最初のトリニトロン大型テレビKV−1810Uの思い出
 13型に続き、トリニトロンでは不可能と言われた18型がブラウン管部門で開発されました。

 当初の13型ではネックにコンバージェンス電極がありましたが、18型では同軸型アノードキャップから「ブラウン管アノード電圧と静コンバージェンス電圧」を供給する方式となり、簡素化と信頼性向上を実現しました。
静コンバージェンス電極に供給する電圧は、13型(アノード電圧-420V)ではHCT方式、18型(アノード電圧-1.2kv)ではアノード電圧を高耐圧抵抗による分圧方式を採用しました。
水平動コンバージェンス補正は、13型ではHCT方式を、18型ではCY(コンバージェンスヨーク)方式を採用しました。
ブラウン管アノードの供給する高電圧の整流素子は、13型では真空管、18型では高圧セレン整流素子を使用した3倍圧回路を採用し、トリニトロンブラウン管を除きオールソリッドステイト化が実現しました。
18型のハイパワーに高耐圧・高電流に対応するために厚木製の新しい水平偏向・FBT駆動トランジスタが採用されました。・・・・・
 トリニトロンプロジェクトでは、新しいサイズのブラウン管・新機種開発時に、ブラウン管、関連ディバイス、それを使いこなすセット設計と互いに連携しながら、次々に新しい技術に挑戦し、成長&完成度を高めて行きました。

 KV−1810Uのテレビセット設計のまとめ役は、山田さんと私の二人?担当でした。信頼性・安全性に最も配慮が必要な、高圧系(3倍圧高圧整流ブロック)、水平性コンバージェンス用高耐圧抵抗ブロック等の耐環境試験を、山田さんと知恵を出し合い徹夜で繰り返し検討したこともあります。ブロックをゴミだらけにしたり黒鉛を塗ったり、クラックを入れたり、水や油をかけたり・・・

セットを一宮工場で量産するために山田さんは一宮工場に赴任され、私は大崎に残りセット設計を継続することになりました。感慨深い思い出の一つです。
2015年11月23日