身動き出来ない!助けて〜。凄い人、人、人…。混み過ぎて、でっかいゴリラが目立たない。目立たないと、人がドッと押し寄せて来てしまうので、前に進もうとしても足を踏んでしまいそうで、なかなか進めないのだ。コワ〜イ!昔、乗った満員電車を思い出した。混んでいるとは聞いていたが、こんなに凄いとは思ってもいなかった。その場所は、横浜美術館"ゴッホ展"である。いつもの友人達5名とマリちゃんとで行った。マリちゃんいわく『混んでて見ることができなかったら、みんなで"咳"して帰ってこよう!』だって!『ゴッホ、ゴッホ』皆で大笑い。しかし、行ってみると本当にそうした方がよさそうであった。寒風の中、美術館外には2・3時間待ちの大行列である。
 マリちゃんが、初任の頃、お世話になった先生が、美術館の課長さんであるという事で、まず、ご挨拶に。ベージュのダブルのスーツで登場。スマートでピシッとしてカッコよかった。一緒に行った女性達は、早速『女性にもてそうな人だったネ』と言いながらデレーとしていた。車では、正面から入れないので裏から入場。美術館の隅の所で、ちょっとした休憩所を早速見つけ、絵を見る前に腹ごしらえをした。皆、芸術よりも食う事の方が、まず、第一のようである。岩村さんが、美味しいおいなりさんとサラダをたくさん作って来てくれていた。それをガツガツ遠慮なく戴いた。手作りのお弁当は、本当に美味しい。やはり、作る人の愛情が入るからなのだろう。食っている途中で、係の人が『申し訳ございません。ここは、準備のため閉めさせて戴きます。』そ・ん・な〜。まだ、途中なのにと思っていたら、やはり係の人はやさしかった。"食べ終わるまでどうぞごゆっくり"との事。人間やはり、優しい人に会えると心が暖かくなりますね。みんな満腹。美術館で弁当を食ったのは初めてであった。
 いざ、ゴッホ展へ向かう!とにかく混んでいるので、皆バラバラになって見終わったら集まろうと言う事で一時解散。私は、少しでも作品を見ようと空いている所を探し、遠くから眺めていると、あっという間に身動き出来なくなってしまった。脱出しようとしたが動けず、じっと待っていると眼にチカチカと星が出てきて、酸欠状態になり、貧血で倒れそうになってしまった。クラクラしながらやっと脱出。フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890)は、絵が認められず死んだそうだが、小さな絵であっても存在感があった。常設展の方へ行くとゴッホ展とは、正反対。静かでゆっくり見学できる。車イスで人をひきそうになる心配がない。美術館は、静かな方が良い。絵に集中して見ていると、突然、横で着物を着たオバ様が『懐かしいね!』と大きな声をあげた。私は、電動車イスに座っているケツが飛び上がるほどビックリした。久し振りの驚き。何事かと、横を向くと『昔は、皆こうだったね。』『そうそう!』と大きな声で会話し始めたのである。その絵は、昔の農家の室内で赤ちゃんがハイハイして動き回らないように、石のうすに紐でつながれている姿だった。とてもかわいい。(渡辺幽香作の幼児図)部屋全体に大きな声が響き、部屋の隅に座っている係員の女性が、注意をしようかと迷って、座っている椅子から腰を上下している姿に大笑いした。
 美術館を見終えて、次は、神奈川県立歴史博物館に行った。"銅鐸の美"という展示をやっていた。3Fから古代の平安、鎌倉と中性人、2F神奈川と伝統文化、横浜開港、1F銅鐸の美という展示内容でなかなかおもしろい。ゆっくり見るとけっこう時間がかかる。古代に生きた人々の所に展示してあった、はにわ、土偶の顔がユニーク。海老ちゃん菅井さん、マリちゃんは、なにやら大笑いしながら、いつもの"おかしな調子"で見て回っていた。あの美術館にいたオバ様達と同じだ。周囲に迷惑をかけている。恥ずかしい!私は、すかさず遠くに離れた。県立歴史博物館に初めて行ったが、駐車、案内など係員さんの対応も親切で、久々に古代のロマンに浸りながら堪能できた。
 午後5時過ぎ、そこを出て、さて次は、やはり食べる事だ!食べる事で始まり、食べる事で終わる。前にも行った事がある、新横浜のプリンスペペへ直行。ディナーのバイキング。1人3500円と安くないが、旨くて料理の種類も豊富でたくさん食べる人にはお得となる。賑やかに食べ、またもや満腹。人間の食欲は恐ろしいものだ。満腹でも数時間すると…。一日楽しく過ごし、普通に生活できた。この日は、寒波の影響でとても寒い日だったが、私の心はいつまでも暖かかった。