『キャー!変な人がついて来る。ずっーとついて来るョ』と言いながら、2人の若い女性が逃げた。その後ろから、手足の動きがぎこちなく、頭を斜めにしながら走って追っ掛ける若い男性の姿。『なんですか?』と立ち止まり、振り返りながら2人の女性が恐る恐る聞く。何のことはない、彼女達が落とした手帳をその男性が拾ってあげたのだった。その時、その男性は、月日と曜日を間違えずに覚えている事ができる情緒障害者であった。自然と笑いが出るように、おかしかったのが良かった。これは、NHKのTV番組の一場面である。ある施設で生活している人達4人が、1泊旅行に出掛けた様子が物語りになっていた。障害者の事を考えたTV番組というと、苦労した話とか暗く悲しくなりがちだが、この番組は、とてもほのぼのとしていて大変良かった。旅で出会った男性が、いろいろ親切にしてくれ、心が暖まるドラマ。障害を背負って生きている4人の心が、美しく純粋でさわやかなのが印象深い。『ヤダ−』と言って逃げた女性とも友達になってしまう。
 能力に障害があったり、歩き方が普通でなかったり、しゃべり方がおかしいと人間は偏見の眼になりやすい。自分の心が奇麗で純粋であれば、見た目がどうであろうと、どんな人とも交流が持てるのだと思った。五体満足で普通に生活できる人や、能力の高い人達の方がもしかすると、本当は障害があるのかもしれない。実は、番組の途中から見たので、是非、初めからもう一度見てみたいと思っているのだが…。障害者だけの旅行だったので、施設で待っている先生方が、ハラハラしながら電話を待っている姿が印象的でおかしかった。無事に帰宅する船に4人が乗って、安心して終わるドラマであったが、実際に障害者だけでも安心して旅行できる日本であって欲しい。きっとできるのが日本だと思うが…!?
 以前から障害者が普通にドラマやバラエティーなどに出たり、司会をやったりしたら良いのにと思っていた。そしたら、先日、テレビ朝日で『ゴールはバリアフリー』という番組をやっていた。車イスでスポーツをやっている人達とゲストがペアになって、クイズに参加していたのだ。車イスでできるスポーツをクイズに形式にしていた。車イスマラソン、タイビング、海外ラリー、スラローム。両手が動けば、健康な人達と同様に殆どのスポーツが可能である。
 最初に大分県で行われた国内最大の大分国際車イスマラソンの問題から始まっていた。私は、車イスマラソンで使用される競技用レ−サーに興味を持った。前輪1個のリム部がカーボン製、後輪2個は、ハの字型で安定性が良く、ホイルはカーボン製。フレームは、アルミ製で総重量たったの7sの3輪車である。そして、ブレーキーが無く、光センサーのスピードメーターやオリジナル給水装置がついている。何と軽くてかっこいい!レースは、スイスのハインツ・フレイ(38)選手が、1時間24分24秒の独走で優勝した。それから7分後、日本選手がゴール。車イスマラソンは、とても苛酷で駆け引きのあるスポーツだと思った。
 私と同じ障害を持つ、頸髄損傷の方も出演していた。その人は、オーストラリアンサファリラリーに挑戦していた。私よりずっと状態が良い。私は、首の骨の4番目を脱臼骨折したので四肢完全麻痺であるが、その人は6番目位の状態。握力は無いのだが、腕を自由に動かせる事ができる。ステアリングの上に右手をマジックベルトで固定し、上体もシートベルトで固定(上体は、前後左右に自由には動かせない)する。左手でハンドコントロール(手動運転装置。押すとブレーキ、引くとアクセル)を動かして車を運転するのだ。汗をかかない所は私と同様。背骨の折れた位置によって、一人一人症状が違うのである。ラリーの途中、アクシデントがあり、命の綱のクーラーが故障し、灼熱の中、5447kmを9日間走りきり、ついに完走した。彼は、実に凄い!彼は、カーラリーの練習で事故にあい、車イスになった。この後も車関係の仕事を続けている。番組の中で彼は、『いつか海外ラリーに出場しようと思っていた。20年かかったけど諦めずチャレンジして良かった。そして、障害者としてではなく、一人のラリードライバーとして、海外ラリーにこれからも挑戦し続けていきたいと思っています』と力強く語った。彼の瞳は、キラキラと輝いていた。この番組を見ていた人は、その人達が障害があっても明るく生き生きとして、普通の人と何ひとつ変わらないと思ったはずである。障害があるとか無いとか関係無く、一人の人間として付き合って欲しいものである。そうすれば、バリアフリーな社会になるのではないかと思っている。バリアフリーとは、差別や障壁がないという事。皆、同じが一番!車イスのスターが、早く出現する日を待ちわびて…!