★Book Review 18 (86〜)


『The Last Coyote』 Michael Connelly 405pages (1995)

ハリウッド殺人課刑事ハリー・ボッシュは、上司への暴行からの停職中に30数年前の未解決事件の単独捜査を決意する。それは、娼婦だった彼の母親の殺人事件だった。そして捜査もみ消しの事実と大物の名前が浮かび上がり、新たな殺人事件へと進展していく。 真犯人は一体?そしてその動機とは?

邦題「ラスト・コヨーテ」。ハリー・ボッシュ・シリーズ第4作。
これまで、事件の捜査を追うと共にハリーの内面にもメスを入れてきたこのシリーズだが、本作でさらに奥深く切り込んでいく。 停職中に受けることになったカウンセリング、そして彼が殺人課の刑事となったきっかけともなる母親の殺人事件捜査。
そしてラストには、これまで30数年の彼の心の傷がついに癒される時が。このままこのシリーズは、終わりを迎えた方がすっきりしたのではないだろうか。今後の展開が逆にやや不安である・・・。
オススメ度は、"★★★★★"。

P.S. この本を読み終わった方には、コナリーのオフィシャルホームページに掲載されている「1961」というショートストーリーを読まれることを是非オススメしたい。これは、もともとラスト・コヨーテのプロローグとして書かれたものだが、削除されたものらしい。

2001/11/17読了


『The Neon Rain』 James Lee Burke 281pages (1986)

ニュー・オリンズの刑事デイブ・ロビショーは、知り合いの死刑囚から 自分を殺そうとしている噂を教えられる。どうやら数日前休暇中に偶然発見 した黒人女性の死体と関係があるらしい。 数日後、何者かに襲われ重傷を負うロビショー・・・。一体、その黒幕は?

邦題「ネオン・レイン」。デイヴ・ロビショー・シリーズ第1作。
トーリーはともかくとにかく読みにくかった。口語・隠語が多くて手を焼いただけではなく、 何しろ文章を読んでも意味が浮かんでこない。そのためますます集中力がなくなって・・・、の悪循環。 この感じは、ローラ・リップマンを読んだときと似ている。 最後は適当に流し読みしてしまった・・・。このシリーズは挫折。
オススメ度は、"★★"。

2001/11/24読了


『Evidence of Blood』 Thomas H. Cook 370pages (1991)

犯罪ノンフィクション作家のキンリーは、親友レイの死を知らされ、 故郷であるアラバマの小さな町シクワイアに戻る。レイの家を訪れた キンリーは、レイの娘から父の死が腑に落ちないと聞かされる。 数ヶ月前に人が変わったようになったというのだ。 元保安官だったレイは30数年前の殺人事件を調べ直しており、キンリー も過去の裁判記録からレイの調査の足取りをたどる。キンリーを待っていた衝撃の真相とは?

邦題「闇をつかむ男」。
トマス・H・クックの作品の特徴は、これまで何度も書いたように、 優れた情景描写力(まさに目に浮かぶような)。 それにより読者は主人公と同一化し、完全にミスリードされてしまい (主人公の視点でストーリーを追わされてしまう)、どんでん返しを迎える。 クックの作品の感動には、目の前にあった事実に気付かず、ものの見事に ミスリードされてしまった悔しさみたいなものが含まれいるように思う。
この作品でも、優れた情景描写はクックらしい。しかし、今回はラストに 至る過程がやや唐突な感が否めく、読了後の感動があと一歩であった。
オススメ度は、"★★★★"。

2001/12/01読了


『Darkness, Take My Hand』 Dennis Lehane 355pages (1997)

ボストンの私立探偵パトリックとアンジーに、友人から依頼電話が飛び込んできた。 彼の女友達に、脅迫電話と彼女の一人息子の写真だけが入った手紙が届いたというのだ。 張り込みを開始する二人だが、青年は無惨にも殺されてしまう。 類似事件を調べるうち、パトリックとアンジーの住むブロックと事件の関連が浮かび上がる。 パトリックにも謎めいた脅迫文が届き、ついにはアンジーのもとにも、アンジーと元夫フィル の写真が送られてきた!

パトリック・ケンジー・シリーズ第2作。邦題「闇よ、我が手を取りたまえ」
非常に辛い物語である。父親に暴力を受けて育ったパトリックは、それでも表面上は 普通の生活を送っていたはずである。しかし、彼の過去が暗い影を落としていたのは 彼の心の底だけではなかったのだ。次々とパトリックがかけがえのない物を失っていく 終盤は辛く悲しい。しかしそれがゆえ、ラストシーンには安堵感を伴った感動を覚えた。
コナリーの「The Last Coyote」でも書いたが、このシリーズもここで終わった方が よかったのかもしれない。これからが作者の力量が問われるところだろう。 ハリー・ボッシュ・シリーズとともに今後の展開に注目していきたいと思う。
オススメ度は、"★★★★★"。

2001/12/10読了


『Homicide』 David simon 631pages (1993)

新聞社のレポーターが、1年間で200件以上の殺人事件を30人の刑事で担当するボルチモア警察殺人課に、一年間同行取材。 刑事ドラマ「ホミサイド〜殺人捜査課」の原作ともなったノン・フィクション。

この小説に登場する事件は、ごく簡単に解決するものから、全く解決できないものまで実に様々だ。普段読んでいる刑事小説はやはりフィクションの世界であるということがよくわかる。 また、1年で200件以上の殺人事件がボルチモアだけで起こると言うこと自体が日本に住む私にとっては驚愕の事実だった(ちなみに日本全国で1年間に発生する殺人事件は1000件ちょっとらしい)。 しかし、やはり私にはノン・フィクションは合わないらしい。やや凝った文体のせいか。あるいは息をのむストーリー展開がないせいか・・・。
オススメ度は、"★★★"。

2002/1/7読了