リバーサイドの夜は、熱帯夜で寝苦しく、おまけにコオロギの歓迎、合唱のおかげでなかなか眠れなかった。
翌日の午後に、藤田さんと一緒に、境川を渡ってサイクリングコース約2qほどを散歩した。日差しが強く、暑く感じたが、リバーサイド周辺の地理が分かり、川沿いを電動車イスで走っていると、首筋を擦り抜ける風がとても心地よく、暑さを忘れさせられるほど楽しかった。しかし、その夜、39.3℃熱発し、職員の皆さんや看護婦さんに大変心配をかけ、ご迷惑をかけた。年に1〜2度、水分量が少ないと起きる泌尿器からの熱発だった。水分を多く補給して、クーラーやアイスノンなどで身体を冷やしたら、朝方には熱は下がっていた。翌日、電動車イスに乗ると身体はだるかったが、ベッドに寝ているよりは気分的には楽になっていた。その日は、私の39歳の誕生日でもあった。そういえば新婚当時、最初の私の誕生日をマリちゃんは見事に忘れていたのである。ガックリ!それからは毎年期待しないように自分に言い聞かせている。そんな事を考えていたら、その日の午後、ふたりの若い奇麗な女性が面会に来てくれた。こんな幸運な事もあるのかと…。西大路さんと盛さんが様子を見に来てくれたのである。西大路さんはバイクで来る途中、スコールのような大雨に遭い、ずぶ濡れ状態でまるでドブネズミ?であった。大変だったのに、私の好きなコーヒーやお菓子をたくさん持って、盛さんは、カーネーションの花束と花瓶を持って、会いに来てくれた姿を見て、嬉しくて涙がこみあげてきてしまった。『私の誕生日、知ってたの』と聞くと『知らない、今日だったの』と返事が返ってきた。しかし、私はめげずに、『誕生日のお祝い有り難う』と言うと『おめでとう』と祝福してくれた。数日後も私を心配して、美しく優しい菅井さんと魚顔でとても優しい後藤君も来てくれた。菅井さんと後藤君、3人で話していると、突然、館内放送で『農薬注意報』と連絡があった。リバーサイド隣の稲に農薬をまくらしい。何事かと、3人で驚き笑った、楽しい時間を過ごした。皆さんに感謝、申し上げます。有り難うございました。
夕食後必ず、夕涼みに玄関を出ると、中庭に赤トンボが20ぴき位飛び交っている。赤トンボを見たのは、久し振りで子供のころを思い出した。よく赤トンボ狩りに行ったものである。懐かしい。
ショートスティ中、怖い思いもした。それは、散歩に行って急坂道を上りきろうとした時、電動車イスの電源が切れ、突然、操作不能になった。一瞬パニックになり、坂から下り落ちるのではないかと焦った。電動車イスのヒューズが飛んだのである。前にも一度、経験していたが完全に忘れていた。足元の赤ボタンを押すと復帰するのだが、自分ではできないので困ってしまった。人や車はほとんど通らず、見通しの悪い所にいるので、車に跳ね飛ばされるのではないかと思ったり不安になった。5分位じっとしていたらリバーサイド職員の方が、車で私の横を通った。窓が閉めてあるので、ありったけの大声を出したが聞こえず、横を通って行ってしまった。益々、不安になった時、20〜30m先で車を止め降りて来てくれた。『助かった〜』。事情を話すと、帰宅途中で『いつもはここをあまり通らないんだけど…』と聞いてぞっとした。ひとりで散歩に出るのが不安になってしまった。 リバーサイドでは、週3回お風呂に入れる。私が入れてもらったお風呂は、浴槽ではなくカナダ製のボディーシャワーだ。網が張ってある寝台に横になり、機器に足の方から入り顔だけ出ている状態である。機器の中では細かいシャワーが上下から出る。気持ちが良いのだが、何だか食器洗い機に入っている気分であったが、湯冷めがなく、本当に浴槽に浸かったような感じがした。カナダ製のわりには、私には長さが小さかったようだ。お風呂から着替えや洗面、電動車イスの乗降、食事介助や排便など、殆ど男性職員が介助してくれた。力強く本当に頼りになりました。
家族にも一時休暇がさせられ、大満足のショートスティ経験となった。顔のごつい人やら身体がプロレスラーみたいな人やら、優しくユニークで楽しい職員の皆さんとも知り合いになれ、大変、楽しい日々だった。施設にいる皆さんとも知り合いになれ、家族と共に生活できる自分は、なんと幸せ者だろうとも思う。人生勉強になった貴重で思い出深い10日間であった。また、利用させて貰おうと考えている。リバーサイドとつかホームの職員の皆さん、いろいろ有り難うございました。
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