2008年5月、全国頸髄損傷者連絡会・大阪大会へボラの佐々木さんと行った。リフトタクシーで新横浜駅に着くと、駅ビルは10階建てのキュービックプラザというオシャレなビルになっていた。リフトタクシーから降りた横にエレベーターがあり、私の電動車イスが4〜5台は楽に乗れる位の大きさだったので嬉しかった。今まで30年間、いろんなエレベーターに乗ってきたが、このエレベーターが一番大きい。
 新幹線の改札が2階になって、中央改札口を通ってエレベーターで上のホームへ移動。そのエレベーターが四角い箱型ではなく、入口の右側にも扉があり、三角形のような変形したエレベーターであった。以前のエレベーターより少し大きくなったが、電動車イスが2台乗れる位の大きさにして欲しかった。ホームは以前と変わらず、そこで同じ総会へ向かうSさんと会った。
 今回、N700系の新幹線を予約した。それは、多目的室(車イス用個室)が広くなったと車イス仲間からの情報で確認してみたかった。Sさんが多目的室を予約してあったので、先に中に入らせてもらった。多目的室の出入口は、半円形のスライド式で座席を引き出すとフルフラットのベッドにもなる。ドアでボタンを押すと自動に開閉できる。室内は広く、私の大きな電動車イスでも楽に入れた。今までの新幹線は個室が狭く圧迫感もあり、座席が2席外してあるオープン座席を利用している。トイレの扉も電動でトイレ内も広くなって、私の電動車イスでも出入りが楽であった。ただ、初めて利用する人は、扉の開け方が分からず力ずくで開けようとしていたから面白かった。その時は、ちゃんと開け方を教えてあげた。次回は、N700系の個室を予約しよう。
 新大阪から地下鉄に乗り換え“谷町9丁目”に着くと雨が降っていた。そこから会場の大阪国際交流センターまで電動車イスで約20分。ポンチョ型のカッパを佐々木さんに着せてもらって出発。
 会場に着くと、カナダから人工呼吸器を使用している“ダンさん”の講演が始まっていた。彼は、バンクーバーで世界初といわれる人工呼吸器使用者のグループホームで自立生活をしている。その最先端の呼吸ケアシステムのあるカナダの実際の生活や社会参加の取り組みを聞いた。彼は、呼気で操作する電動車イスに乗っているが、余暇には呼気で操作するヨットにも乗っていると聞いてビックリした。日本では、考えられない事である。人工呼吸器者の可能性を確信した。シンポジウムには、230名以上が参加して大盛況であった。
 講演後、ホテルへ移動しチェックイン。部屋は狭かったが、ベッド動かして何とか入れた。ホテルに泊まる時はバリアフリーなのは勿論だが、事前にエレベーターの大きさと部屋のドア幅を確認している。私の電動車イスが入れない事があるからである。身体が大きいので電動車イスも大きくなってしまうのだ。最近、大きな電動車イスが増えてきている。
 午後6時半からレセプションが始まり、大広間に250名の大人数。年に1度しか会えない友人達と話が弾む。円卓にコース料理が運ばれ、食事をしている私の心はソワソワ…。それは、友人3人と介助者3人の6人で、レセプションを抜け出す計画があった。広島の友人が、オカマバーへ行くためのセッティングをしていてくれていたのだ。しかし、その計画はバレバレで、皆から「楽しんで来て」と声をかけられガックリした。
 地下鉄で移動し「日本橋」で下車、「ベティーのマヨネーズ」へ。ビルの1階にあり、ボーイさんにショーが行なわれる一番前に通された。段差がなく、スロープになっていてバリアフリー。ウィスキの水割りを飲みながらキョロキョロしていると、突然デカイ声で「イラッシャイー」とダミ声のオカマちゃんにビックリ!!そのオカマちゃんは美形ではなく、オッサンが化粧しているような鹿児島県出身の心が美人な人であった。そのオカマちゃんに「ヒゲは、どうしているんですか?」と尋ねると、いきなり私の顔にホホズリしてきた。私の耳元で「永久脱毛ヨ!」と答えてくれた声が、未だに消えない。生き生きとしたオカマちゃんとのおしゃべりとセクシーなショーを2時間楽しんだ。
 店を出て、駅に向かう途中にたこ焼き屋があり、お土産を買って帰ろうと思った。注文すると店員さんが「今から焼きます。」と言うので、ここで他の4人と別れた。佐々木さんと待っている間、ふと商店街の通行人が少なくなったのを感じた。店員さんに、何気なく「地下鉄の最終は?」と聞いたら「11時半ですかね?」と言う。時計を見ると、あと15分しかない。今から出発しても間に合うかどうかの距離。店員さんに「たこ焼きをキャンセルして下さい。」いうと「できまへん!」と言う。佐々木さんに、「先に駅に向かうので、たこ焼きが出来上がり次第、追いかけてきて下さい。」と駅に向かった。後で思ったのだが、料金だけ払って帰ってくれば良かったと…食い意地が張っているのか!?無事に地下鉄のエレベーター前に着き、モニターの上の時計を見ようしたら電動車イスの充電残量が1/3しか残っていないのに気がついた。もし、地下鉄に乗れなかったら…パニクってきた。時計を見たら、11時40分になっていた。その時、佐々木さんが息を切らしながら走って戻ってきた。駅に行くだけ行ってみようとエレベーターで降りると駅員さんが2人いて、突然「どちらまで!」と聞く。「谷町9丁目」と答えると「急いで!」とホームへ行くエレベーターに乗せられた。ドアが開くとホームには電車が待っていて、それに乗せてもらった。まさにミラクル!電車の中で、叫びたい気持ちを抑えて、喜びを味わっていた。先に帰った友人たちも心配していてくれて、ミラクルの話をすると驚いていた。買ってきたたこ焼きは、皆に喜んでもらい格別に美味しく感じた。
 翌日は、総会に出席し、地方で暮らす高位頸髄損傷者の自立実現に向けた講演を聞いた。地方でひとり生活をする大変さを知った。午後から、“食いだおれ太郎”に会って、串かつとたこ焼きを食って帰ってきた。充実した2日間であった。一緒に行ってくれた佐々木さんに感謝。