★Book Review 11 (51〜)


『Instruments of Night』Thomas H. Cook 320 pages (1998)

一人の資産家が作った美しく静かな街 Riverwood。その平和はかつてうち破られたことがあった。 50年前、若く美しい娘 Faye Harrison の絞殺死体が発見されたのだ。真犯人は捕まらないまま迷宮入りに終わる。
Riverwood の資産家の娘により、ミステリ作家 Paul Grave は、その真相を解き明かしてくれ、と依頼される。死期の迫った Faye の母親のため、少なくとも彼女の死に納得のいく説明がつく「小説」を作りあげてくれればいいと。
50年前の調査資料を調べ真相を追ううち、Paul の脳裏には、彼の過去の忌まわしい出来事がフラッシュバックする。

邦題「夜の記憶」。
これぞクックとうならせる出来。相変わらずの描写力で、情景が目に見えてくるようだ。 本格ミステリとしても上出来だし、みせかけの平和の裏に潜むどろどろとした悪意が徐々に暴かれていく過程は、P.D.James の作品のようでもある。 主人公の過去と50年前に起こった殺人事件。その2つの真相は、果てしなく暗い・・・。 オススメ度は、"★★★★★"。

2000/12/09読了


『Charm City』Laura Lippman 291 pages (1998)

Baltimore の新聞社 Beacon Light で、コンピュータにハッキングによって、ボツ記事を一面に載せるという事件が起こる。元新聞社リポータの女性私立探偵 Tess Monaghan は、犯人探しの依頼を受ける。 内部の犯行に絞って調査を続けるうち、この記事の的になった実業家が自宅で自殺する。そしてついには Tess 自身の身にも危険が迫る。

邦題「チャーム・シティー」。Tess Monaghan シリーズ第2作。1998年 エドガー/シェイマス 最優秀ペーパーバック賞ダブル受賞。
処女作から4作続けて有名どころの賞を受賞するという Tess Monaghan シリーズだが、どうも私には肌が合わない。 よくわからない表現も多いし、読んでいてもリズムにのれない。そもそもストーリーが面白いと思わないのだ。もうこのシリーズは、諦め。
よって、オススメ度は、"★★"。

2000/12/20読了


『Atlanta Graves』Ruth Birmingham 283 pages (1998)

Sunny Childs は、Atlanta の女性私立探偵。伝説的人物 Gunnar Brushwood の探偵事務所を切り盛りする女性私立探偵だ。 ところが、Gunnar は探偵事務所の担保金を現金に振り出し、行方不明になる。
一方、Sunny は盗まれた名画の身代金支払い取引の依頼を受ける。名画を取り戻し、報酬を手に入れなければ、事務所は破産してしまうところだが、取引の代わりに現場で女性の死体を発見する。 Sunny は必死になって、名画の行方を追うが、事態は思わぬ方向に向かう・・・。

アトランタの私立探偵 Sunny Childs 第1作。2作目「Fulton County Blues(邦題「父に捧げる歌」)は、エドガー賞最優秀ペーパーバック賞を受賞している注目シリーズだ。 この第2作は、既に読んでいるが、個人的には今回の1作目の方が面白い。ドタバタ系のノリで、主人公 Sunny の魅力が前面に出ている作品。
オススメ度は、"★★★★"。

2000/12/31読了


『Hard Time』Sara Paretsky 495 pages (2000)

シカゴの私立探偵 V.I.Warshawski はあるパーティーの帰り道、路上に横たわっている女性を危うく轢きそうになる。 救急車を呼び帰宅した Vic だが、翌朝 刑事が現れる。 警察のレポートが紛失したため、再捜査をするというのだ。そして Vic が酒気帯び運転で轢いたのではないか、と嫌疑をかけられる。 身の潔白を証明するため女性の身元を洗うが、彼女はすでに死亡し、しかも死体が解剖前に消えていたのだ。さらには事務所が荒らされ、しかも麻薬が密かに置かれる。 Vic が巻き込まれた事件の真相は一体?

V.I.Warshawski シリーズ第9作。今回の見所はなんといっても刑務所への潜伏だ。事件の真相を暴くため、自ら刑務所に身を置き、看守や犯罪者の嫌がらせに耐える。 その痛々しい体験は、彼女の身も心もボロボロにする。タフネスを誇る彼女もすでに40才を越えた。今後の展開が注目である。
オススメ度は、"★★★★"。



『The Brethren』Jhon Grisham 440 pages (2000)

連邦刑務所に服役している3人の元判事は「The Brethren」と呼ばれていた。彼らは獄中から悪事を企む。ゲイ雑誌に若者を装ってペンフレンドを求める広告を出し、返事を送ってきた裕福な男性を恐喝するのだ。 そして、彼らの元に思いがけない人物から返事が舞い込んだ!

グリシャムのリーガル・サスペンス最新作。だが、全くグリシャムらしくない。テンポがないし、あっと驚く展開もない。 主人公(そもそも誰が主人公なの?)にもたいして思い入れも出来ない。まぁ、あいかわらず非常に読みやすいのだが、ただそれだけであった。 オススメ度は、"★★★"。