ハワイアンのメロディーが流れ、ワイキキのやしの木陰でゆっくりと身を休める。眩しい太陽の光を浴びながら、ハワイを実感する…。飛行機に乗ったのも17年ぶり。去る8月23日から4泊6日のハワイ旅行に、美女7名を従えて行ってきた。5〜6年前から、例の七沢の恋人?山田さんとハワイ旅行の計画を立てていた。半信半疑で預金をしていたのだが、今年の3月にその山田さんが定年を迎えたので、本格的に計画が進んだのである。 はじめKツーリストに相談していたが、ハンディーキャブ(車イスごと乗れる車)が確保できないため、途中で話がストップした。チンコントロールの電動車イスは、私の足なので移動手段がないとどこにも行けない。障害者仲間から『厚木のアルファー旅行センター』を紹介してもらった。山田さんの執念のおかげで、実現に向かったのである。 総勢8名の『ゴリラと美女グループ』のこのツアー(まあ、私のファンクラブ…といったところかナ)、メンバーは山田さんをはじめ、七沢の看護婦である大津さんと石岡さん、老人施設職員の菅井さんと海老さん、山田さんのお嬢さんと我が妻。介助に関してはベテランの美女達を引き連れ、ゴリラの王様は大満足の毎日。 旅立ちの日が近づくにつれ、楽しみと共に不安も増していく。当日、成田の第2ターミナルへ入ると、天井が高く、広々とした所に人が一杯で、こんなに海外に行く人が多いのかと驚いた。早く着き過ぎたので、ターミナルを見学しながら回っているうちに山田さん達と合流。山田さんの瞳が輝いている。皆で自己紹介などをしていると、刻々と搭乗手続きの時間が近づいてきた。私とマリちゃん(妻)だけ皆より先に、JALカウンターで搭乗手続きをした。手続きが終わつて、係員に案内されるままに電動車イスでついて行くと、今までと違う雰囲気の扉の前にきた。自動扉が開き、中に入ると『いらっしゃいませ』と女性の声。そちらを向くと、3人の女性が出迎え。豪華な雰囲気と美女に見とれながら電動車イスの操作をしていたら、誤って大きなガラスを割りそうになってしまい、慌てて電動車イスを止めることになってしまった。マリちゃんが『どうしたの?』と言ったので『カーペットがふかふかだから…』と、ごまかしたがマリちゃんはぶきみに笑っていた。何故か、私は美人に縁があるのだ!?奥に案内され、広く静かな部屋に通された。マリちゃんが座ると、後ろから美人の女性が現れ『お飲み物は何にしますか?』と聞くので私は緊張してしまった。係員にここはどこかと聞くと、ファーストクラスの待合い室に特別に案内してくれたらしい。一生に一度、来られるかどうか分からない所なので、実に嬉しかった。静かな雰囲気に浸りながらガラスばりの窓の外を眺めていると、2〜3人の子供の声。そちらを見ると家族連れがやってきた。マリちゃんが『9人家族よ!』と言うので、『なに!9人家族でファーストクラスか?』。小学生がファーストクラスなんてとんでもないと思ったが、世の中には凄いお金持ちがいるものだと実感した。 搭乗時間が来て、親切な係員に案内され搭乗口へ。障害者は、他の乗客より先に機内に座らせられる。どうやるのかなと思っていると、どうも係の人も私のように大きな身体の人を移動したことがなさそうである。結局ナースの大津さんと石岡さんがJALの機内用手動車イスに移した。車イスが小さすぎて、足が車イスのステップに乗らないで引きずってしまう。四肢麻痺のダラーッとした身体を動かすには、力だけでは腰を痛めてしまう。リフターという移動用の福祉機器を使えば妻一人で移動させる事ができる。本当は、自分の電動車イスのまま搭乗して、そのまま座席の空いている所に固定する安全な方法があれば、助かるのだが、今はまだ安全上無理なのだろう。自分の電動車イスからJALの車イスへ、そして、飛行機のビジネスクラスの座席へと移ったわけだが、これがけっこう大変なのダ。ゴリラの王様としては、自分は何もしなくて楽なのだが、周りの人達がギックリ腰になるのではないかと心配でしかたない。このでかい身体も健康な頃は自慢できたのだが、こうなると、やっかいなものだ。今では小さい人が羨ましい。 |