2年前から、準備を進めてきた“はがき通信重度四肢マヒ者の自立生活全国セミナー”が横浜で無事に開催できた。横浜ベイシェラトンホテル&タワーズに行き、瀬出井さんとスタッフの五十嵐さんと合流。ホテルの鈴木さんと打ち合わせ後、“かながわ県民センター”に向かった。段差のないコースは、ホテルの地下から地下道を通って、三越のエレベーターで地上に出て、行く方法を事前に調べておいた。ところが、時間帯で問題がおきてしまった。午前9:30頃だったため、三越が開店していなく、エレベーターが動いていないのだ。どうするか考え、ホテルの2階から陸橋を渡り、通行人の方にエレベーターのボタンを押してもらって1階に降りることができた。するとエレベーターに、利用時間が書いてある。夜10:00までと…。あとで、各エレベーターが動いている時間帯を調べたが、車イス用のエレベーターは1日中動いていない。先に気がついたお陰で、参加者に迷惑をかけずにすんだが、電動車イスで移動するには、まだまだバリアが多すぎる。
 着くと、1階ロビーには、野中さんやボランティアさんが集合しており、皆の顔がイキイキとして輝いている。早速、準備に取り掛かった。準備後、昼食を終えたときに、突然私の携帯電話が鳴った。友人から「電動車イスが壊れた!」とパニック状態の声。今いる所を聞き出すと、JR横浜駅のホームだという。よく聞くと、西東京市から電車で横浜駅に着き、電車からホームに降りた瞬間に、電動車イスの背もたれが折れたという。友人も私と同じアゴで操作する電動車イスに乗っているため、背もたれや支えがないとひとりでは座っていられない。あとで、聞いた話だと横に倒れた瞬間、直ぐに駅員が押さえてくれたお陰で、折れたパイプに突き刺さらずに助かったと話していた。突然、替わりの車イスといっても、リクライニングできる特別な車イスはなかなかみつからない。どうしようかと迷っていると、その時珍しくひらめいた。会場のかながわ県民センターは、福祉プラザがあり、福祉機器が展示されていることに気がついたのだ。早速、展示場に行って、職員の方に事情を話すと快く車イスを貸し出してくれた。女性職員の方の対応が優しくて、とても嬉しかった。早速、スタッフの五十嵐さんに、車イスを運んでもらった。それから3〜4時間後、電動車イスに乗ってその友人が現れたのでビックリ!直ぐに治せたのだろうか?何とか貸出用の車イスでセンターに着くと、たまたま知り合いのハンディキャブが来ていて、壊れた電動車イスを新横浜のエルビダまで運んでもらい、そこで折れたパイプを溶接修理してもらったと言う。ラッキーなこともあるもんだ。エルビダとは、電動車イスなどを改造してくれる業者である。
 セミナー初日は、個人の体験や情報などを発表し、夕食会で自己紹介をしてもらった。この日は、NHKの取材が入り、夜のニュースで紹介された。2日目は、神奈リハの泌尿器科部長 石堂先生に“頸髄損傷者の尿路管理”について講演をしていただいた。講演後は、質疑応答が多く、皆の不安を解消し、日頃の尿管理方法を学んだ。尿管理で、困っている頸損者が多いので、皆から大変評判が良くて嬉しかった。
午後からは、横浜市のバリアフリーを体験するため、JRや地下鉄を利用して、桜木町や中華街に移動となる。私は、ホテルで連絡係として残留。そんな中、大変な事件があった。電動車イスの方が、JR桜木町駅からJR石川町駅まで移動したときに、石川町駅に駅員がいなくて電車から降りられず乗り越したらしいのだ。桜木町駅で、石川町駅に連絡してもらったのにもかかわらず、駅員がいなかったのだ。かろうじて、2駅先の根岸駅で男性の乗客の方に降ろしてもらったという。根岸駅駅員に事情を話すと「すみません。石川町駅にはよく注意しておきます。今度は連絡をきちんとしておきましたので」という。再度、電車に乗車し、石川町駅に着くとまたもや駅員がいなかったのである。あたふたとしていると乗客の方が列車の車掌に連絡してくれて、車掌があわてて降ろしてくれたらしい。彼は、「ホームに降りた時、腹が立って震える思いだった。二度と電車に乗りたくない!」と話していた。それを聞いて、私も怒りが込み上げてきた。だいたい、電動車イスの方が電車に乗るのに、いちいち駅員に介助してもらうことの方が本当はおかしい。電車とホームの隙間や段差がなければ、電動車イスでも介助なしで乗降できるのだ。現在、相鉄横浜駅にはラクープというリモコンで、ホームからスロープが上がる装置が設置してある。今は、駅員がリモコンで操作しているが、電車が停車した後に自動的にスロープが上がるようにすれば介助なしで乗降ができるのだ。それにしてもJRは、評判が悪い。どうしたものか?
 今回のセミナーでは、トラブルがあり、そのことがかえって良い勉強になった。今回、横浜で開催できたのは、会議室の予約から3日間ハンディキャブを運転していただいた堀沢さんをはじめ、瀬出井さんやスタッフ、YMCA・聖ヶ丘の学生ボランティアさんのお陰である。皆さんに、心より深く、感謝を申し上げます。ありがとうございました。