『この私が講演?!』突然の話にビックリ。生徒の前で講演!とんでもない事である。元体育の教師として、生徒の整列や号令なら得意としていた所なのだが…。大勢の人達を前にして話をするとなると、シャイな私には、とてもできそうにない。私のつまらないエッセイを読んでいた、横浜市立旭北中学校の木村先生からの依頼であった。せっかくの話だが、失敗に終わるに決まっているので絶対に断ろうと思った。今だに九州弁が出てくるし、話はへただし…。『やらないゾ!』とマリちゃんに伝えた。すると冷たく『なに言ってるのョ!やってみなけりゃ、わからないじゃない。何もしゃべれなかったら、しゃべらないでいいじゃないの。見せ物になったていいじゃない!やりなさい!』人ごとだと思って…!自分の弱気に気付き深く反省!なんでも挑戦する事が大切だなんて書いておきながら…失敬!失敬!泣く泣く了解した。
 講演の日まで余裕があったので、原稿はワープロで打って準備しておけば良いと考えていた。いざ原稿の準備に取り掛かろうとすると、何を話せば良いのか考えがまとまらず四苦八苦。無情にも月日がアッという間に過ぎ行くもの。マリちゃんにまたもや相談。『何だっていいじゃない。中学、高校と悪行の数々を話すのもよし、怪我をしてからの経験とか思った事でも自然と話せばいいのョ』な〜るほど。という事で怪我をしてからの事を話そうと決まった。
 しかし、自分の事の話となると、なんとなく照れ臭い。苦労話しもよくない。いよいよ講演が明日という夜、眼が冴えて眠れない。胸が息苦しく圧迫感がある。久々の緊張感。とうとう寝不足のまま当日となった。ハンディキャブで旭北中学校へ向かう。旭北中学校は、住宅の真ん中にあり、学校とは思えない斬新な建物であった。体育館が2階にあるのだがスロープがあり、電動車イスで楽に登れた。たかがスロープであるがとても感激した。スロープのある学校はとても珍しい。
 校長室に通された。私の大きな電動車イスが入り易いるように戸が外されていた。私への心遣いを感じた。校長は、元陸上経験者とあって体格が良く、気さくな先生だった。いよいよ、講演の時間となり体育館へ。入口でピンマイク付け、校長先生の後について入場。生徒が座っている真ん中、花道を通って正面に、緊張の極致である。校長先生が、私の紹介をしていると、段々、心が落ち着いて来た。
 さぁ講演の始まりである。最初は、あの〜あの〜の連発で緊張していたが、後半、何とかスムズームに話せた。電動車イスの操作の仕方から入院生活、リハビリ、退院後の生活などを話した。無事、話が終わると緊張も無くなりスッキリした。体育館の後ろで聞いていたマリちゃんも前に出されて紹介されたが、私より堂々としていた。『緊張しない』と聞くと『私は慣れているモン』だって。『私の話は』と聞くと『まぁまぁ』だと笑っていた。大勢の前で一方的に話すのは、とても難しく思った。もっと分かり易く、面白く話せたらと思った。小人数で質問形式だったら私の個性が生かせると思った。次の機会に?
 生徒の皆さんは、最後まで静かに聞いて嬉しく思った。『皆さんは、これからの人生いろいろなことがあると思います。苦しいことや悲しいことがあると思いますが、どうか自分に負けないで下さい。』と最後の言葉を送った。
 後日、講演の感想が書かれた全校生徒からの手紙を貰った。1枚1枚、心のこもった感謝の手紙を読んで、とても感激した。本当に、生徒の皆さんに話をしてよかったと思った。
 とても貴重な経験をさせて戴いた、旭北中学校の生徒の皆さんと先生方に心より感謝。有り難うございました。