先日、NHKの教育テレビで“きらっといきる”という福祉番組に、私の友人が出演した。石川大輔さんとミカさんの夫婦。大輔さんは山口市生まれ35歳で、生後まもなく筋ジスシロフィー症と診断される。大学院卒業。現在車イス生活。ミカさんは山口市生まれ34歳。大学卒業。25歳のとき通勤途中の駅で階段から転落し、頸髄損傷を負う。手・足に麻痺があり、車イス生活。私とミカさんは、5年前に広島県で開催された「はがき通信」の全国懇親会で知り合った。「はがき通信」とは、事故や病気などで四肢麻痺者となった方々と、その御家族、関係者のための隔月発行の情報誌である。その懇親会で、ミカさんと衝撃的な出会いをしたのだ。ホテルから平和公園へ移動中、交差点で信号待ちしていた私の横に突然車イスから転げ落ちている女性がいた。ビックリしながら、「大丈夫ですか?」と声をかけたその女性がミカさんだったのである。すぐに皆に抱えられ車イスに戻ったが、その時の彼女の話に驚いた。それは、交差点が坂なため、すぐに車イスを止める事ができないので、わざと転んだと言ったのだ。いつも、危険なときはそうしていると聞き、愕然とした。その話しを聞いたときは信じられなかったが、彼女の手足の傷跡を見て分かった。その彼女が大輔さんと3年前に知り合い結婚をした。ふたりは、バリフアリーを広げるために執筆や講演活動をしている。昨年の12月も、横浜市南区役所の依頼でふたりが横浜に来て、南公会堂で講演をしている。ふたりは、写真を見せながら交通機関やトイレなど車イス者にとってバリアがあることを詳しく話していた。ふたりの掛け合いが面白かった。
 テレビでは、ふたりが協力しながら生活している様子や専門学校で非常勤講師をしている姿が紹介されていた。講義の内容は、ボランティア論。学生は皆、将来は福祉の仕事につくことを目標にしているだけあって真剣な眼差しで取り組んでいた。生徒たちに写真を見せながら詳しく説明して、課題を出していた。その課題は、“電動車イス利用者が、地元山口県に旅行に行くための”その旅のプラン”を学生に企画させようとしていた。学生たちが調べた内容をグループごとにプラン作りをする。ふたりは、各グループを回り質問にも答えていた。講義の終わりに、ふたりがとてもいい提案を出していた。休日を利用して、学生たちに実際車イスを使って観光地めぐりを体験させようというもの。20名以上の学生が集まり、話し合ってコースを決め、交代で車イスに乗りながら山口市内の温泉地に向う。実際、車イスに乗ってみるとデコボコ道や坂、段差などを経験し、真っ直ぐ走ることの大変さを実感していた。どんなサポートをすればいいのかも分かる。また、目の不自由な人、車イスの人、障がいによって求めることがそれぞれ違うことを学生たちは学んでいた。車イスで列車に乗り込むにも、ホームと電車の隙間や段差があり、スロープをかけないと乗れないことも体験していた。旅の後半になって、学生たちの行動に変化がでていた。寄り道をしてでも他の場所まで車イスで利用できるかを確かめるようになっていた。車イスの体験を通して多くのことを学んだ学生が、旅のプランの発表で「段差があって移動しづらい所もまだ沢山あるのですが、そのことより周りの人がどんな気持ちで手助けするかが問題だと感じました。楽しい旅をするには、いい施設も大切ですが、旅人を迎え入れる人の温かみの方が大切だと、今回痛感させられました。」と発表した言葉が印象深かった。ふたりの活躍に大きな刺激を受けた。
 その石川夫婦が、昨年「「お互いさま!」宣言」という本を出している。その本に、私のエッセイの一部も載っている。目が不自由な中村さんも寄稿されている。彼女は、買い物に行ったとき自分がお金を払ったのに、店員はお釣りを目の見える介助者に渡した。親切心からだったが、中村さんは「自分でできることなのに排除された気持ちだった。」と体験談が書かれている。いろいろな体験談を通して、ふだん健常者が見過ごしてしまいがちな障がい者の思いが紹介されている。「困っているときはお互いさま」という気持ちがあれば、少しずつ社会は豊かになるのでは?苦労している眼の不自由な人や車椅子の人などに、気軽に一声かけられるようになるためのヒントが詰まった、バリアフリーの手引書である。
そう言えば、横浜に来たふたりに会おうと思い、講演の申し込みを南区役所の担当者へメールを出した。返事の内容を見て、ビックリ!電動車イスから普通の車イスに乗り換えて欲しいと言うのである。早速、電話で連絡を取り、車イスに乗り換えられる人と乗り換えられない人がいることを説明した。担当者は、そのことさえ知らなかったのだ。南公会堂はバリアフリーでなく、車イス用トイレもなかった。福祉関係者は、ぜひこの本を読んでもらいたいと思う。障がい者と接する機会がまだまだ少ないから、皆さんにも読んでいただければ理解してもらえ、「お互いさま!」に生活ができると思う。
「お互いさま!」宣言 ¥1400 石川大輔・ミカ共著 問い合わせは、太陽出版(03−3814−0471)