熱海旅行へ出発の日は良い天気。天気予報では雨だったのに晴れたのだ。なんだか得したいい気分。当日、自宅に友人4名が集まった。朝からテンションが高く、まるで同窓会のようだ。マリちゃんと私6名でハンディキャブに乗り込み出発。友人達は、私が怪我をしてから知り合った人達で、現在も皆、福祉に携わっている。介助に関しては大ベテランで、明るくて心の優しい人たちだ。
 熱海へ行く途中、真鶴町立中川一政美術館に寄った。美術館は、真鶴半島突端の森林の中にあり、コンクリート壁のオシャレな建物だ。中に入るとシーンとした雰囲気に緊張する。冷房が効いて気持ちがいい。1階と2階に展示場がある。エレベーターが小さくてギリギリ。2階へ上がり、電動車イスでバックしてエレベーターから出た時、スペースが狭くて、もう少しで後ろにあるガラスを割りそうになってしまった。何故、こんな所にガラスがあるのだろう?この建物は、いろんな賞をもらって高い評価を受けているらしいが、電動車イスの立場から見ると日光の手前である。イマイチ!建築家もエレベーターに電動車イスが乗ることなど、考えていなかったのだろう。これからの建築家は、エレベーターの大きさや斬新なデザインにして欲しいものだ!さて、中川一政画伯(1893−1991)の作品は、バラと箱根駒ケ岳の絵が有名。ひまわりの絵が力強くて元気が出る絵だった。また、額縁まで絵が描かれ、絵と額縁の両方で1つの作品と考えられている。こんな作品は初めて見た。
 昼食のため、魚料理の店“真鶴魚座”を探しながら車で走っていると、磯料理の店のオバちゃんが道路に立って満面の笑顔で手を振って呼び込みをしていた。誰かが「さっきのオバちゃんの所に行こうよ」と言い出して、魚座に行かず引き返すことにした。店は小さいけど、私の電動車イスが楽に入れた。60歳過ぎのオバちゃん4名と料理長で店を切り盛りしていたが、オバちゃんたちの動きがキビキビとしてとても親切だった。私とマリちゃんは、刺身定食と煮魚定食を頼んだ。その量の多さにビックリした。船盛と間違うような量だし、煮魚も大きな金目鯛がまるごと一匹だった。煮付けは、生きている金目鯛を料理していた。安くて新鮮でうまい!おまけに味噌汁も美味しくて満腹になった。店を出ると目の前に貴船神社があった。階段が見上げるほど高く、100段以上はありそうだ。「男なら行くでしょう!」の言葉で、一番若い友人が駆け上がった。ヘロヘロになって帰ってきた彼は、言葉が喋れないほど呼吸が乱れていた。申し訳ない事を言ったかな?神社の横に大きな倉庫があり、若い男の人達が祭りの準備をしている。祭りと聞くと、何故か血が騒ぐ。福岡県出身だからかなぁ…。福岡は博多祇園山笠や私の田舎の喧嘩山笠などがある。喧嘩山笠は、山笠どうしをぶっつけ合う気合の入る祭りだ。懐かしい。貴船神社は、漁師の信仰のあつい神様が祀られ、貴船祭は日本三大船まつりの1つで神輿が海を渡る有名な祭りらしい。いろいろ思い出にも浸りながら見ていたら、準備ではなく片付けだった。ガックリ!
 今回の宿泊は、かんぽの宿“熱海別館”にした。マリちゃんがチェックインを済ますまで、エレベーター前で待っているとエレベーターの扉が開いた。中を見てゾッとした。中には、手すりとイスが置いてあって狭い。2基あるので、もう1基を確認したが、手すりはないが、やはり狭すぎる。今までかんぽの宿で入れなかったことがなかったので、冷静な私もパニくってしまった。ここの施設は、最近新築したばかりなのにどうしてエレベーターがこんなに小さいのかと思った。調べてみると、実はバリアフリー化の改装工事をしただけでエレベーターはそのまま再利用されたことが分かった。エレベーターが横長だったので、何度も切り替えしながら斜めに入ったが足が出て入れない。とうとう、マリちゃんが電動車イスの足のステップを外し、エレベーターの中からも私の両足を押さえながら何とか入った。もし、このままエレベーターが途中で止まってしまったら…ゾーとした。こんな状態をチェックアウトまでに4回も繰り返した。マリちゃんがいなかったら私はどうなっていたんだろうか…?エレベーターに乗れなくては部屋に行けないから、きっとロビーでひとり寂しく電動車イスに乗ったまま寝ていたのかもしれない。夜は、恒例の“花火大会”!皆が持ってきた花火の量には驚く。次々に火をつけて、子供のように大はしゃぎ!途中から花火を見るよりも、全部やってしまおうという気持ちで“煙”“煙”エンエンとやった。翌日は、伊豆スカイラインに乗ると突然の“濃霧”にビックリ!回りが全く見えないのだ。皆大騒ぎして、「ウォー」と黄色の声ではなく…茶色の声が出る。途中で、接触事故を起こした車を見て皆「シーン」となった。分かりやすく、実に愉快な人達だ。
 今回の旅行はエレベーターに悩まされたが、公共の施設だけでもせめてストレッチャーが入る大きさにして欲しいものだ。一緒に旅行へ行ってくれた皆さんに感謝。