第1回 遊水池に鳥が来た
文・絵 たかはしこうぢ
緑蔭館フェルト版画工房
1996.5.5発行


    遊水池に鳥が来た
 いつもコンクリートの底ばかり見せていた
いずみ野の遊水池が、ここ1月ほど様子を
変えた。
 いつの間にか水面にアシがそよぎ、そこ
に辺りの景色を映しだしている。
 団地から追い出された小鳥たちが、どこ
から来たのか水鳥たちが、 とても楽しそう
に一日を過ごしている。誰がこの池に水を
入れたのか、なかなか味なことをしたもの
である。



   いずみ野線が車輪を軋ませながら遊水池の
縁をかすめるようににして曲がっていく。 この電
車もいずみ中央まで駅を一つ延ばした。 いずみ
野線が走る前はこの辺はどんなだったのだろう。
  私の住んでいるグリーンハイムは、かなり強い
雨が降っても大きな水たまりができるわけでもな
く、これこそ遊水池のお陰だと思っている。
  近所の農家の人が 「おたく達が住んでいる所
は以前は山だったんですよ」 と少し恨めしそうな
顔をして言っていた。 今のこのきれいに整った団
地の姿からそう簡単に信じるわけにはいかない
が、小さな森や林が、まわりの景色に似合ってい
たとも想像がつく。 ブルトーザが唸りをあげて山
を削り谷を埋め木を切り倒してしまった。その結果
この遊水池が必要になったのであるとすれば、池
の底にテニスコートを造ってくれだの、ソフトボー
ルができるように有効利用すべきだとは、手前勝
手な論理である。
 今日も遊水池で楽しそうに一日を過ごしている
鳥たちを見ていると、私は、このいずみ野の遊水
池を大いに自慢してもいいと思っている。
               たかはしこうぢ