★Book Review 14 (66〜)


『Hyperion』 Dan Simmons 482 pages (1989)

29世紀、地球滅亡の後、AIと共存した人類は星間国家を作り上げていた。しかし、アウスターとの星間戦争勃発の危機の最中、惑星ハイペリオン<時の墓標>が開き始めたとの連絡が入る。 謎の生物シュライクを崇めるシュライク教団によって選ばれた7人の巡礼が<時の墓標>に向かう。彼らのハイペリオンとの関わりを語った6つの物語。

90年代最高のSFと呼び声高い作品。1990年度ヒューゴー賞・ローカス賞受賞
SFはやはり難しい、というのが正直な感想だ。知らない単語なのか、作者が作ったSF用語なのかが見分けが付かないからだ。 いきなり<時の墓標>、シュライク、と訳のわからない設定から入り、巡礼に選ばれた7人が自分のハイペリオンとの関わりを語る6つの物語を通して設定が徐々に明らかになっている構成も 苦しい。彼らの職業は牧師・軍人・詩人・学者・探偵・領事と様々で、そのたびに用いられる専門用語が変わるというのも、面白くもあり、難しくもあるところだ。
個人的な好みは、牧師>学者>領事>探偵>軍人>詩人の物語の順。ラストは「えっ!こんなところで終わっちゃうの?」という中途半端なので、続編「Fall of Hyperion」を読まない訳にはいかない・・・。
難しいのでオススメ度は、"★★★"。

2001/04/13読了


『Skeleton Dance』 Aaron Elkins 341 pages (2000)

スケルトン探偵で名を馳せるギデオン・オリヴァー教授の元にフランスから1本の電話が入った。クロマニヨン人の住居跡から、人骨が発見されたのだ。しかも数年前のものが。 休暇の予定を早めフランスに飛ぶギデオン。容疑者である6人の著名な考古学者達の中から果たして犯人を捜し出すことが出来るのか。

スケルトン探偵第9作。邦題「洞窟の骨」
骨を扱う特殊性を別とすれば、犯人探しの古典的探偵ミステリーということになるであろう。しかし、謎解き部分で「ああ、なるほど!」と思わせる 部分が少なく、釈然としない思いが残る。英語は骨用語が多く、序盤はかなり苦戦。舞台がフランスということで時折出てくるフランス語にも手を焼いた。
オススメ度は、"★★★"。

2001/04/23読了


『Places in the Dark』 Thomas H. Cook 281 pages (2000)

1967年秋、海辺の街 Port Almaに謎めいた美しい女性が現れ、そして1年後 逃げるように去っていった。その一年の間に僕たち兄弟の人生を取り返しのつかないものに変えてしまった。 一人を死に、そしてもう一人を狂気の淵に追いやったのだ。彼女の行方を追ううち、彼女の隠された過去が徐々に明らかになる。そして僕の心に隠されたものも・・・。

クックの手口はいつもこうだ。序盤に置かれたある一つの出来事を、主人公が過去を振り返る形をとりながら関連する事実が徐々に明らかになっていく。しかし、それは巧妙に読者をある見方に誘導していく罠だ。 そしてそれを最後でひっくり返すのだ。ひっくり返されると、全く違った角度で物事が成立する。全く見事としかいいようがない。
緻密に構成されたプロットに、素晴らしい情景描写と心理描写が相まっているのだから、良い作品にならないわけがない。
オススメ度は、"★★★★★"。

2001/05/01読了


『A Drink before the War』 Dennis Lehane 277 pages (1993)

ボストンの教会に事務所を構える私立探偵パトリック・ケンジーは、上院議員から書類を持ち逃げした使用人を捜してくれ、と依頼を受ける。 相棒アンジーとともに彼女を捜し当てたパトリックだが、目の前で彼女は消されてしまった。半裸の上院議員の写った写真を残して。きな臭さを感じつつ、残りの書類を探す彼らだが・・・。

邦題「スコッチに涙を託して」。パトリック・ケンジー&アンジェラ・ジェラード・シリーズ第1作。シェイマス賞受賞。
最近お気楽な私立探偵に慣れていた私にとって、彼らはとんでもなくハードだ。 優柔不断な探偵ものを元来好んで読んでいた私にとって、身に危険が及べば躊躇なく人を殺すことができる彼らはとても新鮮だった。 もちろん最後にはちょっと落ち込んではいたけれど・・・。
洒落た文章とともにストーリーは小気味よく進む。ただし洒落ている分だけ英語は読みにくい。それから気になった点が1つ。ちょっと人間関係が都合よすぎはしないか?
オススメ度は、"★★★★"。

2001/05/09読了


『The Empty Chair』 Jeffery Deaver 479 pages (2000)

ニューヨークの犯罪学者リンカーン・ライムは手術を受けるため、ノース・カロライナの病院に来ていた。そこへ地元の警察が訪れ、ライムに協力を申し入れる。 地元で「インセクト・ボーイ」と呼ばれている少年が、少年を1人殺し、さらに少女を2人誘拐したというのだ。捜索の指揮を右腕アメリアに任せ、残された証拠を分析して逃亡ルートを追う。

リンカーン・ライム・シリーズ第3作。
今回はニューヨークから離れ、ノース・カロライナの湿地帯が舞台。些細な証拠を分析し膨大データと比較して犯人を追いつめるライムは、知らない土地では「陸に上がった河童」である。 いつもの冴えがみられず、苦労する展開にもどかしさを感じる。そのせいで前半はテンパが遅く、いらいらするが、後半事態は大急転。どんでん返しにつぐどんでん返しで、最後の最後まで「そこまでやるか」という感じ。 あまりにもやりすぎで最後の2つは読めてしまったのがやや残念。それと前2作に比べちょっと伏線の貼り方が弱いような気も。
英語は非常に簡単で読みやすい。オススメ度は、"★★★★"。

2001/05/21読了