梅雨の合間の晴れた日に、“在宅リハビリサポートの会・レッツ”主催の勉強会に行ってきた。日曜日の朝、学生のボランティアとハンディキャブで横浜市総合リハビリテーションセンターへ。休日の館内は静かで、省エネのためか薄暗く人の気配が全くない。シーンとした1階廊下を進むと学生の歩く足音だけが響き、その足音は後ろから誰かがついてくるようだった。急いでエレベーター前に来ると、突然エレベーターの扉が開いた。そのまま乗り込もうとすると、中に人がいたのでビックリ!つい「オッー」と叫んでしまった。乗っていたのは、神奈川頸損会の友人だった。「オー久しぶり!」とごまかしたが、昨日“Skype(パソコン)”で全国総会の話をしたばかりだった。友人は、怪訝な顔つきで「おはようございます。」と挨拶をしてくれた。私は、自分がビビっていた事が可笑しく笑いを耐えていた。
 最近、水分の量が少ないせいかオシッコの出が悪く尿臭もあった。尿の色も濁っていたので、少し気になっていた。そんな時、“レッツ”の会からのメールで勉強会の知らせが届いた。レッツとは、毎年増え続けている事故や病気で、脊髄を損傷した人々に早期のリハビリの勧めや継続を訴え、在宅におけるリハビリの取り組み方等を一緒に啓蒙している。障がい当事者と家族、及びボランティアで構成され、脊髄損傷者とその家族を支援している会だ。HP:http://www.jscf.org/jscf/let's/
 今回の勉強会は、午前中に和歌山労災病院第二泌尿器科小川隆敏先生の“脊髄損傷者の排尿障害における最近の進歩”についての講演。脊髄損傷者の尿路マネージメントと排尿障害の症状のしくみを画像で詳しく説明され、とても分かりやすかった。膀胱の変形からくる感染や水腎症、腎盂腎炎、腎不全などの病気の怖さを知った。いい膀胱を保つ事が大切らしい。私の排尿は、自然排尿で膀胱に尿が溜まると自然に排尿する。ベッド上では尿瓶を利用し、電動車イスに乗った時はコンビーンという尿集器をつけている。オチンチンから管を通して、尿が袋に流れ溜まるようになっている。このコンビーンがあるお陰で外出ができるのだ。しかし、膀胱に溜まった尿が自力ではなかなか全部出し切れないため、残尿が150cc位ある。その残尿を出し切る事が大切。膀胱は、空になった時に浄化されるから。しかし、その出し方が問題らしい。現在、朝と夜は必ず、マリちゃんがお腹を軽くタッピングして膀胱に刺激を与え、拳でお腹を押す。膀胱に圧力がかかり残尿が出る。その圧力のかけ方が凄く、マリちゃんの上半身の体重を拳に乗せ、そのまま出しきるまで押し続ける。長年、拳でお腹をくい込むほど押しているので、マリちゃんの右手にはタコができている。昔は白魚の手のようだった?が、今は空手家のような手になって申し訳ない。小川先生の話では、叩打や拳で押す事によって、尿が膀胱から腎臓に逆流したり、膀胱の変形を起こすらしい。ドキッ!残尿は、管で導尿した方がよく、夜は膀胱内を空にする事がいい膀胱を保つ事を知った。私も導尿に変更した方がいいようだ。
 小川先生が勉強会に参加した中から希望者にエコー検査をやることになり、昼食までの約1時間を神奈川リハビリセンターの玉垣先生の質問タイムとなった。玉垣先生は、神奈リハで有名な作業療法士の先生でレッツの会を支援しているひとりである。質問が少なかったので、つい「ハーイ」と返事をしてしまった。マイクを持ったスタッフが来て、「お腹にケイセイ(けいれん)がきて、オシッコの出が悪くなる時があります。お腹がカチカチに硬くなって…。ケイセイの抜き方を教えて下さい。」と質問をした。そうすると、玉垣先生が近づいて来て、「お腹にケイセイが来た時は、上半身を前に倒す事で解消されます」と実演する事になってしまった。電動車イスに座っている私の身体を先生が横から前に倒そうとするが、触られた事でケイセイが来て動かない。「股関節が硬いねー」と私の後ろにまわり先生の体重を使って簡単に前屈させた。ビックリ!今まで、母に前から両手を引っ張ってもらってマリちゃんは横から、2人かかりで前屈させてもらっていたのだ。早速、帰宅してマリちゃん1人でやってもらったら簡単にできた。
 午後からは、松尾清美先生の「車イスでの生活・歩けなくても大丈夫!車イスの生活を楽しもう」の講演が行なわれた。松尾先生は、佐賀大学医学部附属地域医療科学教育研究センターで、自らも脊髄損傷者で実体験として早期社会復帰を説き積極的アプローチをしている方である。講演の中で、両手足のない4才の子供の映像を見た。マットの上で寝かされぱっなしで表情のなかった子が電動車イスに乗せた途端、顔の表情が変わった。左股関節から少し出た足の所にジョイスティックを固定して、操作を教えたところ、すぐに操作を覚えて自由に走り回っていた。嬉しそうでイキイキとした表情に感動した。このような光景は、誰もが経験できるような社会でなければならないと思った。今は、専門の病院で知識を持った先生に出会わない限り、自分の身体に合った電動車イスや自分が利用しやすい福祉機器か選べない。また、住居支援、社会復帰支援、職能支援等に精通している人材を増やす事で、障がいがあっても自信を持って生きていける社会になるのだ。松尾先生の実体験から指導は、閉ざした心を開かせるのだろうと思った。歩けなくなっても、考え方を変えれば車イスで楽しい生活が送れるという事である。
 レッツの会は、いろいろな人との出会いの場でもある。情報交換や直接指導も受ける事ができる唯一の会だ。この会が続けられていくには、資金面のサポートが必要である。どこか理解があり、支援して下さる会社はないものだろうか。