私は、受傷して16年にもわたる長い間、在宅で献身的に介護をしてくれる妻や父母に助けられて来た。そんな、私の介護から一時解放してあげたいものだと常々思っていたのだが、今回、やっと実現したのである。8月下旬猛暑の中、リバーサイドとつかホームの施設にショートスティとして10日間お世話になったのである。
 横浜市のハンディキャブに乗車し、荷物を積んで緊張気味にAM11:00に出発。リバーサイドは泉区にあり20分程で着いた。玄関には、サザンオールスターズの桑田佳祐に似た、担当の福館さんが出迎えてくれた。早々に部屋の方に案内された。各部屋は4棟に分けられ春夏秋冬で区別されていた。私は、夏棟の"ひまわり"の個室部屋だった。部屋の扉には、ひまわりの花が彫刻されていた。部屋の広さは、縦長の7〜8畳位の大きさ。荷物の整理が終わると、妻のマリちゃんは父母と九州旅行の為、早急に自宅に帰ってしまった。玄関で見送った後、ひとりとり残されたようで何だか急に寂しい気持ちになってしまった。元気を取り戻しながら、部屋に戻ると、福館さんが施設内を案内してくれた。その後、ひとりで見て回っていると、電動車イスに乗った藤田さんや尾崎さんと知り合いになった。電動車イス談義で話が盛り上がり、11年間の施設生活の様子まで色々と話してくれた。私は、しんみりと聴き入った。
 リバーサイドの入所者は60名、介護者は38名位(男性と女性は半々位)、看護婦さん4名である事、また、『ここは、交通の便が悪く、買い物などは、近くにある1軒の売店か、電動車イスで片道20分もかかる小田急線湘南台駅まで、行かなければならない』と聞いて驚いてしまった。周辺を散策した時に、なしの木学園の施設や農家で果樹園の直売所などを見つけた。梨園は、人や野鳥などが侵入出来ないようにネットが張ってあり、大きな梨が幾つもぶら下がっている。枝から落ちた梨がおいしいそうで、横目で見ながら何度も通ったのである。車イスに乗った女性山崎さんと昼
過ぎに直売所の農家にも行った。『売り切れ』と張り紙がしてある。ここの直売所は、評判がよく朝6時前から梨を求めて並び始めるのだそうである。山崎さんが、何度もお願いしてくれたおかげで宅配してくれる事になった。山崎さんに感謝!宅配された梨は、大きくみずみずしくとってもおいしかった。
 今度は、職員のオオバサミさんに、無人野菜売り場を教えてもらいついて行くと、後から来た看護婦さんが大きなスイカを1500円で買って行った。オオバサミさんは、他で買うと4000円はすると言っていた。『なんと、安い!』この地域の野菜は形は悪いが味はおいしく最高らしい。私も、帰宅する時に直売所で、マリちゃんに頼んで沢山買ってもらった。値段は安く、昔食べた味ににておいしかった。トマトを食べた時、小学生の頃を思い出してしまった。悪ガキだった私は、学校帰りに無断でトマトをよくとって食べたものである。仲間には、味塩までカバンにしまっておき、キュウリやトマトまで食べたやつもいた。柿をとりに皆で行ったこともある。身軽なやつが、木に登り柿をとって下に投げるのである。私は、悪ガキだったので指示しながら落ちた柿を拾った。その時、持ち主が、『コラー!』と大声で飛んできたのである。『逃げろー』と言って皆一目散に走ったのだが、木の上のほうに登っていたひとりがおじさんに捕まってしまったのである。陰で隠れて見ていたら、ひとりだけ叱られているのを見て、かわいそうになり、皆で謝りに出て行った。おじさんは、ひどく怒り叱られたのだが、最後には、『もうするなョ』と言ってとった柿全部をくれたのである。深く反省した少年の日々を懐かしく思い出していた。リバーサイドは、昔に戻ったような環境で、泉区にこんな所があることを知り、心が和んだ。
 ムッーとする猛暑の日、尾崎さんに誘われリバーサイドの玄関を出た。ムッーとする猛暑の中、中庭を通り門の横に案内された。『ここが、一番涼しいところ』だという。日陰で、何故かここだけ冷たい風が吹き抜ける。暑がりの私でもとても涼しく感じた。昼寝にはもってこいの場所を見つけた。その後、何回かここで昼寝をした。ひとりでここを独占する日が続いた。《つづく》