今年も友人たちとお台場にある東京ビッサイトに行ってきた。海外15カ国1地域から過去最大の630社が出展する国際福祉機器展を見学。国際福祉機器展は、国内では最大の福祉の祭典である。毎年出展が増え、今回は野球場6面分の展示ホールに25,000点の福祉機器が展示されていた。介護保険による福祉機器の利用、住宅改修は伸びており、その市場性に期待し、今回の新規出展は国内外あわせて150社。特に在宅での介護の多様なニーズに応える介護用品・機器が増えていた。また、今年は企業グループや系列会社による事業展開や異業種からの参入が進み、共同出展が目立った。今年の来場者が会期3日間を通して13万人を超えたらしい。 広いホールに入ると、やはり目に付くのは車イスである。『車イス』と言えばスチール、アルミ等金属製が多い中、屋内で過ごす時間の多い高齢者の方に木製の車いすが紹介されていた。木の持つ温もりが『介護する方』『介護される方』」にやさしさとなって伝わりそうである。また、車イスに傘が簡単に取り付けられたり、軽くて性能が良く、デザインのカラフルなスポーツ用の車イスも目にとまった。 今回は、世界で開発されたハイテクの福祉機器が終結していた。コンピューター関連技術やロボット技術の発達と共に、今障害を持つ人たちが使う福祉機器は飛躍的に進歩している。そんな中、重度の障害で意思を伝えられない人にもコミューケーションがとれるハイテク技術が開発されていた。今まで頬や眼の動きでセンサーが感知して、スイッチを入れたり、パソコンの操作もできるものはあった。しかし、今回見たものは、アメリカ製の脳波スイッチである。3つの電極のついたセンサーをおでこにあてるだけで、自分の意思を伝えたり、物を動かす事ができるのだ。要するに、念じることでスイッチをON・OFFにできるのである。若い女性がモニターとなって、実際脳波スイッチでおもちゃを動かしたり止めたりしていたが、見ている私たちよりも本人の方がびっくりしたいた。設定を変えることで、さまざまな脳波に対応できるらしい。もう実用化されているが、ただ価格が高いようである。このような機器こそ国や自治体の援助をお願いしたいものである。また、電動車イスに赤外線センサーを取りつけ、ほんのわずかな頬の動きでも自在に操作できるように開発されている物もあった。 会場で一番注目を集めていたのが、ハイテクの粋を集めたインディペンデンス3000の電動車イス。デモストレーションの時間になると、ブースの周りには沢山の人垣ができる。私もブースの側にいると、アッという間に人垣に囲まれてしまい身動きとれなくなってしまった。すると、突然外国人の関係者の方が人を分けて私を一番前に誘導してくれたのだ。外国人のマナーというか優しさにいつも感激する。また、その行為も自然なのがいい。毎年、福祉機器展に来ているが、こんなに人垣ができるほど注目を集めていた機器は、今回が初めてのような気がした。今までの概念を変える電動車イスの動きは、驚きの物であった。どんな電動車イスというと、キャスターと後輪4輪の6輪で走行し、な、なんと階段を昇り降りするのだ。一見普通の電動車イスに見えるのだが、座面を常に水平に保ちながら、15cmの段差を簡単に乗り越えるのだ。驚きすぎて言葉が出なかった。航空宇宙技術から応用した6つのジャイロセンサーで車イスの傾きをはかり、内蔵されたコンピューターで姿勢を制御しているらしい。後輪の回転型4輪駆動により、芝生や砂浜、凹凸のある道でも安全に走行がてきる。この電動車イスだったら、私は傾斜のある歩道で横転してトラックにひかれなかったかもしれない。また、2輪で立ちバランスを保ちながら、ユーザーが座った状態で立っている人と同じ目線の高さで話ができたり、高い場所にあるものを手に取る事もできる。同じ視線で会話する事で、精神的な自立がはかれるのではないかと思った。正に夢の電動車イスである。ちなみに、4〜6時間のバッテリーチャージで16〜24kmの距離が走行可能。現在、試作品だが米国政府の認可を得て、2年以内に実用化を目指している。開発者は、『これを使えば、自立する力を取り戻す事ができる』と自信を持って語っていた。ハイテク技術が、私のような重度の障害を持つ人の世界を大きく広げようとしている。そして、これからはハイテク機能によって操作性は益々向上していくのだろう。その分インフラ整備が必要になってくる。電動車イスに乗ったまま、エレベーターのボタンや歩行者用信号ボタンが押せるようになる日も遠くないのかもしれない。 |
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