ルシェのディーラに勤めるキャシーは仮釈放中の元窃盗犯。
ラスベガスを騒がした大泥棒だったが、相棒でかつ恋人マックスの事故死
の後、服役していたのだ。
ある事情から大金が必要となったキャシーは、最後の大仕事を
企てる。命がけで盗んだ金は、マフィアがらみのヤバい代物だった。
関係者4人が惨殺され、ついに魔手はキャシーの最愛の人物にまで及ぶ。
邦訳「バットラック・ムーン」。コナリーのスタンドアローン。
今回の主人公キャシーはコナリーとしては初めての女性だ。
そのせいか、今ひとつコナリーも書き込み不足の感が否めず、いつものように物語に入り込めなかった。
もう一つ不満なのは、キャシーを追う謎の男カーチだ。
序盤ではあっという間にキャシーを追いつめる見事な手際を見せるが、
後半ではただの間抜けなサイコパスに成り下がってしまった・・・。いつものプロットのさえもないようにも思えた。
コナリーファンとしては、不満の残る作品である。
オススメ度は、"★★★"。
ボストンの私立探偵パトリック・ケンジーが最初にカレン・ニコスルに会った時、
彼女は美しく聡明な女性だった。しかし6ヶ月後ビルから裸で身投げした時、彼女
は別人になっていた。
自殺の前にかかってきた依頼の電話をバカンスのために無視した事を気に病んだ
パトリックは、カレンの身に何が起こったかを調べ始める。
ストーカー被害、最愛の恋人の交通事故、彼の生命保険の解約と、経済的にも精神的
にも参った彼女は、ドラッグそして売春と転がり落ちるように転落していったのだ。
不自然なものを感じ取ったパトリックは、元相棒アンジーとともに悲劇の数々の裏に
ひそむ悪意の存在を捜査するが・・・。
パトリック&アンジー・シリーズ第5作。
このシリーズには、毎回なんらかのテーマが設定されているような気がする。
今回は、「世の中に潜む悪」。どうしようもない悪はどうしても存在する
わけだが、身近にいるブッバも世間的にみれば悪人なわけで、その辺の
基準がパトリックの中では、明確にわかれているように思われる。
どうやらその基準は「悪意」の有無のようだ。
ところで、そのブッバ。これまでも二人を助けてきた名脇役だった
(前作ではお務め中のため出番無し)が、本作では準主役とも言っていいほど
大活躍をみせる。そしてついにブッバにも・・・。
オススメ度は、"★★★★"。
神学校の学生の死体が、海岸の砂の中から見つかった。浸食された崖が崩れ落ちた
ための事故死と断定されたが、疑問を持つ父親により依頼されたダルグリッシュ
警視は再捜査に乗り出す。
人里離れた場所にあるこの神学校は、少年時代、司祭であった父親に連れられて
しばしば滞在した思いでの場所だったのだ。
しかしノスタルジアにひたる暇もなく、ダルグリッシュの滞在中、助祭司が何者かによって
惨殺された・・・。
ダルグリッシュ警視シリーズ第?作。
P.D.Jamesの文学的な表現が、神学校のもの寂しさと相まって重厚なイメージを与えてくれる。
捜査を進めるうちに、容疑者達の様々な愛憎・人間関係があきらかになるところは、いかにも
P.D.Jamesらしい。
ただ、舞台が舞台だけあって宗教用語が多く、読むのには苦労した。
オススメ度は、"★★★"。
元FBIプロファイラー、マッケイレブは心臓移植を受けた後、妻と生まれたばかりの娘と
共にカタリナ島で静かに暮らしていた。ある日、旧友であるLA保安官に迷宮入りになりそうな
事件の現場ビデオと事件ファイルに目を通して欲しいと頼まれる。
殺されたのは、かつて娼婦の殺人罪の容疑者となりながら釈放された男。当時事件を
担当していたのはハリウッド殺人課刑事ハリー・ボッシュだった。
現場のビデオを映っていたふくろうの置物、そして口をふさぐために貼られていたテープに
書かれていた中世ラテン語の一節から、ある画家の名前が浮かぶ上がる。その名は、
ヒエロニムス・ボッシュ・・・。果たして偶然か、それとも・・・。
ハリー・ボッシュ・シリーズ(?)第7作。
オススメ度は、"★★★★★"。