「ヨッシャー!3000円になったぞー。」中華街にあるローズホテル内の“重慶飯店・新館”に値切りに行った。東京と神奈川頸髄損傷者連絡会の交流会会場にするためである。頸損会長の星野君とホテルで待ち合わせ、介助者と4人で重慶飯店のランチを食べながら、交渉開始。だが、点心ランチがとても美味しくて皆食べることに夢中。値段は1000円と安く、量も申し分がない。こんな一流店で、値切れるのか心配になった。昨年も東京と神奈川の交流会を重慶飯店で行なったが、会長が交渉で値切ることができず大赤字になったのだ。そこで、私の出番となった。私は、値切り屋か!食事後、ホテルのロビーで担当者と会った。交流会の日程や時間、参加予想の人数、料理はランチコースでお願いした。個室利用も可能だ。あとは値段だが…。担当者から「ランチコースが7品で3500円です。」と聞いて、メニューを見せてもらった。こちらの予算が飲み物を入れて3500円だったので、「ランチコースを3000円になりませんか?」と強気に出たが「できません」と即答。心の中で「そうだよね」と思いながら、「メニューの変更はできますか?」と尋ねると「ちょっと待って下さい。」と、どこかに行ってしまった。どうやら、上司に聞きに行ったようである。私が質問するたびに何度も上司に聞きに行くので、とうとう上司も邪魔くさかったのか、一品を減らして3000円の込みこみでOKしてもらった。重慶飯店さんには申し訳なかったが、東京や神奈川の各地から電車に乗ってやって来る仲間のことを考えると少しでも安くしたいのだ。
 ローズホテルの近くに“横浜大世界”というチャイナテーマパークができたというので、帰りに行ってみることにした。ウィークディーにも関わらず人が多くて、みなとみらい線の凄さを知った。ホテルから約8分位の所に、黒と赤の8階建てのハデなビルが“横浜大世界”だった。入口が階段なので、星野君と顔を見合わせた。係員に「車イスは…?」と尋ねると「横のドアからエレベーターで2階に上がれます。」と言う。早速、案内してもらったが、そのエレベーターの大きさにビックリ!あまりにも小さ過ぎて、「家庭用のエレベーターか!」と言ってしまったほどである。最近、多くの店がエレベーターを設置しているが、大きさが問題なのだ。改装後なのにこんな小さなエレベーターは見たことがない。星野君の車イスで入ってみるとギリギリに乗れた。そのまま、エレベーターの扉が閉まり上がって行った。その時、扉が閉まる瞬間の彼のニヤケタ顔を見逃さなかった。クソ〜。後で、星野君から「2階からは大きなエレベーターがあった」と知らされて怒りが倍増。なぜ、設計者は1階からエレベーターを利用できるように作らなかったのか…。まだまだ、エレベーターには普通の車イスが乗れればいいという考えが多いようだ。情けない。帰宅して、インターネットでホームページを探し、エレベーターに私の電動車イスが乗れなかったことをメールで伝えた。いつも思うのだが、設計者は何を考えているのか?依頼した会社も考えて欲しいものだ。
 1ヵ月後、交流会当日を迎えた。この日は、朝から30度を越す暑さの中、ホテルのロビーには初参加の人や数年ぶりに再会した人、多くの車イス・電動車イスの方が集まっていて賑やかだった。東京から18名、神奈川から27名の仲間が参加。ホテルにはエレベーターが3台あるので、3階への移動が早かった。食事をしながら一人ひとり自己紹介が始まり、皆の笑顔が嬉しかった。そして、料理も美味しかった。私もそうだったが、イベントがあると仲間に会える楽しみが外出する勇気となり、何事にも意欲が持てる。積極的に行動できるようにもなる。重慶飯店さん、ありがとう!来年もよろしく!
 交流会後、一緒に行ってくれた石井さんと横浜駅東口にある“アートグレイス・ポートサイドヴィラ”に向かった。夕方から友人の結婚式に出席するためである。式場で、石井さんからマリちゃんにバトンタッチ。オシャレしたマリちゃんがチャーミングでドキッとした。新郎は、私が教師をしていた高校の生徒だ。私が怪我した後の入学で、器械体操部員だった。まさか、私と同じ障がいを持つ事になるなんて…。しかし、彼も明るく障がいを受け入れ、3年越しの愛を立派に実らせたのだ。彼は、介護派遣事業所を立ち上げ、軌道に乗せて稼いでいる。そんな逞しい彼に新婦の父親もついに納得したのだ。とても、凄い奴だ。新婦も知り合いで、優しくて思いやりのある美人で、まるで(昔の)マリちゃん?と同じようだった。式には、障がいを持った方達も多く出席していて、心温まる立派な式であった。
障がいがあっても、何でもできることを感じた1日だった。