昨年から、私の分身と言える電動車イスの調子が悪い。モーター音がおかしく、ちょっとした坂道や小回りでも電動車イスのヒューズが切れるようになった。ヒューズが、一旦切れると自動復帰するまで動かす事はできない。最近では、ヒューズが切れる回数も多くなり、道路の真ん中で突然停止する事もある。そうなると交通事故が心配。8年間も大きく重いゴリラを乗せるとモーターのパワーもそろそろ寿命?かわいそうに!1台目もやはり8年間で作り替えたが、現在の電動車イスには、特に愛着がある。この電動車イスでいろいろな所に出掛け、多くの人と出会い、積極的行動し、私に自信を持たせてくれたからである。しかし、大事に乗っていても故障や事故に合ったらと思うと…。いざ、作り替えるとなると私の特殊な電動車イスは、国内で主に2会社でしか作られていない。機能面で考えると現在利用している会社となるが、スピードやパワーが、現在、乗っている電動車イスよりおちるようである。デザインも16年前と殆ど変わってない。寂しい限りである。そこで、外国の電動車イスに興味を持った。
 毎年、10月に晴海で国際保健福祉機器展が開催されている。早速、友人達と電動車イスを見学に。私は、今回で2回目だが、すでに22回目を迎えていた。この機器展には、自立支援や介護支援のための品物が豊富で、小物から大型自動車(車イスで乗れる)まで幅広く展示されている。世界11ケ国から360社が参加し、約1万展を越える福祉機器が展示され、年々、大規模になっている。福祉機器の重要さを感じる。私のように身体が大きく、重度な障害を持つと、普段の生活の中に福祉機器がとても役にたつ。私が、自宅で利用しているベットやマット、リフター(移動用)などは、過去の機器となっている。現在は、デザインや機種が豊富になり、新しい機器も増え、手動操作の機器が電動化となり、介護する方も楽に使える機器が増えていた。人だかりの多い、色彩豊かで種類の豊富な車イスを見ていると、ふと、昔の車イスは?と思った。木や鉄でできた車イス。過去、車イスは、ぶかっこうで重く、扱いにくいもので、怪我や病気、不自由さのシンボルであった。しかし、現在の車イスは、軽量、丈夫、分解、組み立てが簡単で、車への積み込みが楽に。新しい車イスのお陰で、行動範囲も以前より遥かに広がっている。人間が車イスにあわせる時代が終わり、オーダメイドの世界である。医療用、日常生活用、スポーツ競技用(スキー、バスケット、テニス、マラソンなど)、目的や用途に応じたオシャレができるようになっている。また、世界中には、車イスの素晴らしいスポーツ選手がたくさん活躍しているのである。
 電動車イスも種類が豊富になり、折りたたみが可能で、車に積めるものまで出展されていた。それは、手で操作するものばかりで…。私のようなアゴで操作する電動車イスは、数少ないのである。その中で、アメリカ製の電動車イスに眼が止まった。何故か心臓がドキドキした。息を堪えながら、デザイン、スタイル、バッテリー、リクライニングを確認した。会社の人に説明を聞き、パワー、走行距離も申し分無かった。『乗車しますか』と誘われたが、どう見ても座席の幅が、私には小さすぎた。代わりに友人に乗って貰い、リクライニングの具合を確認したが、良さそうである。早速、カタログを貰い、自宅で検討しているが、説明が英語で書かれているのでチンプンカンプン。今年は、アメリカ製の電動車イスに乗れるかも?楽しみである。
 私は、電動車イスで動けるようになって、他の人の反応がこんなに変わるとは予想もしていなかった。介助してくれる人が、車イスを押している場合、人は私にではなく、介助者にしか話かけない。それが、電動車イスでひとりで出掛けるとみんな私に直接話かけてくれるのである。私は、力を得て生きる喜びを感じた。
 現在、電動車イスは障害者を解放するものになりつつある。テクノロジーの進歩で肉体的なハンディキャプは、乗り越えられるようになってきている。障害を持つ人がテクノロジーの助けをかりて活躍できるのである。
 人生は、何が起きるか分からない。どんなに健康でいたいと思っても、いつハンディキャップを背負う事になるかわからない。いつ、ハンディを背負ったとしても安心して生活できる、自由な社会参加が可能となるような社会であって欲しいと願う。
 ※横浜西口、かながわ県民センタービル内 福祉プラザ(045-312-1121)で1年中、福祉機器を展示(助成あり)