最近、日曜の夜はテレビの前で、ある女性に夢中。今、大ブレイク中の「ビューティフルライフ」のヒロイン「町田杏子(常盤貴子)」彼女は、17歳の時にかかった病気が原因で、車イス生活を余儀なくされたが、明るさを失わず懸命に生きている。図書館で司書として働いている。毎日、手動装置か取り付けられている改造車で通勤。この手動装置は、両足が動かせなくても手で運転出来るようになっている。その逆に、両手が動かせなくても足で運転できる装置の車も実際にはある。
 このドラマは、恋愛の神様、北川悦吏子の脚本で描かれている。よけいな挿入曲も少なく、たんたんとした話なのだが、なにげないセリフが心にしみる。私は、ドラマの行方も気になる所だが、常盤貴子の車イスのこぎ方や身体の動かし方などがどうも気になってしまい、細かい所までチェックしている。どうやら私は、車イスや電動車イスが出てくるドラマを見たりすると、どこのメーカーなのかとか、本当はあんな動きはできないとか、役者さんの動きが気になって、ドラマどころではなくなってしまう。ちなみに、ヒロイン杏子の使っている車イスは、外用と室内用の2種類の車イスを使用している。外用は、OX(オーエックス)の車イス。この車イスは、元バイクレーサーが事故に遭い、下半身不随になって、車イスに乗るようになったのだが、自分の気にいった車イスがなかったので、彼がバイクの知識を生かして車イスを作ったのである。その車イスが評判となり、同じ車イスが欲しいという人が多くなったので、車イスを作ることになったのである。今では、車イス利用者の人気NO1となっている。この車イスに乗った常盤貴子を木村拓哉が後ろから押しながら車イスに飛び乗って、ふたりで街を駆け抜けるシーンがよく出てくるが、この車イスの後ろにバーが取り付けられているからである。普通の車イスの後ろには、乗ることはできない。室内用は、パンテーラーの車イスである。
 今までに、障害を持った人を主人公にしたいろいろなドラマを見ているが、細かい所まで演技している役者は少ない。その点、常盤貴子は、車イスでラーメンを運んだり、坂を上るシーンや車イスをこぐ姿勢がとてもうまい。車イスで坂を上るには、腕力と両手のバランスが難しい。どうしても利き腕の方の力が強いので、車イスが曲がってしまうのである。常盤貴子がクランクイン前に、本格的に練習をしたのが分かる。ドラマの中の常盤貴子の衣装は、上着の袖がいつも汚れている。これは、車イスをこぐ時に、袖がタイヤにあたり汚れてしまう事をリアルに表現しているのだと思う。また、町田家の家具やベットの位置などのセットが、本当に車イスの人が実際に生活している空間になっている。ドラマを見ている人は、車イスからの生活を見ると、日本はバリアフリーな場所がいかに少ないかが分かるはずだ。ヒロインが障害者というだけで、兄の縁談が破局する話があった。日本人は、まだそういう目で障害者を見ているのか…。私の友人には、車イスや電動車イスの方でも健常者の方と恋愛をしたり、結婚している人が多くいる。結婚となると、なかなか難しい問題が多いのは事実であるが、ふたりで助け合って力強く生きている人達がいる事も忘れて欲しくない。
 最近、街中やテレビの中で、車イス利用者をよく見かけるようになった。ドラマの世界だけでなく、世の中にはハンデを真正面から受け止めて、明るく積極的に生きている人が多くいる。ベストセラーとなった『五体不満足』の著者、乙武洋匡(おとたけ ひろただ)さんもその一人。彼は、生まれながらにして、両ひじから先と両ひざから下がない(先天性四肢切断)というハンデがありながら、両親や周囲の理解で、普通教育を受けながら育った。テレビ画面の彼は、頭が良く、明るいキャラで会話もうまく、自信を持って生きている。彼がテレビにでるようになって、障害を持つ人のイメージが変わったのではないかと思う。彼は早稲田大学卒業後、テレビ局に就職して、活躍すると思っていたが、突然4月以降の講演や執筆活動などの仕事をキャンセルするらしい。『頑張るのは、好きじゃない。のんびりしたい。』と休業宣言を出した。『僕みたいな"でしゃばり"が、障害者全体のイメージになってしまうのが怖い。私のことを不快だと感じた人もいるのではないか』と言っていたそうである。彼もいろいろな事を気にして、悩んでいたのである。著名人になったゆえの悩みなのかもしれない。私は、元気いっぱいの障害者は、どんどん世の中に出ていいと思う。広い世界に立てば、それが深い理解につながるはずだから…。