★Book Review 5 (21〜25)


『Hard Frost』 R. D. Wingfield 451 pages (October 1995)

世界で最も下品な名(迷?)探偵、Jack Frost警部シリーズの第4作。
1作目「Frost at Christmas」、2作目「A Touch of Frost」は邦訳され、「このミステリーが面白い!」に選ばれているのでご存じの方も多いだろう。

イギリスの街 Denton署につとめるFrost警部は、いつもヨレヨレのコート身にまとい、とても下品な警部。上司のMullett警視は堅物で、Frostは嫌われている。
休暇中のFrostが、警視の留守を狙って葉巻をくすねに署に現れたのが運の尽き。同僚のAllen警部に連絡がつかないからと、殺人事件の対応に巻き込まれ、 そうこうしているうちに誘拐、恐喝、殺人事件が次々とFrostの上に降りかかる・・・。

とにかく面白い。次から次へと事件が起こり、Frostがてんてこ舞いするのは、いつも通り。
多くの事件が複雑に絡み合って、伏線となっていく。決して有能ではないFrostがいつの間にか事件を解決していってしまうのも相変わらずだ。
オススメ度は"★★★★★"。
イギリスではどうやら第5作「Winter Frost」が刊行されるらしく、待ち遠しい。

(1999/10/31読了)


『Baltimore Blues』 Laura Lippman 290 pages (February 1997)

Boltimore を舞台にした女性探偵(?) Tess Monaghan シリーズの第1作。というよりは、Laura Lippmanの処女作と 言うべきか。
このシリーズは第2作はエドガー賞/シェイマス賞、第3作はアガサ賞/アンソニー賞をそれぞれダブル受賞。 本作品もシェイマス賞ノミネートと本国では最い評価を得ている。

Boltimoreに住む元新聞記者 Tess は新聞社が潰れて以来、29才にして職を失い空虚な日々を送っていた。
ある日、ボート友達 Rock から婚約者の行動を見張ってくれと頼まれる。尾行をするうち、彼女の万引き現場、上司との密会現場を目撃する。
その事実を Rock に告げた夜、彼女の密会相手の上司が殺され、容疑者として Rock が逮捕される。
Rock の無実を証明するため、調査を始めるのだが・・・。

ストーリーはありがちだが、Boltimoreの細かな描写、歌の引用などアメリカに住んでいなければわからない事が多く、読むのに苦労した。 そのあたりが逆にアメリカでの高い評価につながっているのだろうが、日本人である私にはちょっとつらい。
難しい単語や辞書にもない単語も多く、筋を追っていくのが精一杯でストーリーを楽しむ余裕、全くなし。
というわけで、オススメ度は"★★"。

(1999/11/23読了)


『Alog Came A Spider』 James Patterson 502 pages (December 1993)

Whashinton D.C. 警察 殺人課の黒人刑事そして精神分析学者でもある、Alex Crossシリーズ第1作。

有名な女優の娘と財務長官の息子が誘拐される。そして彼らを誘拐したのは、「世紀の犯罪」を誓う連続殺人犯だった。 F.B.I、シークレットサービスとともに犯人を追うAlexだが・・・。

「羊達の沈黙」を代表に流行った、異常精神者ものの1つだろうか。前半の刑事としての犯罪捜査と、後半の精神分析学者としてのAlexとの2面が対照的に描かれている。 女性シークレットサービスとのロマンスはいらなかったかな。白人女性と黒人男性のタブー視される関係をあえて描きたかったかのかもしれないけど・・・。個人的にはラストもちょっと納得行かない。
ところで、英語は簡単だし(ほとんど辞書なしで読めた)、1章が短いのでとても読みやすい。 なんと502ページで89章+プロローグ+エピローグ。1章あたり平均5ページちょい。ペーパーバック初心者にはいいかも。
オススメ度は"★★★★"。

(1999/12/16読了)


『The Children of Men』 P. D. James 351 pages (1992)

英国ミステリの女王、P.D.Jamesが描いた近未来小説(唯一のノン・ミステリ)。

1994年原因不明の病気で人類から子供が産まれなくなってから27年後。人類は老い、滅びかかっていた。
文明は奇妙な信仰、残虐行為、集団自殺、絶望に屈しようとしていた。
オクスフォードの歴史学者であり、英国総督のいとこ Theodore Faron はある日、魅力的な女性 Julian から革命論者のグループへ会ってくれと頼まれる。

高齢化し人口が徐々に減り、滅びつつある人類の世界が見事な描写で描かれている。
天変地異などで滅ぶ世界を描いたものはあるけれど、このように何十年もかけて老い、死に絶えていく世界を描いたものは初めてではないか?
後に残す子孫がないとわかった瞬間から、社会システム、宗教、価値観などが全てが変わる。そして人口減少によりじわじわと自然に埋もれていく文明が見事な文章で描かれていく。

かなり難しいが、読み応え有り。オススメ度は"★★★★"。

(1999/12/31読了)


『Harry Potter and the Chamber of Secrets』 J. K. Rowling 251 pages (February 1999)

世界中に旋風を巻き起こしているHarry Potterの第2作。

魔法学校ホグワーツで1学年を終え、叔父の家で夏休みを過ごすHarryのもとへエルフが現れ、 怖ろしいことが起こるためホグワーツへは戻らない方がいいという。Harryを学校へ行かせまいと、 エルフが起こした騒ぎが元で、Harryは叔父に部屋に閉じこめられてしまう。 しかし友人Ronが空飛ぶ車で助けに現れる。そしてHarryの2学年が始まった。

読んだのはイギリス版ペーパーバック。(注・・・アメリカ版はハードカバーのみ;2000/1現在)
第1作ではHarry Potterの世界を描くのに追われていた感があるが、この第2作ではその世界を存分に生かして話が展開する。
とにかく伏線の張り方が見事で、読み進むうちに全ての出来事がピタッと当てはまっていく。
第2作がさらに伏線となって話が展開していく第3作が楽しみだ。

第1作より遙かに面白く、オススメ度は"★★★★★"。

(2000/1/5読了)