受傷当時(1979年)私の体重110kg、身長184cm。毎日、腹一杯飯を食っていました。
そんな私が、マット運動の失敗で大怪我をして四肢マヒになってしまった。ベッドから電動車いすへの移動(トランスファー)が大変な重労働になった訳です。
入院当初、病棟の看護師5人で抱えてもらっていました。「若い女性に抱えてもらっていいネ」と妻のマリちゃんは言っていました。そのうちに廊下を通りかかった男性医師や男性職員にも声をかけ、トランスファーを手伝ってもらうことが多くなってきました。力持ちの女性もいましたが、足元がふらつく人も多く怖かったこともありました。
そんな時、ひとりの看護師さんがバスタオルを使って移動させると言うのです。体の下にバスタオルを敷き、その端を持ちながら移動させる方法を考えたのです。これが、安定していて怖さを全く感じることはありませんでした。それからバスタオルを使っての移動が続きました。これは33年前のことです。
ハビリテーションセンターに転院してから、抱えてもらうたりことが少なくなっていきました。それは、床走行式リフトを利用するようになったからです。床走行式リフトは、アメリカ製のステンレスで作られた物で頑丈でした。体の下にスリングシートを敷いて、その四隅の金具に鎖でひっかけて、油圧ポンプのレバーを上下に動かすと体が持ち上がります。当時は電動ではなく、手動で動かすものでした。最初は怖さを感じたが、事故は一度もありませんでした。ただ、スリングシートが問題で塩化ビニール製のスリングシートが敷きぱっなしになってしまいます。お尻や背中が蒸れて皮膚がふやけて褥瘡になりやすいのです。スリングシートを柔らかいメッシュに作ってもらうことで解消することができました。今でもそのメッシュのスリングシートが、移動するのに大活躍しています。飛行機の座席やホテルのベッドなどの移動もスリングシートを持って行います。
最近では、ビジネスホテルでも移動を手伝ってくれる所が多くなって来ました。特に、体の大きい人が車イスを利用するようになると、トランスファーの問題が大きな障壁となります。何処へでも携帯できる移動機器の開発が望まれます。