トリニトロンプロジェクトに参加した初期は、キーメンバーと一緒に、担当プロジェクト=仕事(ブロック設計、セット全体設計、等)の簡単なPERT図を作成しました。プロジェクトの全体像、クリティカルパス、アクティビティー、管理ポイント等の情報共有、自分の担当業務の位置づけ把握・認識、メンバーの一体感醸成を意図しました。 時間のクリティカルパスと同時に、アクティビティー(タスク)の難度も考慮しました。 確か、18型広角モデル設計時だったと思います。広角化に伴う水平偏向電力の増大に対応して、厚木が開発したGTO素子を採用することになり、塩沢さんの努力で実用回路が完成しました。 加えて、エンジニアグループの提案で、新偏向歪補正方式、新電源回路方式の導入検討を決定しました。担当チームは期日までに設計を完了すると宣言しましたが、途中経過をチェックした結果、発売時期に間に合わせるには不確実性が大きいと判断し、保険として実績のある回路方式の設計チームを平行して走らせました。決定会議には両チーム全員参加で状況報告をしてもらい、採否を決断しました。残念ながら新方式は設計完成度不充分と判断し、この機種では従来方式を採用しました。懸命な努力にもかかわらず、採用されなかった設計チームメンバーの気持ちを思うと心が痛みました。幸い、新回路方式は、完成度を高め次のセットに採用されました。 プロジェクトを担当した時は、PERT図を描かなくても、アクティビティー、難易度、クリティカルパス、管理ポイント、デシジョンタイミングを常に意識し、特にクリティカルパス、難度の高いアクティビティーについては必要な対応・支援を意識して行いました。社外の部品メーカー等にも出向き、状況を説明し、納期短縮・遵守を要請したこともあります。 ある時、米国のカラーテレビ大手のZenith Electronics社の訪問を受け、技術交流を行いました。担当エンジニアから、品質・信頼性を保障する為に、高圧部品設計時に採用している標準PERT図の説明がありました。確か30ヶ月以上の膨大なPERT図でした!彼らの説明は大変奇異に感じました。自分達の仕事のやり方も守り、外部を納得させる為だけにPERTを利用している様に感じました。Zenith Electronics社は暫くして業界から姿を消しました! 開発を伴うプロジェクトは、その都度PERT図を作成し、アクティビティー、管理ポイント、デシジョンポイントを明確にし、クリティカルパス潰しをやり、極力短時間でプロジェクトを完結させるのに役立てました。PERT図を描かなくとも同様な意識を持ちプロジェクト、仕事に取り組みました。 ☆その他、個人的に意識していたキーワード @効果的効率主義: 期待効果・あるべき姿を明確にした上で、効率良く実現する工夫・努力をすること。 A埋没コストに囚われるな。 B相手の立場でもレビューし、方法論、マネジメントに反映させる。 C管理ポイントが少なくて済む「仕事のやり方、分担」を工夫する。 D全体最適、個別最適を理解した上で決定・実行する。 E着眼大局、着手小局。 F素人・アマチュアがプロになろうと努力する過程でよい仕事をする。(井深語録より) |
2015年10月24日掲載 2016年6月24日追記 |