"チャリーン"『ありがとうございます。』4月29日、昼頃から自宅を出発。今までも何回かあったのだが、いつも入浴日等と重なり、なかなか参加できなかった。今回は珍しく初めての参加。早速、横浜駅西口で、募金箱をひざの上に置いて呼び掛ける。『日本せきずい基金にご協力をお願いします!』最初は、多くの人に声をかけてもなかなか私の募金箱には入れて貰えなかった。隣の募金箱には入っているのに、私の方は…。少し気になって一時は、私の顔が怖いからといろいろ考えたりもした。募金は簡単なものではない。初めて募金をしてくれた人は、私より年上のおばさんだった。なんとなく嬉しくなった。それをきっかけに入れて貰えるようになった。そんな時、前から大きな剣道の防具を担いだ女子中学生2人が近寄ってきた。私に『老松中で講演に来てくれた伊藤さんですか?』と聞かれた。『はい』と返事すると大きな防具を担いだまま、財布からお金を出して募金をしてくれた。『ありがとう』と声をかけると、笑顔で答えてくれた。その姿に感激した。また、中学生らしき男の子達が、私の前をスーと通り過ぎ、振り返って私を見る。どうやら私を知っているふうである。きっと、講演会かなにかで知っていたのだろうと思う。通り過ぎながらも、また戻ってきて5人がひとりづつ募金をしてくれた。『ありがとう』と言うと照れ臭そうに走り去って行った。後で、どこの中学校なのか聞くのを忘れてとても後悔した。けっこう若い中学生風の人達やおばさん達の女性の協力が多かった。中には千円札を入れてくれる人もいる。 『日本せきずい基金』とは、交通事故やスポーツ事故、病気等でなどで、毎年発生するせきずい損傷者は5000人にも及ぶ。『せきずい』を損傷すると手足が動かなくなり、感覚もなくなる。けがの部位が高いほど、マヒの範囲は大きく、障害が重度になる。損傷された『せきずい』が回復し、身体が元どおりになれば問題はないが、現在の医学はそこまで進んでいない。また、社会的に認識されていなく、病院や官庁の関係者の知識も微々たるもの。そこで、『総合せきずい情報センター』の設立が急がれる。医療研究の充実化や支援システム、ピアカウンセリングなどで、自立と自尊できるような情報提供が望まれる。まだ、『日本せぎずい基金』は、日本中に知られていないが、地道な活動がいつの日か実を結ぶ事になるのを期待したい。ただ、この募金が何にどう使われているのか、きちんと報告しなければならないと思う。世の中、けっこう駅前で募金活動をしている人達が多い。募金をして下さる人達の生活もけっして、余裕のある生活ではないはず。募金をした者が本当にその活動に使われているものかどうか不審を持っている人も多いのだから。
 募金活動が終わり、仲間達と合流しようとしたら、またとんでもない事になってしまった。アッ!電動車イスのスイッチを何度入れても、全く動かない。私の心は落ち込んでいった。2週間前にも、玄関を出ようとしたら急に止まってしまい、修理をしてもらったばかりだった。もう大丈夫と思い、西口に来たのだが…。またもやストップ。心配して皆が、私の周りに集まってくれた。その中には、以前から一度お会いしたい思ってた人や受傷当時、北里のICUで一緒に入院していた方とも偶然会える事ができてとても嬉しく思っていた所であった。しかし、電動車イスの故障で、どうやって帰宅しようかと不安ばかりになり、心にも余裕が無く、皆さんとじっくりと話すことができなくなってしまった。仲間の携帯電話を借りて、マリちゃんにSOS!携帯電話は、イアホーンマイクで話せるようになっており、手を使わずとても便利であった。募金活動後に、マリちゃん、母と待ち合わせていたので、直ぐに来てくれた。その日はなんと、私とマリちゃんの結婚20周年で、母が私達に御馳走してくれる予定だったのだ。しかし、電動車イスの故障で…。電車が混む前に慌てて帰路。高島屋前から電動車イスを手動に切り替え、マリちゃんに押して貰い、何とか希望が丘駅まで着いた。駅前は、急坂で長い道程。これからが一大事。電動車イスと私の体重合わせて約200s。50sのマリちゃんが気合を入れて押すが、途中で止まってしまう。『ヒェー。重たー。何でこうなるのー』とブツブツ文句を言いながらも頑張るマリちゃんでありました。母も坂で押すのを手伝ってくれたが、電動車イスが下がってしまいまるでダメ。そこに救世主が現れた。若い男性がこちらを見ていたので、私はその男性に思い切って声をかけた。『すいません。押して貰えますか?』すると『いいですよ』と快い返事。嬉しかった。坂の上まで約40mも押して貰うと、彼の呼吸は荒くなって、本当に辛そうであった。丁重にお礼を言って別れたが、翌日彼は筋肉痛になっているに違いない。電動車イスの故障で大変な1日になってしまったが、人の優しさにも触れられ、楽しい一時でありました。重い電動車イスを押してくれたマリちゃんと母、そして若い男性に感謝。