、1日サボって小樽に出掛けた。札幌駅からJRで小樽まで快速で約35分。小樽では、運河や北一ガラス、オルゴール堂などで買い物をし、寿司屋通りで寿司を食べ、中でもいくら丼がめちゃくちゃうまかった。今回の旅は北海道とあって食べ物が美味しく、ホテルもすすき野の傍だったので、毎晩すすき野に出掛けて食べまくっていた。(本当は、これが一番の目的だったのだ!)すすき野といえば、ジンギスカンの美味しい“だるま”という店をホームページで探しておいた。だるまは、小さな店で入口に段差があり、どうしても入れない。何とか入ろうとしたが無理なので、諦めて帰ろうとした時、店のおばちゃんが駆け寄ってきて、『私が焼いてあげるから、外で食べなさい。』と声をかけてくれた。なんて優しい!店の外には、地元の人が十数人並んでいる前で、宮腰さんに食べさせてもらった。アッという間に、ジンギスカン3人前とどんぶりご飯をペロリ。分厚い生肉だが匂いがなく、タレもうまい。最後に、野菜とタレに特性のお茶をかけた特性のスープが絶品だった。今回の旅行もまた、“どこでもうまい物食いに行くぞ!!”という気になった。