★Book Review 7 (31〜)


『The Testament』 John Grisham 533 pages (1999)

大富豪 Troy Phelan は新しい遺言書にサインをした直後ビルから身を投げる。その内容は、3人の妻と6人の子供には110億$もの財産を残さず、そのほとんどを隠し子 Rachel に与える、という衝撃的なものだった。 子供達が遺言の無効を裁判所に申し立てる一方で、Troy の弁護士事務所は、宣教師として働く Rachel を探すため、アル中でリハビリ中の弁護士 Nate O'Riley をブラジルの奥地に送り込む。
Nate は果たして Rachel を見つけ出すことが出来るのか、また莫大な財産の行方は?

読みやすい文章と軽快なテンポ。アマゾンの奥地が生き生きと描かれ、グリシャムの十八番の裁判シーン(遺言書の無効性を審議)も面白い。
1つ気になるのは、宗教色がやや強い点だ。この小説は、リーガルサスペンスの形をとっているものの、実はアル中の主人公が大自然に圧倒され、また未開の地でインディアンに布教する宣教師と出会うことにより、宗教に目覚め再生していくという話。 前作「Street Lawyer」は、金と地位のために働いていた弁護士が、貧しい人のためのボランティア弁護士として目覚める話。本作。そして次作が「The Brethren」というタイトル・・・。 グリシャムファンとしてはちょっと行く先が不安・・・。
とはいうものの相変わらずのストーリー展開力で、話自体は面白く、オススメ度は"★★★★"。

(2000/04/19読了)


『Tunnel Vision』 Sara Paretsky  464pages (1995)

Chicago の女探偵、V.I.Warshawski は、ある日オフィスのボイラー室でホームレスの女性を見つける。 V.I.は、女性の喘息の子供を友人の医者に見せるが、子供と引き離されるのをおそれた彼女は姿を消す。
V.I.と伴にボランティア団体で働く弁護士の妻 Deirdre Messenger は、施設に収容しようとホームレスの女性を捜しにV.I.のオフィスの現れるが、 翌朝、V.I.の机の上で頭を殴られ殺されていた。そして Deirdre の長女が失踪。
果たして真犯人は?

女性探偵ものの走り、V.I.Warshawski シリーズ第8作?
30代後半の女性私立探偵、近所に老人が住み、特定の恋人もできず、事件に巻き込まれる。 なんだか、Sue Grafton の Kinsey Millhone と似たような設定でどうしても読みながら比較してしまうが、 Kinsey よりも Vic の方が個性は強烈で、話自体もこちらの方が面白い。雰囲気が重いのも、舞台が大都市 Chicaco であるためだろう。
またSue Graftonに比べ、Sara Paretsky が執筆ペースが遅いことも、作品のレベルに影響しているかもしれない。オススメ度は"★★★★"。

2000/05/06読了


『Tunnel Vision』 Robin Cook 386pages (1999)

崩壊するソ連から逃れてきた男 Yuri Davydov は、N.Yでのタクシー運転手生活に嫌気がさしていた。彼は、再びロシアに戻ることを決意し、自分を受け入れてくれなかったアメリカへの報復に、極右集団と共に生物兵器での攻撃を計画する。 彼は、元ソ連の生物兵器工場で働いていたのだ。標的は連邦政府ビルとセントラルパーク。
N.Y.の検死解剖医 Jack Stapleton はある日、炭疽病の患者を解剖する。この伝染病の感染元を調べていくうち、極右集団から命を狙われるようになる。果たして、Jack は陰謀を阻止することは出来るのか?

Robin Cookの医学サスペンス。作者があとがきにも書いてあるとおり、イラクの生物兵器工場の存在やオウムの地下鉄サリン事件がきっかけとなり、生物兵器への対策を怠らないように警告するのが、この本の主旨のようだ。 そのため、今回は犯人は最初からわかっており、それをどう阻止できるかが話の焦点になっていて、いつものCookの作品とはやや趣が異なる。
登場人物間のリンクがあまりにも都合が良すぎる面があるが、話の展開は面白く十分楽しめる作品。英語も序盤に出てくるいくつかの医学用語がわかるようになれば、さほど難しくはない。
オススメ度は"★★★★"。

2000/05/18読了


『Loot』 Aaron Elkins 386pages (1999)

Boston の 美術専門家 Ben Revere は、友人である質屋の主から 戦時中にナチスによって奪われた Valezquez の絵が質入れされたと電話を受ける。 しかし、その友人は何者かによって殺害されてしまう。Valezquez の絵と友人の死の関係を調べて、ウィーン、セント・ピーターズバーグ、チューリッヒとヨーロッパ中を飛び回るが、 なぜか行く先々で殺人事件に巻き込まれる Ben。徐々にロシアン・マフィアとの関係が明らかになってくるが・・・。

スケルトン探偵、ギデオン・オリヴァーで有名なElkinsの新作。
美術にはあまり馴染みがないので、ナチスによる略奪があったことすら知らず、とても新鮮だった。 また、舞台もヨーロッパの古都を移り、そちら方面に言ったことがない私には、風景描写だけでも楽しめた。 英語のレベルはまぁまぁ。オススメ度は、"★★★"。

2000/06/03読了


『The Bone Collector』 Jeffery Deaver 427pages (1999)

巡視中の警察官 Ameria Sacks は通報を受け殺人事件の現場に急行した。線路脇から男性の腕が突き出しており、その指をけずって女性の指輪がはめてあったのだ。 そして、現場の脇には次の犯行を示唆する証拠が。この日で内勤に移る予定だった Ameria だが、事件の捜査にかり出される。指揮を執るのは、元警官 Lincoln Rhyme。数年前に捜査中の事故で全身不随になった彼は、Ameria を文字通り手足として使い始め、連続殺人犯の捜査を開始する。

デンゼル・ワシントン主演で映画化。犯人が犯行現場に次の犯行のヒントを残し、次々と犯行を重ね、それを"証拠おたく"の全身不随の主人公が、女性警官を手足に使い追いつめていく。 プロット自体も斬新だが、これだけ証拠の解析を主体にしたミステリも珍しい。
犯人がbone collector だけにちょっとグロいが、オススメ度は、"★★★★"。

2000/06/15読了