@米国仕様プロトモデル試作 KV−1310をベースとした米国向けプロトの設計を担当することになりました。アメリカ仕様のチューナー、信号基板は夫々の担当グループから提供してもらい、偏向、高圧、コンバージェンス回路は日本仕様そのまま流用しました。 KV−1310は商用電源(100V・AC)を直接整流したトランスレス方式ですので、アメリカの商用電源(120V・AC)用に設計変更する事と、アメリカ安全規格UL対応が必要です。 最も要領よく実現するために、降圧トランス方式(120V→100V)を採用する事としました。セット後部右上に多少のスペースがありましたので、最大外形・重量を指定し、電磁シールド付きのトランス開発をタムラ製作所に依頼、短時間で要求仕様を満足するトランスが出来あがりました。心配していたブラウン管のランディングに対する漏洩磁界の影響、温度上昇等の問題も無く短時間でプロトを製作できました。クロマ担当は白人と黒人の肌色再現に苦労していました。 A米国出張:米国向仕様トリニトロンカラーテレビ発表とフィールドテスト等 1968年5月15日・羽田発 → ニューヨーク(トリニトロンカラーテレビをPREVUE展示・紹介) → ロスアンゼルス(SONAM Office・ Open House で展示・紹介) → サンフランシスコ → デンバー → シカゴ → ニューヨーク → マイアミ(鬼木さんと私の二人のみ) → ハワイ → 6月14日・羽田着 大西さんと二人で、プロトを携え、課員全員に見送られ、羽田から米国に向かいました。 ニューヨークのホテルの発表会には、米国でクロマトロンの終戦処理に当たっていた常田さんが合流し、SONAMの鬼木さんがサポートしてくれました。 セットを設置し電源を入れると問題なく画面は出ましたが、ピュリティーが時々不安定になる現象が発生しました。常田さんが持参していた磁気測定器を使い調べた結果、地下鉄がホテルの下を通る度に磁場が変動することが解りました。磁場変動の影響が少ない場所にセットを展示することで発表会を無事に済ませることが出来ました。 来場した方々は素直にトリニトロンカラーテレビを評価してくれました。インラインガン・シャドウマスクブラウン管を使ったポルタカラーを発売したGEのエンジニアからは「凄いテレビを開発をしたね、おめでとう」と声を掛けられました。 フィールドテスト: トリニトロンカラーテレビ試作機が米国で充分実用になること、問題点・課題把握のため全体的な観点からフィールドテストを行いました。 *トリニトロン故の問題が無いか?特に留意しました。ブラウン管・シールド・デガウスのトータルシステムでランディング(ピュリティー)を保証できるか? マイアミにも足を延ばし確認しました。 *私が直接担当だった電源系がアメリカの電力事情で問題が無いことが確認でき安心したことを覚えています。 *白黒TV時代に、デンバー(標高1609mで低湿度)で「画面にコロナノイズが見える、高圧系の故障率が高い」等の問題が指摘されていましたので、デンバーを訪問しました。 *米国人(白人・黒人)の肌色を出すのに苦労していたクロマ担当の努力が実り、現地で違和感は指摘されませんでした ホテルのロビー等で見かけるカラーテレビは、トリニトロンと比較すると画質が悪く、これからトリニトロンがカラーテレビの画質に革命を起こすことになる予感がして心が熱くなりました。 1か月間の滞在を通じて、米国、SONAMをある程度理解できたこと、鬼木さんと信頼関係を築けたことは、以後の仕事に大変役立ちました。超多忙な設計部隊の大西さんと私を、1か月間留守にすることを覚悟したマネージメント! 今思うとすごい決心をされたと感心・感謝しています B米国向け量産モデルKV-1210Uの設計 最初の米国向けトリニトロンカラーテレビKV−1210は、上記の米国発表会用のプロトの完成度を上げたもので、ほとんど同じ内容でした。信頼性に大きな影響のある、電源・偏向・高圧系は、国内販売で実績があるKV−1310と同じ、電源は降圧トランスとUL対応のサーキットブレーカーが追加されただけなので、市場品質・信頼性には自信を持って発売することが出来ました。 |
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ニューヨーク:トリニトロン展示 |
ニューヨーク:展示会場 |
ソニー東京本社からの出張者(ニューヨークにて) (鈴木・常田・大西・宮岡) |
ロスアンジェルス:トリニトロン展示 (SONAM L.A オフィス・オープンハウス) |