大学を卒業後、17年ぶりに母校日本体育大学相撲部の合宿を見学に行った。合宿を見学に行くきっかけは、平成6年7月31日、第25回全国大学選抜相撲鷹巣(秋田県)大会で、日体大相撲部が5年ぶり2度目の団体優勝した新聞の記事を見たからである。決勝で中央大学を3−2で敗った記事を読んだ時、相撲部のOBとして、とても嬉しかったのである。早速、日体大相撲部の松本先生宅にお祝いの電話をいれた。松本先生から、『4年生が出場していないにもかからわず、よく優勝した』と聞いて驚いた。来年も期待出来るぞ!電話で話している途中に、相撲部の先生方にもご無沙汰していたので挨拶も兼ねて、『練習を見学したい』と松本先生に相談すると 『9月に大学で合宿をする』と教えてもらった。9月に大学で合宿?…。
『今は、相撲部員が70名近くいるので大学で合宿をしている』とのこと。私が学生の頃は、部員数が21〜22名と少なかったので、地方各地で合宿が行われていた。そういえば4年間、いつも、私の誕生日が初日だったのである。昔の記憶がだんだんと蘇ってくる。1年生時の合宿は飛騨高山だった。朝5時半に起床し、立派な神社(名前を忘れたが)境内の土俵まで1qのランニング、6時のNHKラジオ体操で始まる。練習時間は5〜6時間だが、観光客の見学の中、毎日フラフラになるまで鍛えられ、とても厳しく辛い合宿だった。練習後、シャワーの水道水が氷水のように冷たく、また、おいしくて驚いた事がある。2年時は大分県宇佐市、3年時は岡山県、4年時は北海道倶知安であった。各地で行われた辛くとも楽しい合宿が、今ではとても良い思い出となっている。
 9月10日、横浜市のハンディキャブを利用して、友人、松浦さんの運転で、菅井さんと海老さん、妻のマリちゃんと私の5人で世田谷区の日体大に向かった。車から降りると大学は、活気があり、懐かしく感じた。電動車イスで建物の1階にある相撲道場に近づくと、松本先生と部員の声が聞こえてきた。緊張が高まりドキドキしながら道場前に行くと、一瞬静寂があり、松本先生の掛け声で、120〜130s級の部員に囲まれると、私の大きな身体が小さく見える。私の体重と電動車イスの重量を合わせると180s位あるが、20pの段差を軽々持ち上げられびっくりした。50pは上がっていたと思う。力仕事は相撲部に限る。搭尾先生と小川先生、松本先生に挨拶しながら道場奥に入っい行くと、優しく声をかけむかい入れてくれたのが嬉しかった。先生方は昔と全く変わらず、私の学生時代にタイムスリップしたかのように錯覚して緊張した。また、道場に入ると身が引き締まる思いがした。練習は、身体がもっと大きなレギュラークラスの申し合いけいこが始まっていた。(申し合いとは、同じ相手と連続20〜30番相撲を取る事)外の土俵でも練習が始まっていて、2カ所で行われていた。申し合いが終わると直ぐにぶつかりけいこが始まる。(ぶつかりけいことは、1日の総仕上げのけいことして行われる。ぶつかる方と受ける方とに別れ、ぶつかる方は頭から当たって相手を土俵にだすまでひたすら押す。また、押しきれない時は受け手がひねって転ばす。この『押し』と『転び』を何度も繰り返す。)このぶつかりけいこが、一番苦しく辛く厳しいものである。呼吸を止め一気に相手を土俵の端から端まで、押し切らなければならないが、申し合いが終わったあとなので呼吸も乱れ、体力も落ち、なかなか押し切れないでいると。『ここから練習!』と松本先生の激が飛ぶ。そして、『あと、2つ!』と声がかかると、直ぐに立ち上がりぶつかっていくが、あと1つでなかなか押し切れない。これを繰り返しながら、精神的にも体力的にも強くなっていくのである。私が、手足が動かせない障害があっても乗り越えられてきたのは、妻や家族のお陰でもあるが、相撲で鍛えられた精神力もあるのではないかとも思う。
 重量級のけいこは、気迫と迫力で熱気があり、1番1番、肩に力が入り、首から肩にかけてバリバリに凝ってしまった。松浦さんの練習を見た感想は、『相撲の練習を目前にして、厳しく、辛いスポーツだなと実感した。対戦の瞬間、迫力があり、見ている私も緊張感が走り、力がはいり、手の中は汗ばむ程であった。

 松浦さんの感想。 『伊藤さんに誘われて、嬉しく思い、また、相撲というスポーツに感動し、痛感しました。』
菅井さんは、『私は、相撲というものには、殆ど興味がなく、テレビでもあまり見ない方なのですが、日体大の相撲部に行って見学した時は、すごい迫力にビックリしました。それと、とても印象に残っているのは、相撲部の人にお茶を1人1人出して貰ったことです。(少し恥ずかしかったです)』
海老さんは、『話しには、相撲部の稽古は凄い迫力って聞いていたんですが、実際、目の前で見ると圧倒されちゃって何も言えませんでした。相撲って見てると奇麗だけど取ってる本人は大変ですよね。やっぱり私は、相撲の世界に入るなら行司になりたい!!いいと思いません?内緒ですけど、昔、友達と二子山部屋までミーハーしに行った事があるんですよ…。あの日一番嬉しかったのは、琴ケ梅みたいな人と一緒に写真が取れた事でしょうか?』
マリちゃんは、『スポーツをみると、なんとなくスカッとする。』
 以上、皆さんのコメントでした。選手の皆さんには、これからも怪我がなく活躍を念じて…。