「ハイ、息を吸って〜もっと吸って〜もっと吸って〜、ハイ、思いっきり吐いて〜最後まで吐ききって〜!」「ハァー」「ハイ、楽にして…1980mlですね。」と肺活量を24年ぶりに測った。これは、“横浜総合リハビリテーションセンター”に入院した時の事である。頸髄損傷者としては数値が高いが、元気な頃は7000mlもあった。1980mlあっても、腹筋や肋間筋が動かないので、咳やクシャミが思いっきりできない。風邪をひいた時など、タンが出せなくて苦しい。ちなみに、18歳以上の成人の推測正常値は、男性3000〜4000ml、女性2000〜3000ml位。頸損者は、皆肺活量が極端に低いのだ。 “横浜リハ”に初めて検査入院する事になり、担当看護師の紺野さんとメール交換しながら、準備を進めていった。朝6時に検温、8時の朝食までに着替え、9時〜16時までリハビリ、12時昼食・18時夕食、消灯は22時。検査は、首や両膝、右ひじのレントゲンやOT(作業療法)・PT(理学療法)による身体機能評価、採血などをお願いした。最近、首の左右の動きが悪く、特に左側が向けなくなってきている。借金はないのに…?首が回らない。両膝の間接も硬くなって曲がらなくなってきている。今より曲がらなくなると電動車イスに乗れない。怪我をしてから、24年間も検査をしていなかった。右ひじも5年前にトラックにひかれて2本の骨を粉砕骨折した時、手術で3本の釘で固定している。その部分の状態も知りたかった。 当日、カイドヘルパーの石井さんと入院手続きを済ませると、病棟の看護師さんが迎えに来てくれた。てっきり白衣を着た看護師さんが登場するものだと思っていたら、なんとオレンジと白のジャージ姿にビックリ!でも、美人ではあった。美人には特に弱い。病棟は3階の一番奥の部屋。4人部屋で、入口を入って右側が私のベッドだった。ベッドを見るとメールで打ち合わせどおり普通のベッドよりも長くなっていた。身長が184cmしかないのだが、普通のベッドでは足がつかえる。天井には、電動のリフターが設置され、電動車イスからベッドの移動に使う。看護師さん1人でも移動させることかできるので、デカイ人にはこれが便利だ。たまには、若い看護師さんに抱えてもらいたいとスケベ心丸出しでいたら、そのあと怖いことに…。担当の紺野さんと初対面。メール交換をしていたときのイメージとは全く違った。とにかくよく笑う人で、笑顔で回りを明るくし、頼りがいがある人だった。 早速、体重測定。車イス用の体重計に乗ると重量がオーバーして量れない。電動車イスと私が重いようだ!今回、始めてリクライニング式車イスに乗り換えることになった。そのリクライニング式車イスごと総重量を量り、車イスの重量を引けば私の体重が分かるという。ナットク〜。しかし、電動車イスから車イスの移動にリフターは使わないという。となると皆で抱えてもらうことに…?ニコニコしていたら、看護師さんの中に元神奈リハでお世話になった看護師さんがいて1人で移動させるという。まさかクワデピポット…!?クワデピポットとは、介助者の両膝で私の両膝を挟み、私の脇の下に頭を突っ込み、背中で私を担ぐようにして横回転しながら移動させる技である。この技は、熟練した技術がないと危険。10年前に一度、膝の固定が甘く膝を痛め、悪寒と高熱に苦しんだことがあった。そのときの恐怖心が…。しかし、その看護師さんは、いとも簡単に移動させたのだ。私は平気な顔をしていたが、内心はとてもビビっていた。5年ぶりの体重は、77kg。2kg増えていた。私のように身体が大きいと体重を量るだけでも大変なのである。リフターに付けられる小さな体重計があると便利だが…。また、翌日のレントゲン検査のときも、電動車イスからレントゲン台に移動するとき看護師さん4人で抱えてもらったが、嬉しいどころか恐怖心の方が恐い。やはり、リフターの方が安心できる。 部屋の3人の方は、片まひ者と脊髄損傷者、頸髄損傷者であった。隣のベッドの方が私と同じ頸髄損傷者だったので、特に仲良くなった。群馬県からの入院で、頸損暦30年を超えた冷静でまじめな人だった。田舎は、頸損の情報が入ってこないと言うので、“パソコン”の利用と“はがき通信”の購読を勧めた。とても寒がり屋で、私が半そでのTシャツで過ごしているのに、布団をかぶっていたほどである。部屋の人には、私のイビキがうるさくて大変迷惑をかけたらしい。また、私が無呼吸症候群らしく、前のベッドの人は私の息が止まるたびに気になって眠れなかったそうである。心配してくれてありがたい。マリちゃんは、いつも平気でスースー寝ているのに…。申し訳ないことをした。 初めての検査入院は、主治医、OT・PT、看護師さんと皆美人の女性が関わってくれた。こんな嬉しいことはなかった。検査結果も悪いところがなく、食事も美味しくて入院生活を楽しめた。特に、看護師さんのお陰で不安なく過ごせたことが大きい。入浴もスケジュールが合わず入れないと思っていたが、看護師さんたちの努力のお陰で入れた。ただ、浴槽が小さくて膝から下がはみ出ていた。できれば、もっと大きな浴槽にしてもらいたい。そして、部屋にはテレビがない。夕食後、早めにベッドに上がる人は暇だろうと思う。何とか小さめのテレビの持込を許して欲しいと思った。人間ドッグのようなことが出来るとは思ってもいなかったので、横浜リハのようなシステムは有り難いと思った。また、いろいろな人と知り合いになって世界が広がった。 |
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