毎年3月下旬、横浜市社会福祉協議会の主催で、“よこはま福祉保健研究発表大会”がウィリング横浜で開催されている。
今回で6回目。私は2度目の参加。横浜市社協のホームページで内容を確認し、参加をメールで申し込む。午前中にパネルディスカッションがあり、午後からは分科会がある。分科会は9つあり、幅広いテーマで研究発表が行われる。今年は、興味深い内容が多く、どこに参加するか迷った。会場には、フォトギャラリーやアート展、福祉保健関係の書籍展示販売もあるので、それを見に行くだけでも役に立つ。フォトギャラリーは、「地上1mの世界」という題で作品が並んでいた。確かに視線が低く、違う世界を見せてもらった。私の電動車イスは、座面が高く、母(148cm)が立った視線と同じ位なのだ。その作品の作者は、進行性筋ジストロフィーという障害を持ち、電動車イスに取り付けられた改造のカメラでボタンのシャッターを押して撮ったので、視線が低く貴重な写真なのだ。それと、何故か女性の作品が多かった。
 パネルディスカッションは、「障害のある人たちが働いていくために」ついて討論された。現在、長引く不況の中で障がい者の就労状況が悪化している。障害があっても、自立した生活を送るためには、やはり働いて稼ぐ必要がある。この問題については、まだまだ多くの問題をかかえ厳しい状況だということが分かった。
 昼食は、ガイドヘルパーの石井さんとハンバーグを食って、一番興味があった「障がい者の自立生活を支援していくために」の分科会に参加。横浜市障がい者自立生活支援センターの渋谷さんから“当事者の立場から支援費制度を考える−居宅介護を中心として−”の発表があった。昨年、支援費が導入され、その後の多くの問題点の報告だった。この問題には、私自身とも関係があるので真剣に聞いた。次に、知人の服部さんが「公共のエレベーターにおける障がい者・高齢者の利用状況の調査・分析」の報告。戸塚駅は、神奈川では3番目の乗降客が多いのに1つのエレベーターしかなく、とても小さいと怒りながら報告していた。私も同様エレベーターには、いつも悩まされている。先日、みなとみらい線の“日本大通り駅”から“横浜駅”まで、初めて電車に乗った。駅の横にエレベーターが設置されて利用しやすいのだが、エレベーターが小さ過ぎる。特に、横浜駅に仮設されている11人用のエレベーターが最悪。私の電動車イスが入るのにギリギリで、私が乗ってしまうと誰も乗り込めない。警備員は、「車イスが優先です。」と言うが、今まで待っている人を差し置いて乗る事は私にはできない。車イス者だけでなく高齢者やベビーカーだって利用できるように大きく作るべきだと思う。また、横浜駅西口から東口に行くのにもこのエレベーターを使用しなければならないのだ。早速、横浜市福祉局福祉のまちづくり課に電話してみると18人用のエレベーターができる予定だと言う。それに、完成が平成18年度と言う。「その間、どうするんだ!」と怒ってしまった。これから設置されるエレベーターは、全てストレッチャーが入れる大きさに最低限して欲しいものだ。
 分科会後、交流会に始めて参加してみた。会場には、顔見知りが多くいた。司会者の話も、目の前にあるおでんの鍋から食欲をそそる香りがたまらなくて、話を聞くどころではなかった。ゴリラは、食い物に弱い。熱々のコンニャクを食べさせてもらいながら、「からしが少ない」と石井さんに文句を言っていたら突然…。「こんにちはー!」と声をかけられた。横を向くと外国人の女性だ。目が大きくて、とてもカワイイ!直ぐに「こ・ん・に・ち・は〜」と挨拶を返したが声が震えた。日本語で話しかけられているのに、英語で答えなければならないと焦ってしまった。外国人コンプレックスかもしれない。彼女は、「ダスキン障害者リーダー育成海外研修遣事業」でラオスから来たという。名前はスパタさんと言って、ポリオによる右足に障害があった。スパタさんは、私の電動車イスに興味があったらしく、カタコトの日本語でドンドン質問をして来た。アゴでジョンスティックを操作しながら、リクライニングやチルト(座席全体が傾斜)、走ったり、電動車イスの機能を全部見てもらった。ラオスでは、車イスが少なく、アゴで操作する電動車イスを初めて見たと話していた。丁度、この日に乗っていた電動車イスは、業者から受け取ったばかりの4台目の新車だった。電動車イスの動きを見て、スパタさんの目がより大きくなっていた。この新車で、夏はどこへ行こうかな?マリちゃん!
 福祉には、まだまだ多くの難問があることが分かって勉強になった発表大会だったがスパタさんに会って、日本はそれでもまだ幸せな方なのだろうと思った。しかし、このまま満足するのではなく、福祉をより発展させることによって、他国への影響を高めることが大切なのだろうと思った。