★Book Review 8 (36〜)


『Breakheart Hill』 Thomas H. Cook 293 pages (1995)

30年前のある夏の日、Breakheart Hill で Kelli Troy が見つかった。無惨な姿で。
彼女を愛していた僕だけでなく、Kelliを知る多くの人々の人生が、それ以降変わってしまった。 そして、なぜ Kelli があんなことになったのか、あの夏に何が起こったのか、その謎を知るのは僕だけだった・・・。

邦題「夏草の記憶」。「このミステリがすごい!2000年版」第3位に選ばれたクックの「記憶3部作」第2作。
高校時代にあった暗い事件を、主人公が30年後にふりかえる。何が起こったのか、なぜそれが起こった のかが回想によって徐々に明らかになる。結末が知りたくて夢中でページをめくったのは英語の本では初めて。 そして最後に驚くべきどんでん返しが・・・。
30代以降の人が読むと青春時代への懐かしさを感じるだろう。
オススメ度は、"★★★★★"。

2000/06/22読了


『Jack & Jill』 James Patterson 466 pages (1996)

有名人が次々と殺される連続殺人事件が起こる。犯人達は署名入りの詩を現場に残す。彼らの名は、JackとJill。
捜査中のWashington D.C.の殺人課刑事 Alex Cross は、White House に呼び出される。JackとJillとは、シークレットサービスが使う大統領とファースト・レディーのコードネームだったのだ。
犯人達の最終目標は大統領暗殺なのか?コードネームを知る彼らは内部に潜んでいるのか?

Washington D.C.の黒人刑事 Alex Cross シリーズ第3作。
今回の舞台はやっとワシントンD.C.エリア内。留学中に馴染みの深かった場所で殺人事件が起こるので、違った意味で楽しめた。
しかし、D.C.ってこんなに危ないところだったのか(危ないエリアは)。
いよいよ第4作(最終作?)では第1作で捕まえたものの脱獄したサイコパスとの対決が。
オススメ度は、"★★★"。

2000/07/05読了


『Timeline』 Michael Crichton 496 pages (2000)

アメリカのベンチャー企業ITCの援助を受けて、中世フランスの遺跡を発掘していた 研究者たちは、意外な物を発見する。それは、「HELP ME 4/7/1357」と英語で書かれた 1枚の紙、そしてそれは紛れもなくITCを訪問したきり連絡が途絶えた Johnston 教授 の筆跡だった!
教授を現代に連れ戻すため、ITCの開発したタイムマシン(正確には パラレルワールドへの移動機械)を使って4人の学生達が中世フランスへと向かう。 彼らに残された時間は37時間。果たして無事に教授を連れ戻せるのか。

あらすじを読めばおわかりいただけるように、「よくある話」である。 映画作り意識したストーリー展開がいかにもクライトンらしい。 だが、小説としてはいま一つ。映画を見たほうが楽しめそうだ。 SFとしてみても、パラレル・ワールドとタイム・パラドックスの関係が納得行かない。
英語は、中世特有の単語や言葉遣いが多いため、やや難しい。オススメ度は、"★★★"。

2000/07/22読了


『The Door into Summer』 Robert A. Heinlein 291 pages (1993)

エンジニア Dan Davis は家政ロボットの完成目前にしていた。しかし、会社の共同経営者である親友 Miles と婚約者 Belle に裏切られ、30年の冷凍睡眠を強いられる。 目覚めた先は、西暦2000年の世界だった。
未来世界で、可愛がっていた Milesの義理の娘・Rickyの消息を追う Dan。そしてある時、時間を逆上る方法があることを知る。 復讐のため、そして Ricky を守るため、Dan は過去へと戻る。

ハインラインの名作、「夏への扉」。最初に日本語で読んだのは大学生1年の時だから、おそらく17年前である。二度読みはしない主義なので、これを読んだのも17年ぶりということになる。 おかげでディテールをほとんど忘れていて、十分楽しめた。同じ時間旅行を扱った作品として、前に読んだ「Timeline」と比べると、 S.F.としても小説としても完成度は段違いに高い。
また、主人公が冷凍睡眠から目覚めた先は、西暦2000年。この作品が書かれた1957年の時点で予想した2000年は、「今」とずいぶん違う。 そういう視点で読むのも面白いかも。
オススメ度は、"★★★★★"。

2000/08/02読了


『Harry Potter and the Goblet of Fire』 J. K. Rowling 734 pages (2000)

魔法学校ホグワーツに通う Harry も4年生。今年は、イギリス以外の魔法学校2校を含めた3校で争うトーナメントが復活することになった。 各校からチャンピオンを1人ずつ選出し、その3人が1年かけて3つの危険な課題に挑むのだ。
ところが4人目のチャンピオンとして、Harry が The Goblet of Fire によって選ばれてしまう。 しかも賞金と名誉目当てに、自身が仕組んだことだと皆に誤解され、Harry は学校内で孤立する。そしてトーナメントの裏で Harry を巻き込む大きな陰謀が進行していた。

ハリー・ポッター・シリーズ第4巻。ストーリーも確かに面白いが、特に素晴らしいのは伏線の張り方。序盤から中盤が全てジクソーパズルのピースとなり、最後に全てがぴたっとはまってきちんと絵になるという感じ。 シリーズを通しても、第1巻が第2巻の伏線となり、第1・2巻が第3巻の伏線となり、第1〜3巻が第4巻の伏線となり・・・。最初からきっちり全7巻のプロットが出来ているからなし得るのだろう。
ただし734ページはちょっと長い。一気に読み通せる長さにして欲しかったと思うのは贅沢か。
オススメ度は、"★★★★★"。

2000/08/06読了