心地よい風がヤシの葉を揺らす、太陽の日差しが眩しい。ふと眼を開けば、透き通ったマリン・ブルーの海が果てしなく広がっている。時間がゆっくりと穏やかに流れ、夢の時間をまどろむ。最高の気分!日本の日常を忘れ、4年ぶり2回目のハワイを4人で満喫した。
 今回のハワイ旅行は、私自ら旅行会社を選び、航空会社やホテル、ハンディキャブ(電動車イスが乗れる車)の手配までひとりでおこなった。一番大変だったのは、ハンディキャブや福祉レンタルなどの情報である。結局、最後にたどりついたのは、東京にあるハワイ観光局である。ここで知りたい情報を教えて貰った。また、障害者の情報誌ウィルの中の『ハワイ特集』を参考にした。普通の観光雑誌にも車イス情報が載っていると良いのだが…。
 4年前は、知り合いの看護婦さんに、突然ハワイに行こうと誘われて、何にも分からないまま旅行したのであった。入院当時にいつか、ハワイに行きましょうと約束していたが…。障害を持って以来、国内旅行もした事がない私がいきなり海外!とんでもない話であった。旅行の手配は、看護婦さんにまかせきり。話はトントン拍子に進み、3カ月後、私は初めての海外旅行に緊張と不安な気持ちで飛行機に乗りこんだ事を思い出した。今回の旅行では、10年も乗った愛用の電動車イスとお別れし、新品の電動車イスで行った。3台目の電動車イスになるが、カナダ製でスタイルもすっきりしてカッコが良い。音が静かでパワーがあり、座面も低く安定感がある。ただ、車体が低くなったぶん前後の長さが少し長くなってしまった。旅行先での各エレベーターの大きさを心配したが、何とか大丈夫であった。ハワイでもアゴで操作する大きな電動車イスは珍しいようである。外国の子供達は、私の電動車イスを見て身体が固まっていた。その後のリアクションが豊かで面白かった。4年前、ハワイで日本の車イスの人は全く見かけなかったが、今回は10人も見た。車イスの人がどんどん外に出る事は、車イスの方にとって良いことだと思う。健常者の方に見て貰う事も大切であり、何と言っても楽しいものなのだから〜。
 ハワイでこんな事があった。エレベーターの前に、4人の家族が先に待っていた。その後に私達が並んだ。エレベーターの扉が開くと男の子2人が先にエレベーターに乗り込もうとすると、父親が車イスが先だと子供達を制し、私をエレベーターに誘導してくれたのである。父親のしつけと思いやりに、私はとても感激した。ハワイでは、車イス人を見ても違和感がないのは何故だろう。設備面のだけの問題ではないようにも思う。それは、人の心の問題かも知れない。
 海外旅行で一番心配するのは、飛行機の乗り降りである。電車や車は、車イスのまま乗車するので、入れる大きさだけが問題になるのだが、飛行機だけは自分の車イスでそのまま乗車できないのである。自分の手足であるのに、それと離れなければならないのだ。これがゴリラにとって大問題。車イスは、荷物として扱われるので、空港用の車イスに乗り移る。全身麻痺の人間は、全くどこにも力が入らないので、そうとう重くなり、簡単には移れない。それに、なんと言っても車イスが小さい事が一番困るのだ。一般の普通サイズの方は、車イスに楽に乗れ、背もたれの高さも良いのだが、私の場合はそうはいかないのだ。普通の車イスでは、背もたれが短く、支えて貰わないと倒れるし、ステップの位置が上過ぎるので足が乗らないのである。こりゃ〜困る!全くでかい身体は実に不便!一緒に行ってくれた、逞しい女性たちのお陰で何とかコンチネンタル機に乗り込んだ。ビジネスクラスにしか乗れない身体なので、乗りごこちは寝ることもできて最高!しかし、ホノルル空港に着いてからが大変だったのだ。ホノルル空港の車イスも小さくて、背もたれもたりず、足もステップに乗せられないので、足1本づつ女性が持ち、背もたれはハワイの男性職員が支えながら車イスを押した。ゲートの近くまでなら何とかなったのだが、ゲートのそばまで電動車イスを運んで貰うようにお願いしてあったが、運んでもらえず、大変苦しく恥ずかしい思いをした。途中、車イスから何度かずり落ちてケツの皮はむけるし、そのたびにTシャツはずり上がり、私のでかい腹がまる出しになり、まるでタヌキの置物のような惨めな姿。胸にはさらしが巻かれ、人間として扱われていないようであった。きっと皆さん見たら大笑い。とにかく私の手足である電動車イスは、いつでも離れたくない。それにしても1台位、大きな手動の車イスを空港で用意してくれないものか!              つづく…