"御対面!"となって、何年も探していた人に会った瞬間、感激の涙が流れる。このTV番組を見て、一緒に涙を流される人がきっと多いだろう。ゴリラにも涙だ!次から次へと涙が溢れてくる。隣で見ているマリちゃんだって涙と鼻水でグチャグチャ。マリちゃんに涙を拭いて貰いながら、お互いにニヤニヤ!このような番組を何度か見ているが、同じ人として生まれながら、苦労されている人がなんと多く、よく頑張っているなぁと感心してしまう。
 先日、この番組で印象に残った場面があった。聴力障害のある男性が、昔、共に働いていた同じ障害のある人を探していた。その人の影響で、今はカーレースの車の整備やレース中のピットでのタイヤ交換など、モータースポーツの仕事をされているのだ。昔、職場に慣れず落ち込んでいた時に、同じ障害を持った先輩に声をかけられたのである。休日にカーレースを一緒に見に行こうと誘われた。彼は、初めてのカーレースを見て、マシンの大きなエンジン音とスピード感に、とても興奮したそうである。車がピットに入ってきた時に、ピットクルーの素早く行われるタイヤ交換を見て、先輩は、あの仕事をふたりで一緒にやれたらと話した。車のエンジン音や突然のトラブルなどで、仲間の意志が伝わりにくい中で、手話でやる事で素早く、正確に伝えられると夢を語った。彼も興味を持って納得した。それから数年、彼は、その夢を現実のものとした。今は、若者達にも手話を教えながら指導し、生き生きと仕事をされている。夢を実現する事は、なかなか難しく凄いことだと思った。昔は、障害者に対する差別や偏見が凄く、言葉では表現できないほどの苦しみを味わっただろうと思う。健康な肉体を持っていても、なかなか夢の実現は難しい。まぁ私の感想はどうでもよいが…。とにかく、その昔の先輩と無事に御対面となったわけだ。先輩の仕事は、モータースポーツではないが、車関係の仕事をされていた。ふたりとも夢に向かっていたことに感激した。そこでふたりのやりとりがの場面が、実に自然で良かったのだ。司会の笑福亭鶴瓶さんが手話通訳の人から説明をうけながら、話が進むのだが、対面できた喜びや興奮もあって、その探していた彼(聴力障害)が、大きな声で見つけた先輩の手話を通訳したのだ。その時、鶴瓶さんが"あんたが通訳してどうするねん"と言って肩をたたいて大笑いとなった。これだ!と思った。遠慮のない思ったことを口に出して会話をしたらいいのだ。この聴力障害の人は健聴者と一緒に仕事をしているので、耳は聞こえないが口を大きく動かし、声を出して話す。耳の聞こえない人は、自分の声が聞こえないので、ボリュームの調整も訓練する。詳しいことは、私にはよく分からないが…。
 障害のある人と初めて会ったとき、どう接していいのか分からなくて困ったり、最初から笑えるような雰囲気になりにくい。それは、やはり、気の毒とか、かわいそうとか、笑ったら失礼だとか、あれこれ考えてしまいがち。だから、こちらが思っていることが言いにくくなってしまう。また、ちょとした一言で、心を傷つけることもある。話し方によっては、その人の人間性がよく分かる。鶴瓶さんは、普通の人に対するのと同じ態度であったのだ。普通に通訳する専門の人がそばにいるのに、聴力障害の人が分かりにくい言葉で話したときに、鶴瓶さんは肩をたたいてはっきりと言った。言われた彼も普通にその瞬間"ごめんごめん"と明るく笑った。普通でよかった。なにかうまく表現できないが、とにかく"普通"が嬉しかった。やはり、障害者も障害者番組だけに出るのではなく、普通にいろいろな番組に出られたら、障害について知らない方も少しずつ受け入れ易くなるのではないかと思う。そして、もっともっと楽しくなるのではないだろうか。そうすれば、障害を持つ人達の心のバリアフリー(障壁)がなくなり、社会参加がしやすくなるのではないだろうか。番組後、彼は先輩を自分の働いているサーキットに誘って、ふたりの夢を実現した。ふたりの笑顔が優しく温く感じた。
 お知らせ:聴覚に障害があっても、楽しめる音楽会がある。ボディソニックを使い、パイオニア本社ビルで毎月1回コンサートが行われている。問い合わせ先 03-3495-6657、FAX 03-3495-4301