タロさんの“カレー屋”が出店していると聞いて、早速パシフィコ横浜に行くことにした。そこは、最新福祉機器の展示とそれを体験できるコーナーもある“ヨコハマ・ヒューマン・テクノランド”が開催されていた。これは、2年ぶり2回目の開催である。初回は、宣伝も少なく見学者もほとんどいなく閑散としていた。その時に、3輪バイクでアメリカ大陸を横断したというタロさん(服部一弘…脊髄損傷で車イス生活)と、この会場で知り合ったのだ。今回は、会場一杯に見学者がいて賑やかであった。早速、タロさんのカレーを食べるために、付き添いの看護学生の三井さんと“カレー店”に行った。残念ながら、家を出るときに食事をしてしまい満腹だったので、三井さんに食べてもらった。カレーは、香辛料の香りが食欲をそそり、美味しいそうであった。タロさんとは、この会場で知り合ったときから、優しさの中に力強さを感じさせる頼もしい存在だと感じていた。北海道の世界会議でも、共通の友人を通じて親しくなった。食事後、各ブースを見て回っているとタロさんに出会い「あそこのカレー屋にずっといるので、食べに来て下さい。」と指差した。見ると、なんと私たちが食べたカレー屋ではなく、別の場所を差しているではないか!愕然として言葉が出なかった。看板にも大きく“タロのカレー屋”と書かれていたのだ。全く気がつかなかった自分が情けなくなった。「マイウー」と言いたかったのに…。タロさんと別れて、他のブースに移動している途中、自分のバカさに笑いがこみ上げてきた。笑いがとまらず、電動車イスがふらついて操作が大変だった。結局、カレーは食べずに帰宅してしまった。タロさん、申し訳ないです。次回は、ぜひ…。
 会場内には、最新電動車イスの操作体験できるコーナーがあり、小学生の子供たちが低い段差を超えたり坂を上がったりしてうまく操作して楽しんでいた。その他にも、呼気スイッチなどでパソコンやデジカメを操作し、オリジナル名刺を作ったり、デモンストレーションなどが行われていた。当日は、以前にも紹介したことがある階段を登ったり2輪で立ち上がったりできる最先端の電動車イスが走り回っていた。この電動車イスは、アメリカの認可がおり、やっと発売されるという。ただ、今のところアゴで操作できる機種はないそうである。残念!また、絵画体験では、大塚晴康画家の電動イーゼルにビックリ!音声でイーゼルを左右、上下、回転して、自分が動けなくても自分の描きたい位置に合わせられ、大きな絵も描くことができるのである。他にも、介助犬のデモンストレーションやパネル展示、視覚障害者の方のパソコンソフトの体験、パソコン相談が行われていた。多くの展示コーナーや各作業場で作られた物も展示即売していた。
 その中で、積極的に説明をしているところがあった。それは、旭化成テクノシステムの環境制御装置である。音声でテレビの電源やチャンネル、クーラーなどの電気製品をつけたり消したりでき、電話までかけられるという製品。製品は、Windows CE マシンの小型パソコンを利用している。実は私、この製品が発売される前、音声収録のアルバイトをしていたのだ。当日は、怪我をしてから初めてのバイトに緊張していた。バイトは、テレビ画面に表示される漢字やひらがな、カタカナを発音するのだが、言葉をかんだり詰まってしまうと最初からやり直しになる。特に、カタカナが読みづらく発音も違うのか、何度も繰り返させられていた。やっぱり、九州弁のせいか…??多くの人達の音声サンプルを集め、誰の言葉にも認識できるように開発された優れものである。これで、ひとり生活をしている人や家族と生活している人もひとりで留守番ができ、安心した生活が送れるようになるのだ。ただ、操作に多少時間がかかるので、せっかちな人は我慢しなければならない。また、夜中に喋っていると不気味かも…?我が家にも、ぜひ欲しいものだ。
 最近、スイスとスペインの科学者グループが“脳の指令で動く車イスの開発”に取り組んでいる。電極の埋め込まれたスカルキャップ型の帽子をかぶり、そこに伝えられた脳からの信号がコンピューターから無線を通じて車イス本体に伝えられる仕組み。また、激突しないよう制御もできるらしい。この車イスが実用化になれば、重度の身体障害者にとって新たな自立の可能性が開かれる。
 今の福祉機器は、様々なテクノロジーに支えられている。テクノロジーの発展は、障害のある人の社会参加を促進すると共に、社会にある様々なバリアを取り除く役割を果たすのである。