有明の東京ビックサイト(国際展示場)で、第23回国際福祉機器展が開催された。世界11カ国440社が参加し、電動車イス・バス・トイレ・介護用品・コミュニケーション・住宅改造・ハンディキャブ(車イスでのれる車)など2万点が展示された。早速、友人達と見学に行った。毎年、規模が大きくなり、見学者も増え、全部見て回るのに1日がかりとなる。 今年は、各社からハンディキャブの展示が多く、セダンの車でも車イスが乗れるように工夫してあった。外車も展示してある。これは、近年車イスの方の外出が、多くなっている証拠であると嬉しく思う。福祉機器の展示場に来ると、普段会えない人にも会える事があり、ビックリする。私と同じ障害を持つ、アゴで操作する電動車イスに乗った4人にも会えた。初めての事で、喜んで良いものかと複雑な心境。なんと、その中のひとりは、私達の仲間の中で今、話題になっているアメリカ製のヘッドコントロール(頭部で操作)の電動車イスに乗っていたのだ。最近、出始めた新車なのに、もう乗っている人がいるのかと驚いてしまった。羨ましい!実は、七沢リハビリテーションセンターで、アメリカ製のヘッドコントロールの電動車イスに試乗したばかりだったのだ。私は、現在アゴで操作する電動車イスに乗っているのだが、ヘッドコントロールの電動車イスを見たのは初めてで、国内での製作はまだされてなく、試乗するのが初めてだったのだ。
 最初に、ヘッドコントロールについての説明があり、同じ障害を持つ大濱さんから先に挑戦した。前進、コーナー、バックと2台の電動車イスを無難にこなす。さすが頸損の大ベテラン。私の番になったが、2台ある電動車イスは、どう見ても私には小さすぎて乗れない。先生方が工夫して下さって何とか試乗。しかし、姿勢が苦しい。頭の位置をあわせ慎重に発進。頭を支えるヘッドレストを頭で後に押すと前進、頭を横に倒すと曲がり、バックは、後に数秒押し付けるとギヤが変わりバック走行する。前進、バック、コーナーリングとも、何とか操作できた。しかし、デコボコの道や段差など、首の動きで誤作動するのではないかと不安に思った。頭での操作は、アゴで操作する機器が眼の前に無く眺めが良いのだが、首を支える力と後・横に押し出す力が必要となる。手術で首の筋肉が半分になった私には、首を後ろに反らす動きが辛く感じるので、とても無理だと感じた。電動車イスは、何と言っても誤作動がなく、細かな操作性が大事で、安全に乗れる事が大切である。アメリカ製の電動車イスは、デザインが良く、パワー、スピード、転倒防止車輪とも申し分が無い。また、ひとりひとり自分に合った操作方法をコンピューターにインプットして、操作ができるのが素晴らしい。
 そんな事を思い出しながら、電動車イスの展示を見ていた時、突然、横から私の電動車イスを真剣に見ている女性とお爺さんがいたのだ。私は、知り合いの方かと思ったが見覚えが無い。私の電動車イスを見ながら、真剣に話しかけてくる。『先月、20才になる息子が、交通事故で頚髄損傷になり四肢完全麻痺になった』と訴えてくる。詳しく聞くと、私より状態が悪く呼吸器を付けているという。電動車イスの説明をして、自宅での生活方法や頚髄損傷者の会などがある事を教えた。現在では、私と同じ障害を持つ人が、国内、海外へと活躍され、皆さん努力され生活されている事を伝えた。母親は、驚いていた。本人が自分の障害を受け入れるまでには、多少時間が必要である事も伝え、何とか立ち直って欲しいと願った。怪我をした本人が一番苦しいのだが、それ以上に家族の苦しみも深い事を知った。今回、たまたま国際福祉機器展で知り会えたのだが、地方によってはアゴで操作する電動車イスがあるという事さえ知らない人がいると聞く。不運にも、身体に障害を持ったとしても、入院した病院によっては、多くの情報が得られない事もあるのである。県や市によっても日常生活用具などの給付や援助にも違いがある。家の改造についても補助金制度や訪問看護システムなど、障害があっても自立できるような方法がいくつかあるのだ。私のエッセイを読まれた方からいろいろ手紙を頂いたり、電話を貰ったりするようになってから、結構、突然の事故に合われた人達から連絡を頂くようになった。怪我をした人が、同じ障害を持った人の生活や経験を聞くことで、生きる希望が持てるようになるのではないかと思う。誰もが助け会いながら、普通に生活できる社会になって欲しい。そのためにも国際福祉機器展のようなものが、各地方にも広がり、誰もが自由に見学できるようにする事が、大切であると思った。
※横浜西口、かながわ県民センタービル内(旧県政総合センター)福祉プラザ(312-1121)13階で1年中、福祉機器を展示(助成あり)