Doors for everyone
ここは・・・何処なの? ここは・・・とても暖かくて、居心地のいいところ。
この世界の中で、 「バクン、バクン。」 と、いう音だけ確実に時を刻んでいる。 彼女は目を少しだけ開いたが、またすぐに目を閉じた。 ――もうどのくらいの間この場所にいるのだろうか。 暗いけれど暖かいこの海の包容力を、 暖かいけれど動きのない波の感触を・・・、 知らない人は、いない。 だから人は、 海を、愛する。 でも人は、 海を、汚す。 そんな現実を目の前に、 動物たちは、泣く。 海のあらゆる微生物たち、 珊瑚、 貝や、 磯巾着、 蟹に、 水母、 海驢、 海豚に、 海豹、 鯱、 鮫に、 鯨も。 ――みんな泣いている。 この『海』も汚れてきている。 だんだんと『穢れ』が『海』を蝕む。 それでも、懸命に生きようとしている。 ふいに、時を刻む音の調子が上がってきた。 彼女が動き始めたのだ。 彼女は世界の明るさを知ることができるか? 彼女は『海』を持ちたいと思うようになるか? 彼女は空を眩しいと感じられるか? 彼女は何よりも先に、 ――人を、愛せるか・・・?
彼女は、海の中では浮力に負けていて、ないも同然だった重力を知り、少し驚いた。
体が、重い。 海が荒れてきた。 荒れている中で彼女は体の痛みに耐えていた。 海の中でじっとしている間には気づかなかった『道』を、彼女は発見した。 これから彼女はそこを通る。 せまくるしい感覚に、体を縮めながらゆっくりと、しかし確実にその『道』を進んでいく。 もう彼女は海にいない。 海の水は彼女を追ってくる。 彼女がそこにいたことを表す唯一の証拠。 彼女は人がいつか必ず通っていく『道』を進んでいく。 そして人がいつか必ず開けていく『扉』を開ける。
耳が、痛い。
気圧の違いに耳を痛めていても、時がもう来たのだ。 後戻りなどできるはずがない。前へ、前へち少しずつ進むだけ。 それだけが彼女に残された、『道』。 彼女は、『扉』を少しずつ開けていった。 少しずつ、少しずつ・・・。 だいぶ開いたところで、頭に何かが触れた。 その時にはもう、耳の痛みが最高潮に達していた。
痛い 痛い 痛い 痛い・・・。
彼女は『扉』を開ききる。 海水がどっと、あふれる。 痛みにこらえきれずに、 何かを、叫ぶ。 そして、 誰かに抱きすくめられる。 そこで初めて彼女は世界の明るさを知る。 そこで初めて彼女は自分の母を知る。 彼女はいつか、 母の偉大さを、知る。 そして彼女はいつか、 母に、なる。 彼女はいつか必ず『海』を持つ。 愛する人と、『海』をはぐくむ。 人の手で創りあげられた海。 現代<イマ>は造られた『海』の方が安全な<美シイ>の・・・? ――『海』は、愛されている? 海が汚れてしまえば、 被害をこうむるのは中の、生きものたち。 『海』が汚れてしまえば、 被害をこうむるのは貴女の、愛する人間<ヒト>。 でも。 どんなに穢れた海から生まれてきても、 彼女は母の愛を、知る。 『扉』を開いたその瞬間から、彼女は母の愛を全身に浴びて、 そして。 自分も『扉』を、持つ。 FIN |
あとがき。
こんにちは、ましょまろ☆れもんことユーナです。
久々(?)な登場であります。
今回のテーマ、「扉」なのになぁ〜。
「海」っぽいね。
「扉」だって聞いた時に、「あ、こりゃいけるゼ!」とかなんとか思ったので、
〆切りをギリギリまでのばしてもらって書いております(汗)。
この「海」っていうのはいわゆる、みなさん知ってのとおり、「子宮」です。なんか、ね。
っぽいじゃないですか。人間がそこで作られるのですし。
万物みな兄弟(?)!・・・じゃなくて、全ての生きものは海から生まれた、っていうくらいだから、
子宮をそう例えてもいいかな、と。
で、テーマの扉は、言わなくても分かると思います。
名前がわかりません。
あれは何?!
っていうか、これは何?!
・・・ごほっごほっ。ゲフゥッ(喀血)!
さて。みなさん、お母さんは大事にしましょう。
お母さんは私たちの母体提供者です。
お父さんとはちょっと違います。
れもんが解釈するに、お父さんは遺伝子提供者です。
ですから、母体提供者であるお母さんは10ヶ月、大変な思いをするワケです。
でも、いいよね、月経こないんだもん。
あ、しかしですね、れもんが解釈するに、出産はその来なかった10ヶ月分の月経の痛みが、
一気にくるものだと思います。
こりゃあ、痛いぞ、きっと。
でも、お母さんが生んでくれなかったられもんはイマここにいないもんね。
そういうことは今は分からないけれど、きっとれもんがお母さんになったら分かるさ、きっと!
お母さんになるんだから、お母さんになるみんなは子宮を汚しちゃあいけないと思うよ。
その他にもいろいろあるけどね。
母乳からダイオキシンが入っちゃうとか。
世の中汚れてきてるのかもね。
ちゃんと科学に頼って生きてきてるんだから、頼ってる分、
自分らはしっかりしてなきゃいけないよね、とれもんは思います。
みんなはどう思うかわからないけれどね。
最後に、お母さんになる人に。
子供は大切にしてね。いつも笑っててね。
あとがき。
〜この小説をHPに載せるにあたって〜
はい、受験期対策オリジナル作品公開作戦第3弾です。
なんだか気がつくと、重い話へとうつっていますね。
この話を考えついたのは、高校1年生の時の、日本史の授業中でした。
だいたい案がまとまってからパソコンにうちだして、プリント・アウトして、
そして次の日学校に持って行って友達に見せたら、
好評で、ほめてもらえたし、結構これはお気に入りなんですが、
やっぱり今ここに書き起こしてみると、
気にくわない文字のリズムが多少ありました。
あ、もちろん変えていませんよ、当時のまま載せています。
扉、というテーマが来た瞬間、これだぁっ!と思ったんですが、いかがでしたでしょうか?
なかなかにアレなもんですが。
全ての生き物は海から生まれたと言われるように、
人間もそういうもんなんだ、と勝手に解釈した結果であります。
やっぱり海っぽいかなぁ、とも今更ながらに悩んでみたり。
背景も海っぽいし(笑)。
多分、当時の私としては、人間が一番最初に通る扉、という意味でこういう話を考えたんだと思います。
だけど、扉を開けるのはお母さん?それとも赤ちゃん?
どっちなんでしょう?
やっぱり赤ちゃんかなぁ。
赤ちゃんが開けようとしなかったら陣痛が来ないのかなぁ。
う〜ん。
なんだかよく分からない生命のフシギ。
.